国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

音色は哀愁、でもどこか楽天的なのだ!

2009年07月01日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
哀愁感が漂うのに、どことなく明るい。
そんな雰囲気のサックスの音色がある。
肩肘張らず、心地よくその音に身をゆだね、
体全体でリズムを取るのが正しい聴き方ってもんだろう。

『ザ・マーチン・ペイチ・カルテット』
通称「タンパのペッパー」である。
タンパというのは、このアルバムを初めて出したレコード会社であり、
「タンパのペッパー」は、一昔前までは
簡単に入手できる代物ではなかったそうだ。
それが、昨今の名盤復刻で、
容易に手に入れることができるようになったのだから、
幸せなことである。

ペッパーは、もちろんアルトサックス奏者のアート・ペッパーである。
リーダーはピアノのマーチン・ペイチだが、
何よりもアート・ペッパーが超ご機嫌な吹きっぷりなのだ。
ジャケットにも「フューチャリング・アート・ペッパー」とあり、
ペッパーが全面に押し出されている。

まぁ、このアルバムの良さは、やっぱりペッパーなのだ。
「ユウ・アンド・ザ・ナイト・アンド・ザ・ミュージック」を聴けば、
軽やかにスイングするペッパーに、すっかりのせられてしまう。
「ウエスト・コースト・ジャズ」
西海岸のジャズの雄としてならしたペッパーの音楽が
決して軽すぎないのはきっかりとしたアドリブと
軽妙なリズム感にあると思う。
聴けば、ブルーノートと随分感じが違うことは一聴瞭然だろう。

「オーバー・ザ・レインボー」を聴いてほしい。
雨上がりのスッキリと晴れ渡った空に、
七色の虹がはっきりと浮かんでくる。
ペッパーのしっかりとした輪郭線のあるサックスの音色のおかげである。

初期のペッパーは、しっとり感がある。
「明るさの中に哀愁」はよくある話だが、
「哀愁の中に明るさ」というどことなく楽天的な響きは、
ウエスト・コーストだからこその音色なのだろう。