「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

送りばばあ Long Good-bye 2024・04・04

2024-04-04 07:15:00 | Weblog

 

  今日の「 お気に入り 」は 、今読み進めている本の

 中から 、 備忘のため 、抜き書き 。話の本筋とは関

 係ないけど 、面白いと思ったところは メモ しておく 。

  引用はじめ 。

  「 ―― 人間にはいろいろな型といろいろな生き
  方がある 」

 「 ―― 私が少年のころだが 、材木奉行に永沢
  玄蕃という人がいた 、たいそう用心ぶかい性
  分で 、石の落ちてきそうな崖の下などは 、決
  してあるかない 、必ず遠廻りをして森番小屋
  を巡視したものだ 、食事なども生ま物は口に
  せず 、煮炊きした物以外は喰べなかった 、だ
  から落石でけがをしたこともないし食中毒にか
  かったこともなかった 、私も道でたびたび見
  かけたが 、骨太で固太りで 、小柄ではあるが
  精悍そうな 、殺されても死なないような人だ
  った 、それが森へ登る道で 、もっとも安全な
  場所だといわれる 、川岸のところで足を踏み
  外し 、流れにのまれて溺死してしまった 、そ
  のとき慥か四十歳にはなっていなかったと思う
  がね 」

  「 いってみれば 、もの事を避けてばかりいると 、
  その反対のほうに思わぬ災厄や陥穽が待ち構え
  ている 、という一つの例にはなるかもしれな
  い 、と小出方正は云った 。」

  「 この土地の古い伝説に『 送りばばあ 』という
  のがある 。夕暮どきに道をあるいていて 、ゆ
  だんをするとうしろに一人の老婆が付く 、腰の
  曲った白髪あたまの 、瘦せこけた老女で 、自
  然木(じねんぼく)の杖をついてい 、その杖で前
  をあるいている人間を自由に操る 。町へゆくつ
  もりの者が山へ迷いこんだり 、買物に出た者が
  石ころを持って帰ったりする 。それはみな『 送
  りばばあ 』に付かれたからであって 、いちどう
  しろへ付かれたら逃げようがない 。だから夕暮
  どきに出あるきをする場合には 、決してゆだん
  をしてはならない 、というのであった 。」

  引用おわり 。

  まだまだありそで 、愉しみだ 。

 

 

 

   

 

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