9月6日の一般質問では、8月29日に視察した広島県呉市、ダムの緊急放流により水害に見舞われた野呂川ダム流域の被災地の状況も紹介しながら、危険なダムの建設中止を求めました。
市長は、国土交通省の出先のようなよそ事の答弁をしました。
(岩石と泥に埋まった野呂川下流・おびただしい土のうが積みあげられている河岸)
【質問内容】
立野ダム問題について伺います。
立野ダム建設は、8月5日に本体工事の起工式が行われ、本体工事が着手されました。しかし、起工式当日は、工事現場入口で、ダムの安全性・必要性に疑問を持つ県民が集まり抗議集会も開かれました。大西市長が、これまで市民への説明責任も果たさないまま、ダム推進の立場をとられていることは、たいへん残念で、問題でもあります。本体工事は着工されましたが、7月に発生した西日本豪雨災害で、ダム建設を取り巻く状況も大きく変わりました。
市議会として被災自治体へお見舞いを致しましたように、7月に発生した西日本豪雨災害は、14府県に200人を超える死者・行方不明者を出す大惨事となりました。今回の豪雨災害では、全国558の治水ダムのうち213ダムで、下流へ流れる水量を調整する「洪水調節」が行われました。愛媛県・肱(ひじ)川の野村ダムはじめ、愛媛県の鹿野川ダム、広島県の野呂川ダム、京都府の日吉ダムなど6府県の8ダムの水量が当時、満杯に近づいたために、流入量と同規模の量を緊急的に放流する「異常洪水時防災操作」による大量放水が行われました。7月7日朝から昼過ぎまで異常洪水時防災操作が行われた野村ダム下流域の愛媛県西予(せいよ)市では、堤防が決壊し、氾濫による浸水被害で5人が死亡するという痛ましい事態となりました。鹿野川ダム・野呂川ダムの下流域でも大規模な浸水被害が出ました。西日本豪雨災害は、ダムの許容量を超える深刻な豪雨であったこと、また許容量を超える豪雨が発生すれば、ダムの緊急放流によって、下流域で甚大な浸水被害が発生することも明らかになりました。
今回の異常洪水時防災操作実施で、下流域に大きな浸水被害が発生した野呂川ダムや椋(むく)梨(なし)ダム・福富ダムについて、広島県は、浸水の発生要因やダム操作を検証し, 今後の対策や管理のあり方を検討することとし、「平成30年7月豪雨災害を踏まえた今後の水害・土砂災害のあり方検討会」を設置し、検証作業を始めています。その中では、貯水池へ大量の土砂が流入してきたこと、浸水被害の発生要因・シミュレーションやダムの効果や課題の影響等についても検証を行うこととなっています。
今やダム建設は、流域住民の命を脅かす問題となっています。ダム下流域で発生した被害は、国の責任ということでは済まされない。流域自治体の責任が問われます。私ども日本共産党には、議会だよりを見た市民の方々から「まだ、ダムを建設しようとしているのか」「立野ダムに関する情報提供が少なすぎる」と、疑問や抗議の声が相次いで寄せられています。その点を踏まえ、答弁をお願いいたします。
第1に、西日本豪雨災害では、許容量を超える豪雨は現実的に発生しうるということが明らかになりました。そして、ダムの容量は無限ではないために、降雨量が甚大かつ長期化すればダムの洪水調節はできなくなってしまうということです。このような西日本豪雨災害で実際に起こったダムの危険性について、市長はどのように認識されていますでしょうか。
第2に、西日本豪雨災害を大切な教訓とするならば、尊い人命が犠牲になるような事態を回避するためにも、立野ダムの場合も、許容量を超える豪雨が発生すれば、ダムは満水となってあふれ出し、ダム津波を引き起こす危険性があるということを、流域住民である市民に説明すべきではないでしょうか。少なくとも、今回の西日本豪雨と同規模の豪雨が発生した場合の状況を、立野ダムに当てはめシミュレーション・検証し、市民に説明すべきではないでしょうか。現行の立野ダム建設計画において、どの程度の豪雨を想定してダムが安全に機能していくということを確認されているのでしょうか。
第3に、今回の西日本豪雨災害は、ダムがあることによって、一定規模以上の豪雨が発生した場合は、むしろダムの存在が流域に大きな被害をもたらすことがわかりました。立野ダムの安全性について再検証することはもちろん、広島県が行うダムの検証が終わるまで、ダム建設はいったん中止することを国に求め、流域住民の不安と疑問に応える市民への説明の機会をつくるべきではないでしょうか。原発事故でも、ダム事故でも、根拠のない「安全神話」が最も危険です。
以上、市長に伺います。
(答弁)
市長は、国土交通省の出先のような答弁をされましたが、想定外と言われる豪雨災害時の状況に対する認識が甘いと思います。迅速に避難するというのは当たり前です。しかし、それが異常な条件の下でできなかったから、人命が失われるような重篤な事態となったのではありませんか。党市議団では、8月に広島県呉市の野呂川下流の被災地も視察してきました。住民からの聞き取りでは、「サイレンはなったそうだが、そんなのは聞こえなかった。一挙に水位が上がって、気づいた時には、濁流が家の奥まで押し寄せてきた」と言われました。そのお宅の前の川は、普段は葦の生い茂る川だそうですが、土砂と岩石に埋め尽くされ、1mは超えるような大きな岩もあちこちに見られました。ダムから押し寄せてくる激流のすさまじさを目の当たりにしました。
市民アンケートには、「西日本豪雨災害の教訓を踏まえて再調査を行い、必要な処置を行うべき」「現地を見れば立野ダム建設はだめだということははっきり断定できる。無駄な税金を使わないでほしい」などの声がありました。
西日本豪雨災害だけでなく、いま世界中で災害の激甚化がすすみ、大災害が相次いでいます。今年8月インド南部ケララ州では、「100年に1度」の豪雨により、39カ所のダムのうち33カ所が、貯水能力の限界に近づき放流を開始したために、下流で洪水被害が相次ぎ、106人もの死者が出たと報道されています。
河川工学の専門家である新潟大学名誉教授の大熊孝氏は、熊本市で開かれた学習会で「『地震があったからやめる』となぜ言えないのか。ダムは想定通りの雨には対応できるが、想定外の雨には対応できないことが西日本豪雨災害でわかった。ダムを守るために放流しているが、人とダムとどちらが大事か。治水の王道は堤防にある」と言われました。阿蘇地域で想定外の豪雨が発生することは充分考えられます。貯水能力の限界を超えればダムは決壊するので、緊急放流が行われますが、立野ダムの場合は、流水ダムのために、貯水量を調節する機能を持ちません。ひとたび穴が詰まれば、たちまちダムは満水になって決壊することになります。その時被害を受けるのは熊本市民ですから、市長の責任は重大です。そのことを肝に銘じ、市民の安全第一の立場で臨んでいただきたいと思います。
市長は、国土交通省の出先のようなよそ事の答弁をしました。
(岩石と泥に埋まった野呂川下流・おびただしい土のうが積みあげられている河岸)
【質問内容】
立野ダム問題について伺います。
立野ダム建設は、8月5日に本体工事の起工式が行われ、本体工事が着手されました。しかし、起工式当日は、工事現場入口で、ダムの安全性・必要性に疑問を持つ県民が集まり抗議集会も開かれました。大西市長が、これまで市民への説明責任も果たさないまま、ダム推進の立場をとられていることは、たいへん残念で、問題でもあります。本体工事は着工されましたが、7月に発生した西日本豪雨災害で、ダム建設を取り巻く状況も大きく変わりました。
市議会として被災自治体へお見舞いを致しましたように、7月に発生した西日本豪雨災害は、14府県に200人を超える死者・行方不明者を出す大惨事となりました。今回の豪雨災害では、全国558の治水ダムのうち213ダムで、下流へ流れる水量を調整する「洪水調節」が行われました。愛媛県・肱(ひじ)川の野村ダムはじめ、愛媛県の鹿野川ダム、広島県の野呂川ダム、京都府の日吉ダムなど6府県の8ダムの水量が当時、満杯に近づいたために、流入量と同規模の量を緊急的に放流する「異常洪水時防災操作」による大量放水が行われました。7月7日朝から昼過ぎまで異常洪水時防災操作が行われた野村ダム下流域の愛媛県西予(せいよ)市では、堤防が決壊し、氾濫による浸水被害で5人が死亡するという痛ましい事態となりました。鹿野川ダム・野呂川ダムの下流域でも大規模な浸水被害が出ました。西日本豪雨災害は、ダムの許容量を超える深刻な豪雨であったこと、また許容量を超える豪雨が発生すれば、ダムの緊急放流によって、下流域で甚大な浸水被害が発生することも明らかになりました。
今回の異常洪水時防災操作実施で、下流域に大きな浸水被害が発生した野呂川ダムや椋(むく)梨(なし)ダム・福富ダムについて、広島県は、浸水の発生要因やダム操作を検証し, 今後の対策や管理のあり方を検討することとし、「平成30年7月豪雨災害を踏まえた今後の水害・土砂災害のあり方検討会」を設置し、検証作業を始めています。その中では、貯水池へ大量の土砂が流入してきたこと、浸水被害の発生要因・シミュレーションやダムの効果や課題の影響等についても検証を行うこととなっています。
今やダム建設は、流域住民の命を脅かす問題となっています。ダム下流域で発生した被害は、国の責任ということでは済まされない。流域自治体の責任が問われます。私ども日本共産党には、議会だよりを見た市民の方々から「まだ、ダムを建設しようとしているのか」「立野ダムに関する情報提供が少なすぎる」と、疑問や抗議の声が相次いで寄せられています。その点を踏まえ、答弁をお願いいたします。
第1に、西日本豪雨災害では、許容量を超える豪雨は現実的に発生しうるということが明らかになりました。そして、ダムの容量は無限ではないために、降雨量が甚大かつ長期化すればダムの洪水調節はできなくなってしまうということです。このような西日本豪雨災害で実際に起こったダムの危険性について、市長はどのように認識されていますでしょうか。
第2に、西日本豪雨災害を大切な教訓とするならば、尊い人命が犠牲になるような事態を回避するためにも、立野ダムの場合も、許容量を超える豪雨が発生すれば、ダムは満水となってあふれ出し、ダム津波を引き起こす危険性があるということを、流域住民である市民に説明すべきではないでしょうか。少なくとも、今回の西日本豪雨と同規模の豪雨が発生した場合の状況を、立野ダムに当てはめシミュレーション・検証し、市民に説明すべきではないでしょうか。現行の立野ダム建設計画において、どの程度の豪雨を想定してダムが安全に機能していくということを確認されているのでしょうか。
第3に、今回の西日本豪雨災害は、ダムがあることによって、一定規模以上の豪雨が発生した場合は、むしろダムの存在が流域に大きな被害をもたらすことがわかりました。立野ダムの安全性について再検証することはもちろん、広島県が行うダムの検証が終わるまで、ダム建設はいったん中止することを国に求め、流域住民の不安と疑問に応える市民への説明の機会をつくるべきではないでしょうか。原発事故でも、ダム事故でも、根拠のない「安全神話」が最も危険です。
以上、市長に伺います。
(答弁)
市長は、国土交通省の出先のような答弁をされましたが、想定外と言われる豪雨災害時の状況に対する認識が甘いと思います。迅速に避難するというのは当たり前です。しかし、それが異常な条件の下でできなかったから、人命が失われるような重篤な事態となったのではありませんか。党市議団では、8月に広島県呉市の野呂川下流の被災地も視察してきました。住民からの聞き取りでは、「サイレンはなったそうだが、そんなのは聞こえなかった。一挙に水位が上がって、気づいた時には、濁流が家の奥まで押し寄せてきた」と言われました。そのお宅の前の川は、普段は葦の生い茂る川だそうですが、土砂と岩石に埋め尽くされ、1mは超えるような大きな岩もあちこちに見られました。ダムから押し寄せてくる激流のすさまじさを目の当たりにしました。
市民アンケートには、「西日本豪雨災害の教訓を踏まえて再調査を行い、必要な処置を行うべき」「現地を見れば立野ダム建設はだめだということははっきり断定できる。無駄な税金を使わないでほしい」などの声がありました。
西日本豪雨災害だけでなく、いま世界中で災害の激甚化がすすみ、大災害が相次いでいます。今年8月インド南部ケララ州では、「100年に1度」の豪雨により、39カ所のダムのうち33カ所が、貯水能力の限界に近づき放流を開始したために、下流で洪水被害が相次ぎ、106人もの死者が出たと報道されています。
河川工学の専門家である新潟大学名誉教授の大熊孝氏は、熊本市で開かれた学習会で「『地震があったからやめる』となぜ言えないのか。ダムは想定通りの雨には対応できるが、想定外の雨には対応できないことが西日本豪雨災害でわかった。ダムを守るために放流しているが、人とダムとどちらが大事か。治水の王道は堤防にある」と言われました。阿蘇地域で想定外の豪雨が発生することは充分考えられます。貯水能力の限界を超えればダムは決壊するので、緊急放流が行われますが、立野ダムの場合は、流水ダムのために、貯水量を調節する機能を持ちません。ひとたび穴が詰まれば、たちまちダムは満水になって決壊することになります。その時被害を受けるのは熊本市民ですから、市長の責任は重大です。そのことを肝に銘じ、市民の安全第一の立場で臨んでいただきたいと思います。