Tsuki軍団の野望

模型・廃墟・本・毎日のちょっとしたくだらない出来事を紹介するでござる。

安原製作所回顧録

2011-01-20 01:01:01 | 本・漫画・雑誌

カメラは数多あるけど,コレは気になる1台でござる。

色々探しても,ココに出てくる「秋月」は,
オークションでも出てこない。

それもそのはず,
200台前後しか出ていないようだから。
※ ちなみに「安原一式」は数点見つかる。



「安原製作所回顧録」(えい文庫:安原 伸)でござる。

「京セラ」で一眼レフカメラの開発に携わった筆者が,
世界最小のカメラメーカー「安原製作所」を設立し,
「安原一式」,「秋月」などの金属製カメラを作り出すのでござるが,
そこに至るまでの考えを,
当時のカメラ業界や社会の価値観を見事にえぐり出して書いている。

あちきは,安原氏が開発されたカメラを持ったことも
見たこともないので,
これらのカメラについてあれこれ云うことができない。
しかし,氏の生き方に憧れるのでござる。
夢をもって生きる,これは本当は当たり前のこと,
しかし,何かが絡まってそうはできないことも多い・・・。

このカメラ,氏の生き方同様,
実に魅力的なカメラなのでござる。

おそらく,あちきがコレを触っても
まともな写真は撮れないだろうと予想するのでござるが,
それでも,持って,撮ってみたいと思わせる。

あちきは日頃から,
誰かが写した,何かの写真が欲しいと思っているわけではない。
単に,写真を撮りたいと思っている訳ではない。
そりゃ,上手に撮れればそれは嬉しい。
でも,その過程,
撮るまでの過程,撮っているときの過程が好きなのでござる。

握って,いじって,試して,撮る。
そうして,できた写真を眺める・・・あれ,思ったより色が悪いな・・・。
なんてね。

例えば,キャンプに行って見てご覧。
何であんなに不便なことをするの?
火をおこして,暖をとって,
水を節約して,灯りだってポンピングしたり・・・。
一つ一つが手間のいる作業・・・。
この作業が実に面白い。

冬場のキャンプで油が凍ってしまって料理がし辛かったなんて,
もうその話は,宝物なのでござる。

それと同じかも。
楽しいことは自分ですることなのでござる。
このカメラにはそれがありそうなのでござる。

さて,簡単にカメラ・メーカーになることは絶対にできない。

そこには,闘わなければならない壁がいくつもあるのでござる。
絶対に作りたいという思いがなければできないし,
作って売るために必要な知識が当然必要なのでござる。

この本が,カメラを作ることの苦労や,
楽しさだけなら,あちきはあまりオススメしないのでござるが,

あちきのような素人でも分かるように,
当時のカメラ業界の様子や,
カメラが誰もが持つことできる家電になってしまったことなどについて,
深く説明してある。
氏は,そのことをよく知っているのでござる。
そうでなければ,ここに出てくる商品は,
世に出てこなかったはずでござる。

そうでござるね,
この本には,カメラの歴史が書き記されているのでござる。
と,同時に,カメラだけでなく,
我々が“当然”と思っていることが,
実は“はかないもの”だということを静かに語っているのでござる。
実に貴重でござる。

あちきもカメラ少しでも触る人間でござるが,
もう少し,消費者としての「責任」をもつべきこともあるな・・・。
とも,考えさせられる本でござった。


 
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ゆるゆる模型軍団 Yuru Yuru Mokei Corps

コメント (3)
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