今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。
「テレビのキャスターは事故があると痛ましげな顔をする。人死にがあったり人殺しがあったりすると、嬉しくてたまらぬくせに神妙な顔をする。はじめ遺族につきまとってマイクをつきつけ、航空機の墜落を知ったときのお気持ちとやらを聞く。どうして私たちはカメラマンともども彼らを、六尺棒でなぎ倒すことが許されないのだろう。」
「彼らはそれを編集してさも悲しげな顔をつくって語る。そして次なる明るいテーマ、たいてい芸人の醜聞に移るのである。そのときこの神妙な顔は次なる醜聞用の顔に一変するのだから、あれはつくってつくりなれた顔だと分るのである。面皮を剥ぐという言葉がある。ずいぶん慣れはしたものの、私はあの顔を見るとかけよってその面皮を剥いでやりたいと思うことがある。」
(山本夏彦著「不意のことば」所収)
「テレビのキャスターは事故があると痛ましげな顔をする。人死にがあったり人殺しがあったりすると、嬉しくてたまらぬくせに神妙な顔をする。はじめ遺族につきまとってマイクをつきつけ、航空機の墜落を知ったときのお気持ちとやらを聞く。どうして私たちはカメラマンともども彼らを、六尺棒でなぎ倒すことが許されないのだろう。」
「彼らはそれを編集してさも悲しげな顔をつくって語る。そして次なる明るいテーマ、たいてい芸人の醜聞に移るのである。そのときこの神妙な顔は次なる醜聞用の顔に一変するのだから、あれはつくってつくりなれた顔だと分るのである。面皮を剥ぐという言葉がある。ずいぶん慣れはしたものの、私はあの顔を見るとかけよってその面皮を剥いでやりたいと思うことがある。」
(山本夏彦著「不意のことば」所収)