TRASHBOX

日々の思い、記憶のゴミ箱に行く前に。

『億男』川村元気(2014)

2019年06月08日 | 読書とか

読み終えて(というか終盤にさしかかっての)感想が「やられた!」だった。そこに至る伏線は十分にあったのに、なぜ気づかなかったのだ、と自分の阿呆さ加減が嫌になると同時に、著者の川村さんの上手さにまんまと転がされた(褒め言葉のつもり)と思った。これが先日のインタビュー番組でご本人が仰っていた、「肩書きが分からない」人がもつ技なのかもしれない。

文体としては妙な癖がなくスムーズで巧み。前半は何ていうか、なで肩の伊坂幸太郎氏風でもあり、程よい心拍数のドキドキ感をかき立てられた。最後の方で主人公の一男の別居中の妻や娘の描写は、どこか村上春樹氏の筆跡を思い起こさせる。けれどもそれらは借り物のようでもなく、きちんと大きな流れのなかで機能している。そう考えると、やはり川村氏の土台は「プロデューサー」なのだなぁと感じた(といいつつ、その後のご活躍をフォローできていないので何とも言えないのだけど)。個人的には、今度は『どちらを選んだのかはわからないが どちらかを選んだことははっきりしている』を観たいです。

 


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