レンタル店で借りてみた映画『青くて痛くて脆い』の感想です。原作は住野よるさんで、以前読んだことがありました。原作が映画になったらどのように描かれているのだろうと興味があって観賞しました。原作本は飛ばし読みで読んだので、内容をしっかりと覚えていませんでした。映画を観賞したら、飛ばし読みで読んだ原作から受けたイメージよりもより映画のほうが分かりやすく描かれていたように感じた作品でした。原作も映画も、タイトルどおり、大学生の若い世代の「青くて痛くて脆い」人を傷つけながらも取り返しができないような後悔にまみれた青春群像の1ページのようなどうしようもない感情が描かれていて、やっぱり元気になれなかった作品だったなあというのが第一の感想です。
主人公は大学1年生の田畑楓(吉沢亮さん)が大学の講義で先生に質問していた女学生の秋好寿乃(杉咲花さん)と出会い、なりたい自分になるというテーマを基にした二人だけの秘密結社のサークル「モアイ」を立ち上げて二人で活動していくことから始まるストーリーです。相手を不快にさせないで、距離を保ち、人との接点を極力避けながらも傷つかないようにと振る舞ってきた楓と、理想論をどんどん出しながら内向的な楓を巻き込んで、気の合う仲間のように活動していく秋好とのまぶしそうで楽しそうな関係が最初は描かれていました。ところが、「モアイ」に入会する学生がどんどん増え始めて行くことで二人の関係と二人だけの秘密結社だった「モアイ」が楓にとってどんどん遠ざかって行く存在になって行きました。当初の二人だけの関係性でなくなっていた楓は、何とも言えない寂しさを覚えながらも、「秋好は死んだ。」と秋好の存在そのものと「モアイ」に掛ける秋好の理想を否定し、「モアイ」を潰していくことで、楓の秋好に対する復讐劇に目覚めて行きました。モアイを潰した楓に対し、「もしかしたら私のことをが好きだったの?気持ち悪い。」と秋好が言及していたシーンが最後のほうで描かれていました。その言葉に傷ついた楓でしたが、その前に、楓にとって大切だった秋好の大切な「モアイ」を潰したことで、秋好を傷つけていたという事実があり、なんだかやるせないし、大人ではないし、この言い合いも思いやりがないやり取りだったなあと思いました。若くても、もっと思いやれる関係性を築ける人もいるはずなのに、築こうとしなかったし、しようという勇気もなかった楓の悲しさや寂しさは復讐劇のような誰も救われなさそうなやり方しか思い浮かばなかったのが不思議でした。青くて痛くて脆かったのは楓自身のことだったのかもしれませんね。社会人になった楓が、秋好に対し、自分自身がたとえ傷ついても謝ってやり直そうとしていたシーンが最後にありました。傷つかないようにしか接しられなかった楓自身の成長を感じたシーンには少しだけ希望が持てましたね。