TRASHBOX

日々の思い、記憶のゴミ箱に行く前に。

『ぼくたちは習慣で、できている。』佐々木典士(2018)

2019年06月07日 | 読書とか

人は困ったときに自己啓発本を読む生き物だ。もしそうでないなら、少なくとも自分はそうだ。というわけで、今回もいろいろ困ってました。問題はあまりに時間の使い方が酷すぎて、仕上げるべきことがまったく進まない。今までの失敗したプロジェクトの記憶が頭をよぎる……なんだか借金返済のために馬券を買ってるような気がしないでもないが、溺れる者はいろいろ手を出すのですよ。

とはいえ、(今のところ)収穫はあったと思う。簡単に言えば「意志や情熱で生きるのではなく、まず習慣を作り上げ、それに身を任せろ」みたいな話だ。ふーん、で、そんな収穫あったの?と言われそうだが、この本なかなかよくできている。

何がよくできているかというと、単なる習慣づくりのノウハウではなく、習慣の有効性の背景が「構造」として書かれてあるからだ。たとえば「不安が意志力を減らす」という項目には、こんな風に書かれている。

自分が決めたやるべき習慣ができないと、自己否定感や不安が生まれる。そして意志力が失われるので、なおさら次の課題に取り組めなくなるという悪循環にハマってしまう。(p.43)

またあるいは、「不安は消えない、不安とうまくつきあう」には、以下の一節がある。

フリーランスになって仕事や貯金残型の不安が襲ってくるのは「実際に減った」ときではなく、「手応えのある仕事ができず、ダラダラしてしまった1日の終わりに襲ってきた」「ぼくが後悔したことをきっかけに、不安は襲いにきたのである」。(p.310)

つまり、「どう習慣を作るか」というHowではなく、「なぜ習慣が有効か」というWhyを述べることで、読者は自ずと自らの習慣を作る必要を感じる流れを作っている。で、「あー、やっぱり自分も習慣を作らなくては。どーすれば良いのか、早く知りたい!」となったとろに、いわゆる「実践編」である3章の「習慣を身につけるための50のステップ」がくれば、待ってました!となるわけだ。

ところで最初に「手っ取り早く『習慣化のコツ』だけ知りたいという人は3章だけ読むのもオススメです(p.11)」とあるが、実際にそう読む人は少ないのではないか。で、1章で「意志力の問題」を考え、2章で「習慣とは何か」を考えることで、この本を読むこと自体が疑似的な習慣体験として、その達成感を味わえるというメタ構造になっているとも言えるだろう。もちろん、著者がこういった手練手管を考えていたというよりは、担当編集者の勘のなせる技では、と想像している。

それから要所ごとに配置されている引用の絶妙な距離感(ベタすぎず、かけ離れすぎず)や硬軟の加減も技ありで、この辺は著者自身の編集者としての勘所なのだろうか。腕のいいDJがいい感じのリフをインサートするみたいでもある。

ということで、自分も常々アウトプットしなくちゃと思いつつ放置プレイだったブログにこんな感想を書いてみた。はたしてこれは習慣化するのか!?

※出版社サイトはこちら(アフィリエイトではありません)

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