「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

Long Good-bye 2019・10・25

2019-10-25 05:30:00 | Weblog






  今日の「お気に入り」。


  「 アンが小川の丸木橋をわたると、グリン・ゲイブルスの台所の灯が『 お帰り 』という

   ようになつかしくまたたいており、あいている戸口から炉の火が輝いて、秋の夜寒にあた

   たかそうな赤い光を放ってい た。アンが元気よく丘を駆けあがり台所に駆けこむと、テー

   ブルの上には熱い夕食が待っていた。

   『 やっと、帰ってきたね 』とマリラは言って、編物をしまった。

   『 ええ、ああ、帰ってきてうれしいわ 』アンはうれしそうに叫んだ。

   『 なにもかも、時計にだってキスしたいくらいだわ。マリラ、焼き鶏ね! まさかあたし

    のためにこさえたんじゃないでしょうね 』

   『 そうだよ。あんたにさ 』マリラは答えた。『 あんなにながいこと乗ってくるんだから、

    さぞお腹をすかしてくるだろうと思ってね、なにかおいしいものがほしかろうと思ったのだよ。

    さあ早く、外套や帽子をぬいでおいで。マシュウが帰ってきたらすぐ食事だよ。あんたが帰っ

    てきてたすかったよ。あんたがいないと、ひどくさびしくてね、こんなながい四日間をすごし

    たことはないよ 』

    夕食のあと、アンは炉の前に、マシュウとマリラの間にすわり、町でのことをすっかり話して

    きかせ、最後にうれしそうに、『 とてもすばらしかったわ。あたしの生涯で画期的なことにな

    ると思うの。 でもいちばんよかったことは家へ帰ってくることだったわ 』」


   ( Lucy Maud Montgomery 著、村岡花子訳 「赤毛のアン」(原題 "Anne of Green Gables") 新潮文庫所収 )



                 

         
   


                
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