映画とライフデザイン

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映画「海と大陸」

2013-11-29 19:25:01 | 映画(欧州映画含むアフリカ除くフランス )
映画「海と大陸」は今年公開のイタリア映画だ。

神保町にはよく行くので、知性の殿堂岩波ホールで上演されていることは知っていた。今回dvdのジャケットを見ながらホール前の大きな看板を思い出した。海に浮かぶ船にたくさんの若者が乗っている写真がきれいだ。ちょっと見てみようかと。。
見てみると難民がテーマのようだ。以前「ル・アーブルの靴みがき」でもアフリカからの難民のことが取り上げられていた。どうやら欧州諸国では深刻な問題なのかもしれない。考えさせられるシーンが続く。
初めて知るイタリアの孤島は美しい島だ。映画で映る海の映像からは潮の香りが漂う。それを楽しむだけでも見た価値がある。

地中海に浮かぶイタリアシチリアのリノーサ島。
そこに暮らす20歳のフィリッポ(フィリッポ・プチッロ)は、代々漁師をやってきたプチッロ家の一人息子。父親を2年前に海で亡くし、今は70歳になる祖父エルネスト(ミンモ・クティキオ)と共に海に出ている。

衰退の一途を辿る漁業から観光業に転じた叔父のニーノ(ジュゼッペ・フィオレッロ)は、船を廃船にし、老後を楽しむべきだとエルネストを諭すが、エルネストは聞く耳を持たない。また、母ジュリエッタ(ドナテッラ・フィノッキアーロ)は、息子を連れて島を離れ、息子とふたり新たな世界で人生をやり直したいと思っている。フィリッポは戸惑っていた。

夏になり、島は観光客で溢れ活気づく。一家は生活費を稼ぐために家を改装し観光客に貸すことにした。自分たちはガレージで生活することにする。3人の若者マウラ(マルティーナ・コデカーザ)、ステファノ、マルコが借りてくれることになり、同世代の3人組と交流できることにフィリッポは喜ぶ。

ある日、いつものように漁に出ていたエルネストとフィリッポは、難民が大量に乗船しているボートをみつける。2人の漁船を見て一部の難民が海に飛び込み助けを求めてきた。2人は溺れそうになっている数人の難民を助けた。難民はアフリカからボートに乗ってやってきたのだ。その中に居た妊娠中のサラ(ティムニット・T)とその息子をガレージに匿うのだが…。

(このあとネタばれ注意)
この難民はエチオピアからだ。アフリカ大陸の地中海際まできてイタリアに向ってくる。子連れの女性の夫はすでにイタリアで働いているという。以前中国からの難民船が随分と日本に来ていたことがあった。最近はあまり聞かない。日中間の緊張も影響していることもあるし、中国の経済状況が好転したからであろう。アフリカは発展を遂げているとは聞くが、貧富の差は激しい。日常生活に困る人たちが次から次へと難民となって欧州を目指している。この映画で難民を演じている女性は実際にアフリカから来た難民だという。

祖父と孫が漁に出ている時に難民が大勢乗った船を見つける。2人の漁船をみつけると難民が懸命に泳いでくる。船をみつけたときには当局に無線連絡をしているのに、泳いで溺れそうになった人たちを見ると、祖父は助けろという。それが海の掟だと言って。。そうして助けてしまうのだ。これは違法である。違法とわかっていながら、祖父は海に携わる男たちのルールを優先させる。そのために船を差し押さえられたりさんざんな目に会うのだ。

最初に難民を助けた後で取り締まり当局からさんざんな目に会ったあとで、主人公のフィリッポが自宅に泊まりに来た女の子とボートで沖合に行く。その時海を泳いでいる難民たちが大挙して二人のボートに助けを求めに来る。このシーンが一番印象的に残る。10人くらいの難民が泳いでボートに向かってくる。すでに痛い目にあっているフィリッポは懸命に船に乗せないようにする。船に乗ろうとする難民は必死だ。それなのにそれを振り切る。その後日が空けた後で、海岸に黒人の死体が漂流してきた。もしかしたら、あの泳いできた難民なのかもしれない?フィリッポは心を痛める。

難民の救済→当局の取り締まり、罰則をうける→主人公海上の難民救済拒否→救済しなかった難民死亡確認
若いフィリッポの心の葛藤が映像を通じて表現される。そして驚くべきラストに進む。
人道的問題が優先されるのか?法を優先させるのか?難しい問題だ。
財政状況は悪いといわれるイタリア当局からすると、これ以上来てもらっては困るのだ。

リノーサ島という名前は知らなかった。ここでは潮のにおいがプンプンするような映像を映してくれる。地形は美しい。
そして映像コンテとして一番美しいのは、観光ビジネスをしている叔父さんが島に来ている若者を連れて島巡りのクルーズに出ているシーンだ。
その写真に魅かれてこの映画を見たものだが、うならせられるほど美しいシーンであった。



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