僕の感性

詩、映画、古書、薀蓄などを感性の赴くまま紹介します。

永久の友

2011-02-03 23:33:51 | 
自分は初めて彼女に逢ふことが出来た

君は泌み入るやうな透明な
美しい悲哀に充ちた目をして

僕の前に立ちあいさつをした

僕は僕の考へていたとほりの

その容貌をもっていた彼女を見て

僕は自分の予感や自信を喜ばしく感じた

この人に逢ふために僕は永い間もだえた

僕の生涯をゆだねるに足る
その一切が潜在していて

僕の掘るがままに芽を生じていた

君と僕はてがみを交して

永い間お互いのこころを語り合った

君はいつの間にか

僕の中に存在していたのだ
君の中に僕はその根を下ろし初めたのだ

僕の心と君の心とにゆきゆきした

ふたりの自由は叫び合った
僕はこの人を友に得て

この世に出てゆかれる日があるならば

僕は鷲のやうなつばさを得るだらう

あやふやなものを吹き飛ばすだらう

砂塵をあげて歌ふだらう



(室生犀星)