国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

男女の自然な会話から、「ジャズ」と「愛」を知れ!

2009年07月05日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
そもそも「ジャズが似合う」というと
ジェントルマンのようなイメージであったり、
ちょっとおしゃれな(これが華美すぎではいけない)レディであったりと
世間的にイメージは出来上がっている。

だが、そんな簡単に「ジャズが似合う」男女などいない。
そもそもすぐにジャズが分かるのならば、
書店には「ジャズ入門書」は並ばないだろう。
まぁ、言ってしまえばジャズはそんな簡単なものではないのだ。

今日のアルバムの2人は、
とてつもなく「ジャズが似合」っている男女だと思う。
『ユタ・ヒップ・ウィズ・ズート・シムズ』である。

ユタ・ヒップは、ドイツ人である。
しかも女性である。ブルーノートとしては珍しいことだ。
アルフレッド・ライオンもドイツ人であることから、
おそらく同郷のよしみもあり、
「ヒッコリー・ハウス」というステーキレストランで
先に2枚のアルバムを録音している。
そして最後に録音した作品が本作である。

ズート・シムズは白人のテナーサックス奏者として高名である。
それだけテクニックもアドリブ力もあるわけだ。
そんな力量溢れるズートに寄りかかるように、
ユタ・ヒップは鍵盤の上で指を踊らせる。
2曲目の「コートにすみれを」のイントロでは、
優美なメロディーを聴かせ、入り込むズートを優しく迎え入れている。
テーマの間もしっかりとした音色をユタは奏でる。
芯は細いが、1音1音をユタは愛おしそうに弾く。
それに答えるようにズートも柔らかく包み込むような音を聴かせてくれる。
まさに自然な会話のような流れていく演奏。
これこそが「ジャズの似合う」男女じゃないか?

ユタ・ヒップはこのアルバムの後、
ドイツに戻り、演奏を残していない。
「ジャズが似合う」ヤツになりたいのなら、
まずはこの男女の優しい会話を聴くしかない!