僕の感性

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伝説の教師 橋本武氏 天寿を全うする

2013-09-12 10:26:45 | 文学
小説「銀の匙」一冊を3年かけて読むユニークな授業で知られ、伝説の国語教師と呼ばれた神戸市の進学校灘中・高校の元教諭、橋本武(はしもと・たけし)氏が11日午後、神戸市中央区の病院で死去した。101歳。


彼は兵庫県の名門、灘中・灘高の元教諭で、『伝説の教師』とか『国語の神様』にもたとえられています。
戦後、中勘助の『銀の匙』を3年間読む授業を実践。灘校を名門進学校に導きました。

橋本氏の該博な知識には誰しも舌を巻くことでしょう。
一つの語句をもとに、その何十倍もの知識を「銀の匙研究ノート」としてプリントして生徒に配布しました。
銀の匙に出てくる語句をヒントに連鎖的に知識を掘り下げてくれる授業は、生徒の余りある知識欲を刺激したに違いありません。

たとえば『銀の匙』に出てくる「丑紅」ということばから、干支の十二支と十干にまで話を膨らませています。

干は十あって、これを十干という。「木火土金水(もく か どう ごん すい)」を「兄(え)」と「弟(と)」に分けたもの。
漢字一文字で表すと、「甲・乙・丙・丁・戊(ぼ)・己(き)・庚(こう)・辛(しん)・壬(じん)・癸(き)」と10種類からなる。
支(し)は十二あって、これを十二支といって「子 丑 寅 卯 辰 巳 午 未 申 酉 戌 亥」から成る。
十干と十二支とを組み合わせて「甲子(きのえね)」「乙丑(きのとうし)」のように順次組み合わせを代えていくと、十と十二の組み合わせであるから 六十通りできる。干支を組み合わせて「甲子(きのえね)」とよぶのは訓で「甲子(こうし)」と呼ぶのは音・・・



このほかに十二支を使った方位、「おやつ」「丑三つ時」などの時刻、「土用、春分、秋分、彼岸」など二十四節気などにも言及しています。
「壬申の乱」とか「戊申戦争」とか「甲子園」などもなぜその名称になったかが、橋本先生の説明でよくわかるでしょう。

教え子は、評論家で精神科医の和田秀樹氏や神奈川県知事・黒岩祐治氏など各界の第一線で活躍している人が多いですが、橋本氏の綿密で人間味のある授業は、いつまでも彼らの心に灯として残っていくことでしょう。

橋本武氏のご冥福をこころよりお祈りいたします。