マムシやスズメバチと並んで身近な毒虫にムカデがいます。
木造の構内宿舎の台所や風呂場は湿っぽくムカデの格好の棲みかでした。夜寝静まるとカサカサと音がするともう寝てはいられません。電灯を点けて慌てて逃げるのを見つけたら蝿叩きやスリッパで仕留めるのですが、姿が見えない時もあってそんな時は落ち着きません。また5年ほど鹿児島で勤務しましたが南国は何でも一回り大きく、ムカデも大きさばかりでなく色艶も鮮やかでした。
先輩達からは、もし気付いた時にムカデが体の上を這っていたら慌てて振り払おうとすると間違いなく刺されるから、通り過ぎるまでそのままじっとしているようにと教えられていました。
ムカデで語り繋がれている話があります。戦後間もない頃の独身寮(一軒家で5~6人)で、Y氏が喉が乾いたと薬缶(やかん)から水を飲もうと口を付けたら、中にいたムカデに唇を噛まれてひどく腫らしたとのこと、その本人から私もその時の様子を聞いたことがあります。
安全な観測のためとは言え、どのくらいのマムシやスズメバチ、そしてムカデの命を奪ったことでしょう。彼らにしてみれば人間と関わりを持つ積もりなど毛頭無いわけで、実に罪作りをしたものと振り返るこの頃です。