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「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

命ながければ恥多し 2005・09・04

2005-09-04 06:10:00 | Weblog
 今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。

 「この十年寿命は確かに延びている。七十古来稀れどころか、百歳を超えるものは珍しくなくなった。それをいいことのように言うものがあるが誤りである。ただ生きているだけなら自分にも他人にも迷惑である。
 私は人の盛りは五年だと思っている。大負けに負けて十年だと思っている。スポーツの選手を見れば分る。」

 「スポーツにかぎらない。英雄豪傑経営者もそうである。平家は清盛一代だった。二十余年で清盛は自己の台頭から没落まで見た。それは洋の東西、時の古今を問わない。ヒトラーも十二年だった。
 芸術家はながいといわれるが、処女作を出られない。画家は同じ絵を求められ、売れるかぎり平然と描くからながく見えるだけである。文士は往年の傑作といわれたものをなぞる。」

 「これを要するに人の才能というものは一つしかない。行きづまっても他に転じることはできない。花いっとき人ひと盛りである。弱年のころ百メートルを十秒強で走ったから今も走れるとスポーツの世界では思うものはないのに、他の世界ではあるのである。以前奇想わくがごとくだったから今もと思う経営者がある。
 私は一雑誌を主宰して四十年になるが、プランがわいて出て応接にいとまがなかったのは五年もなかった。それなのに雑誌が四十年も続いたのは全盛時代がなかったせいである。満つれば欠くるといって、全盛時代があればあとは衰えるばかりである。
 命ながければ恥多しという。」

  (山本夏彦著「オーイどこ行くの」-夏彦の写真コラム-新潮文庫 所収)
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