和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

書評の味。

2009-10-23 | 短文紹介
オンライン書店bk1の書評欄に、自分も参加しているせいで、他の方の書評に興味があります。それはたとえば、釣り好きが、情報を集めるのに似ているかもしれません。どこそこのどの場所が釣れるという情報みたいなものでしょうか。
私は小説は読まない方で、評論・随筆等に興味があります。それはたとえば、海釣り、川釣りとわけるような発想かもしれませんね。小説という海より、評論・随筆と云う川の方が合っている(笑)。
さてっと、昨日そのbk1にハンドルネーム塩津計さんが書評をあげておりました。魚じゃなくてその本はというと、草森紳一著「中国文化大革命の大宣伝 上」。書評の題は「『この本を読まずに死ねるか!』あるいは『この本読んだら死んでもいい!』」(塩津計 2009/10/21 11:00:05)。書評に、こんな大それた題をつけるのが、また楽しい。私には釣り好きが、大物を釣り上げた時の興奮をこめているように思えてくるのでした。
ということで、塩津計さんの書評の半分ほどを以下に引用。


本書の読後感は、正に圧巻と言っていい。慶應大学文学部中国文学科を卒業した著者は漢籍に通じており、いまだ多くが謎に包まれている「中国の文化大革命」を「広告宣伝」という視点から縦横に読み解いていく。・・・・・彼の分析手法は米国のCIAや英国のMI5、MI6、日本の公安警察のような諜報機関のそれと同じだ。諜報機関というと007のような体育会系のスパイをイメージしがちだが、実は諜報機関の業務の大半は公開されている資料の読み込みである。「必要な情報の90%以上は公開情報の分析を通じて得ることが出来る」というのがこの世界の常識で、これを草森氏はほぼ一人でやってのけたのである。・・本書に引用されている書籍の数々は実際、ものすごい。真実を報道しすぎて北京から追放された産経新聞の柴田穂「報道されなかった北京」「文革の3年」、毎日新聞の大森実「天安門炎上す」、「ワイルドスワン」の著者ユン・チアン、映画監督陳凱歌「私の紅衛兵時代」、W・ヒントン「百日戦争 清華大学の文化大革命」、鄭念「上海の長い夜」等等。本書は良質の読書案内としても活用できる。
本書の本質は「中国人とは何か」に迫ったものであり、その結論は「中国という国家は徹頭徹尾自分たちこそが地上で最も偉い、偉大な民族だとうぬぼれ、思い上がり、世の中の全ては政治で、政治の本質は宣伝であると割り切った人々に指導された専制国家」であるということだ。中国は常に「如何に自らを強く巨大に見せ、自分たちが常に躍進しているかを世界に見せかける」ことに全神経をそそいでいる。・・・「私は中国のいたるところで見かける『アメリカ帝国主義は張り子の虎である』という標語ほど、中国人の気質を丸出しにしたものはないと思っている。中国人は、常に自分を内容以上にいかめしく、恐ろしげに装うことを知っているから、いかめしく、おそろしげに見えるが、実はそれほどいかめしくも、おそろしくもないことをも知っているのである。なぜならば、中国人自身が張り子だからである」・・・本書を読んでいると、確かに中国の政治家が恐ろしいまでの冷血漢であることが分かる。そもそも文化大革命なるものを毛沢東が始めたのは、大躍進政策の失敗で中国で5千万人を超える餓死者が出てその威信が失墜し、劉少奇・トウ小平に政治権力が移りかけたのを妬み、青少年を焚き付けて全土で騒乱を起こし、この混乱の責任を現政府に押し付けて権力を奪還しようとしたからである。革命の創始者毛沢東は次第に神格化され、彼の言葉は絶対化され、それに後押しされた「紅衛兵」は全土で虐殺を始める。その数や3千万とも言われる。しかしこの紅衛兵を焚き付けすぎて全土に広がった騒乱の収拾が出来なくなると、毛沢東は情け容赦なく紅衛兵の切捨てを断行する。紅衛兵の主力は学生であり、学生の多くは恵まれた家庭の子弟だった。これを成敗したのが名も無い農民で、学生を取り締まるに毛は貧乏な農民を使うのである。毛の支持を一夜にして失った学生たちは辺境の不毛の大地に「下放」される。これで世をはかなんで自殺した学生も多いという。日本の全共闘がやったことやポルポトのやったことは毛沢東のやったことのコピーである。ポルポトが殺した人数は300万人とも言われるが、毛沢東のやった虐殺に比べればそのスケールは児戯に等しい。・・・
それにしても思うのは、いわゆる日本の親中派と呼ばれる人々の甘さである。草森は日本人が一方的に中国に対し共感、連帯感を憶えてしまう愚かしさを指摘している。・・・日中の溝は深い。




う~ん。この本の手ごたえが伝わります。
あとは、この本を注文するかどうか。
さらに、この本を読むのかどうか。
自分に、いま読める本が、ほんの少しばかりと思いながら
まずは、この本の手ごたえを、書評で知らされる面白さ。
コメント
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