だまし絵?ではないのでござる。
トリックと云うか,だまし絵というか,
その絵の中に何か隠れていて,「ゾ~っ」とすることがあるでござるよね。
でも,この本は,そんな話ではないのでござる。
『「怖い絵」で人間を読む』(NHK出版:中野京子)でござる。
「日曜美術館」だったかな?
例のドガの踊り子の絵,
あの奥に隠れる黒い男の正体について説明があったのでござるが,
知れば何だか当時の世相を垣間見ることができ,
何だか,絵に対する思いが変わったものでござる。
だまし絵のように見えてくる事については,
情報というか知識というかあまり必要でないのでござるが,
その絵に隠された歴史については,
それらに関する情報が必要で,これは学ばないといけない。
そうすることで,絵のもつ重み,
えの奥にある深い世界を知ることができる。
もう一つの感動が生まれるわけでござる。
かくいうあちきも西洋の歴史に関しては,
実に情けないほどの知識しかもたない。
しかし,この中野殿の説明は,実に分かりやすい。
美術館の絵を見ながら,
優しく耳元で語りかけてくるようで脳に染み入る。
沢山紹介される絵画,
それに対して絵のポイントを簡潔に描き込んだ説明文。
人物の系譜など・・・実に分かりやすい。
また,この本は,
その絵の見方だけを示した訳ではない。
そうでござるね・・・人間そのものを鏡に写して表しているように思える。
まさに「人間を読む」でござるね。
あちきが,何か怒っているときは,
この本の中に描かれている絵画のように,
孤独に何かを睨み付けているのかも知れない。