和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

種をまく。

2009-10-15 | 短文紹介
新聞の校閲部というのは、学校で云えば、図書館司書のようなものでしょうか?
ちょっと以前から気になっておりました。
たとえば、コラム「産経抄」を書いていた石井英夫氏は、「産経抄」を単行本にした際には、まえがきの終りの方で「ひとえに先達の研究、文献、資料のおかげであり、それらの深い学恩によるものです。同時に新聞社の上司、同僚、友人たちの温かい支えと励ましがなくては一日たりとも務めを果たすことができませんでした。・・・」(「クロニクル産経抄」上)。

ここには、直接に校閲の方とは出てきませんが、ですが私は、やはり気になっておりました。そう気にしていると、いつか引っ掛かってくる本が出るもので平成20年9月に産経新聞社の本として「校閲部長の言葉の手帳」があったのでした。
最近の産経新聞のコラムで清湖口敏の名前で書かれた文を読みました。
気になってネット検索すると、本が出ている。というので注文した一冊。
略歴の欄には「昭和25年、大阪市生まれ。48年、産経新聞社に入社し、大阪本社編集局校閲部で校閲記者としての第一歩を踏み出す。平成16年、校閲部長。平成20年7月から東京本社編集局校閲部長。この間、平成3年から日本新聞協会新聞用語懇談会委員を務める。・・・・」

ということで、すこし引用をかさねましょう。
「種をまく」と題した短文には、まず「水をまく。『まく』は漢字で『撒く』と書く。」という話から、中頃になって、「『まく』と訓じる字はほかに『巻く』『蒔く』などがある。先日、ある原稿に『新規巻き直し』と出てきたので、それは『新規蒔き直し』が正しい、しかし『蒔』は常用漢字表外字だから新聞では『新規まき直し』と書く――と編集局内に注意を呼びかけた。
『エッ、そうだったの?僕はずっと『巻き直し』だと思っていた』と照れ気味に告白したのは某ベテラン記者。『新規まき直し』が『ネジを巻き直す』ことだと勘違いしているのであろう、きっと。『種を蒔き直す』ことだとは、ついぞ思ってもみなかったに違いない。」

最後は政治家のマニフェストで金をばらまくことに触れ

「でもその財源をどう捻出するのか、説明はいたって不十分で、『選挙向けの甘言なのでは』と疑いたくなる。政治家というのは本来、目先の選挙より国家百年の計を案ずるべきではないのか。大切なのは、いま金をばらまくことではなく、将来に花を咲かせるための種をいま、蒔いておくことだと思うのだが。」

ちなみに、これは2007年8月18日に書かれたコラムでした。

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