――ネットの時代によみがえる、物売りの知恵――
副題は「心の琴線にふれる言葉の法則」。以前デビッド・オグルビーの「ある広告人の告白」が新訳で出たときも温故知新ビジネスのたくましさを感じたのだが、そのオグルビーが学んだ本というのがさらに凄い。
ここで書かれているコピー作法は、かつてのコピーライターブーム(そんな時代もあったなぁ……)の頃なら「昔の古臭い手法」と一蹴されたものだろう。しかし『インターネットが普及した環境で、より効果的に使える』という監修の神田氏の言葉通り、いまのメディア環境に古典的セールスマンのような語り口がフィットするというのが興味深い。ネットビジネスを経営している知人も、この本を読みこんで参考にしているそうだ。
そういう意味では実用的な一冊だが、教科書を読むように白紙の状態で頭から学んでもあまり意味がないだろう。ある程度の実務を経て、それを念頭に読むのが効果的だと思う。見落としていたこと、陥りがちな過ちのチェックリストとして使ってこそ、国も時代もかけ離れた事例が役に立つはずだ。
逆に言うと、ほとんどの事例は著者の自説を裏づけるためのアイテムであり、どうでもいいような切り口や首を傾げるたくなるレトリックも多い。代理店やクリエイティブハウスの、視点の発見者&戦略の開発者としてのコピーライターの人なら、いまのコミュニケーションを考える資料として使うというスタンスが正解だろう。
ところでこの本が話題になった理由は、なによりも「監修」の神田昌典氏のネームバリューだろう。「監修者はじめに」に、氏のこんな一文がある。
『いまから12年前のこと――毎晩、むさぶるように本書を読んでいた。ベッドのなかで眠気に意識を失うまで、手放さなかった。目覚めても、開かれたまのページに舞い戻った』
なんだか氏らしからぬ(?)熱い文章を読んで、ふと思った。この人、いわゆるクリエイティブに対するコンプレックスがあるのではないだろうか。
頭脳明晰、学業優秀であるにも関わらず表現センスの未熟な人が、それに対して左脳全開で対処するパターンに何度か出くわしたことがある。ずいぶん前だが、官庁のキャリア系担当者に「表現の論理が解明できれば、狙い通りの広告ができるはずですよね」と言われたことがあった。人の心を動かすメッセージとは、この人永久に無縁だな、と思った。コミュニケーションに必要なのは、論理ではなく人間を理解することだ。
副題は「心の琴線にふれる言葉の法則」。以前デビッド・オグルビーの「ある広告人の告白」が新訳で出たときも温故知新ビジネスのたくましさを感じたのだが、そのオグルビーが学んだ本というのがさらに凄い。
ここで書かれているコピー作法は、かつてのコピーライターブーム(そんな時代もあったなぁ……)の頃なら「昔の古臭い手法」と一蹴されたものだろう。しかし『インターネットが普及した環境で、より効果的に使える』という監修の神田氏の言葉通り、いまのメディア環境に古典的セールスマンのような語り口がフィットするというのが興味深い。ネットビジネスを経営している知人も、この本を読みこんで参考にしているそうだ。
そういう意味では実用的な一冊だが、教科書を読むように白紙の状態で頭から学んでもあまり意味がないだろう。ある程度の実務を経て、それを念頭に読むのが効果的だと思う。見落としていたこと、陥りがちな過ちのチェックリストとして使ってこそ、国も時代もかけ離れた事例が役に立つはずだ。
逆に言うと、ほとんどの事例は著者の自説を裏づけるためのアイテムであり、どうでもいいような切り口や首を傾げるたくなるレトリックも多い。代理店やクリエイティブハウスの、視点の発見者&戦略の開発者としてのコピーライターの人なら、いまのコミュニケーションを考える資料として使うというスタンスが正解だろう。
ところでこの本が話題になった理由は、なによりも「監修」の神田昌典氏のネームバリューだろう。「監修者はじめに」に、氏のこんな一文がある。
『いまから12年前のこと――毎晩、むさぶるように本書を読んでいた。ベッドのなかで眠気に意識を失うまで、手放さなかった。目覚めても、開かれたまのページに舞い戻った』
なんだか氏らしからぬ(?)熱い文章を読んで、ふと思った。この人、いわゆるクリエイティブに対するコンプレックスがあるのではないだろうか。
頭脳明晰、学業優秀であるにも関わらず表現センスの未熟な人が、それに対して左脳全開で対処するパターンに何度か出くわしたことがある。ずいぶん前だが、官庁のキャリア系担当者に「表現の論理が解明できれば、狙い通りの広告ができるはずですよね」と言われたことがあった。人の心を動かすメッセージとは、この人永久に無縁だな、と思った。コミュニケーションに必要なのは、論理ではなく人間を理解することだ。
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