今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。
「なぜ有力な病院と医師のすべてと言わないまでも大半が、この薬(丸山ワクチン)を用いることを拒否するかというとただ同然だからである。丸山千里博士は有徳の君子人で、一アンプル二日分四百五十円で患者に分けている。高いより安いほうがいいにきまっていると思うだろうが、それがそうでないのである。
こんな薬をしかも患者持込で使ったら病院は経営できなくなる。(略)
事は経済に関して効きめに関しない。医師はそう思いたくないから効かないと言っているうち本気で効かないと信じるようになって、ついには顔色をかえるにいたるのである。あれはペイ〈利〉すればかえない顔色で、顔色なんてそんなものだ。けれども患者はその顔色にびくびくしないわけにはいかない。恐れて使ってくれと言いだしかねて悔いを千載に残す不幸は、経済によって解決するよりほかないとこのワクチンの支持者である私は愚考する。
[Ⅲ『問題は結局値段か』昭59・5・10]」
(山本夏彦著「ひとことで言う-山本夏彦箴言集ー」新潮社刊)
「ガン」に対する「丸山ワクチン」の関係と相似た、「経済に関して、効きめに関しない」ことが、いま人間の精神、こころの病「認知症」について生じつつある。こちらは効果が実感できない、副作用ばかりが目立つ「医薬品」と効果が実感できる、健康食品扱いの「クスリ」のせめぎあい。どちらをとるかは自明の理。
「なぜ有力な病院と医師のすべてと言わないまでも大半が、この薬(丸山ワクチン)を用いることを拒否するかというとただ同然だからである。丸山千里博士は有徳の君子人で、一アンプル二日分四百五十円で患者に分けている。高いより安いほうがいいにきまっていると思うだろうが、それがそうでないのである。
こんな薬をしかも患者持込で使ったら病院は経営できなくなる。(略)
事は経済に関して効きめに関しない。医師はそう思いたくないから効かないと言っているうち本気で効かないと信じるようになって、ついには顔色をかえるにいたるのである。あれはペイ〈利〉すればかえない顔色で、顔色なんてそんなものだ。けれども患者はその顔色にびくびくしないわけにはいかない。恐れて使ってくれと言いだしかねて悔いを千載に残す不幸は、経済によって解決するよりほかないとこのワクチンの支持者である私は愚考する。
[Ⅲ『問題は結局値段か』昭59・5・10]」
(山本夏彦著「ひとことで言う-山本夏彦箴言集ー」新潮社刊)
「ガン」に対する「丸山ワクチン」の関係と相似た、「経済に関して、効きめに関しない」ことが、いま人間の精神、こころの病「認知症」について生じつつある。こちらは効果が実感できない、副作用ばかりが目立つ「医薬品」と効果が実感できる、健康食品扱いの「クスリ」のせめぎあい。どちらをとるかは自明の理。