今日の「お気に入り」。
「 アンはその夜、満足することの幸福をしみじみ味わった。桜の枝を風が静かに
わたり、ハッカの香がただよってきた。星は窪地(くぼち)の樅の上でまたたき、
木の間からダイアナの窓の灯(ひ)が輝(かがや)いていた。
アンの地平線はクイーンから帰ってきた夜を境としてせばめられた。しかし
道がせばめられたとはいえ、アンは静かな幸福の花が、その道にずっと咲(さ)
きみだれていることを知っていた。真剣(しんけん)な仕事と、りっぱな抱負
(ほうふ)と、厚い友情はアンのものだった。何ものもアンが生まれつきもって
いる空想と、夢の国を奪(うば)うことはできないのだった。そして、道には
つねに曲り角があるのだ。
『神は天にあり、世はすべてよし』(訳注 英国の詩人ブラウニング(1812-89)
の言葉)とアンはそっとささやいた。」
( Lucy Maud Montgomery 著、村岡花子訳 「赤毛のアン」(原題 "Anne of Green Gables") 新潮文庫所収 )
「赤毛のアン」の最後の文章、その原文は:
" God's in his heaven, all's right with the world." whispered Anne softly.
・・・・ And there was always the bend in the road. ・・・・・