いつの頃からか,原節子殿のことが気になりはじめた。
あちきが小さい頃だったのござるが,
何かで彼女を観て,こんな綺麗な人が世の中にいるんだな・・・。
なんて思うようになった。
当時は,インターネットも一般の家庭には普及しておらず,
また,DVDなんてモノが無かったから,
原節子殿に簡単に会うこともできなかった。
1962年の「忠臣蔵 花の巻 雪の巻」から
すーっと銀幕から降りたことも,
あちきの心を揺すぶるものがあった。
前にも取り上げたのだが,「青春ブロマイド70年」は,
あちきにとって宝物で,大好きな女優さんに会える本でござる。
こういったモノでしか,会えない人が多くなった。
さて,先日,
「原節子 あるがままに生きて」(朝日文庫:貴田庄)を読んだ。
彼女の人生が語られているいい本でござる。
原節子殿は,幾つかコメントを残している。
これは,彼女の大事な「点」である。
その点をたどって,線にする。
そうして,当時の社会の様子や,映画界の事情,
実際の映画などからその線に肉付けを行っていると,
あちきは捉えた。
戦前は,若く,そして欲もなく,
演技も未熟だった。当然だろう。
若さが抜けてきたときには戦争が始まり,
作品や監督にも恵まれなかったと思う。
戦後は,俳優としての一本通った心根,
それから,演技力が高まったが,
年齢や健康という新しい悩みが出てきたと思う。
全般的に,演技についての評価は低い。
しかし,こうも話題を集める女優さんは他にはないと思う。
それは,魅力的な顔立ちがそうさせているのかもしれないし,
引き際の潔さ,そう行動した彼女の高い人間性だったかも知れない。
この本を読んでいくと,後者の魅力が伝わってくる。
「サライ」の2月号でも,原節子殿についてほんの少し取り上げてある。
短い特集だが,あちきにとっては貴重でござる。
それに,まだまだ多くのファンがいらっしゃることが伺える。
あちきは,「小津安二郎 大全集」なるDVDを持っている。
小津さんが監督した9作品が収められたモノで,
価格は1,886円と有り難い。
この全集では,「東京物語」,「麦秋」,「晩春」などで
原節子殿に会うことができる。
あちきは今日,あさから「麦秋」を観ることにした。
内容は皆さん御存知かと思うので割愛するが,
現代の映画とは少し違って,
穏やかな展開を見せる。
そんな中で,一つ一つの台詞に,
実に味わい深いモノを感じるのでござる。
モノクロの,そうして少し懐かしい街並み,
それでいてモダンな社会も出てくる。
昔はよく云った「お茶の間」が舞台の大半だが,
そこに,綺麗な原節子殿が登場する。
ローアングルで,画面の両端に,
襖や扉などが映る構図。
その中で彼女が役を演じるのだが,光り輝くものがある。
今観ても,日本人離れしているなと思う面立ちだ,
当時はもっと「バターくさい」ものがあったかもしれないでござるね。
当時の女優さんは台詞をはっきりと,丁寧に,
綺麗な言葉遣いで話す。
彼女はどうかと云うと・・・賛否分かれる処だろう。
しかし,大事な幾つかの台詞は,
力強さを感じるのでござる。
俳優としての力が認められたこの時代。
彼女の決心のようなものが伺えるのでござる。
あ,そうそう,ビールやお酒の飲みっぷりも素敵なのでござるよ。
今頃彼女は何処でどうしていらっしゃるのでござろう。
なんだか今日は,ぼ~っと,そんなことを考える1日でござる。
あ,これは「東京物語」のひとコマね。