霞ヶ浦のほとりで

徒然なるままに

サインコサイン何になる

2020-08-19 19:20:35 | 地磁気観測の思い出

フォークソングが流行っていた頃『…サインコサイン何になる…』という歌を聞いた時は全くその通りと頷いていましたが、振り返れば毎日の仕事はサインコサインばかりで、これで飯を食べてきた感じです。これはひとえに地磁気観測の特異性によるものです。


地震の観測ならセンサーをX(南北)Y(東西)Z(上下)の直交3軸に設置すればよいだけですが、地磁気の観測はある方向だけを測定できるコンポーネントセンサー(ベクトルセンサー)は近年までありませんでした。


昔から地磁気を測るのは容易ではなかったようで、磁針の振れにより偏角(D)と伏角(I)を測定し、物理の実験のようにしてようやく水平分力(H)を測定することができました。このH、D、Iを「地磁気の3要素」と言ってました。図を見ての通りHは大きさでDとIは角度で、しかもHは偏角の方向のベクトルなので大きさも向きも変化するというイメージしにくいものです。


ここでいよいよサインコサインの登場です。地磁気の全磁力(F)と鉛直分力(Z)が次の計算で求められます。

F=H/cos(I)

Z=Fsin(I)=Htan(I)


私が地磁気観測に携わるようになった頃、二つの大きなアイテムが登場しました。

一つ目は関数電卓です。それまで三角関数表や計算尺を使わなければなりませんでしたが、これでサインコサインの計算が面倒でなくなり一挙に身近になりました。

二つ目はプロトン磁力計で、全磁力が簡単に瞬時に精度良く測定できる夢のような測定器が出来たのです。病院検査でお馴染みのMRI(磁気共鳴)と同じ原理です。これでF、D、Iも「地磁気の3要素」と言われるようになり、サインコサインも次のようにスッキリしました。

H=Fcos(I)

Z=Fsin(I)


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