寅の子文庫の、とらのこ日記

本が読みたいけど本が読めない備忘録

本に挟まっていたもの~1枚の愛読者カードから

2006年10月16日 06時05分00秒 | 15年戦争
私は玉砕しなかった―グアムで投降した兵士の記録

中央公論新社

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本を整理していると投函前の愛読者カードが挟まっていた。
1葉にびっしりと綴られた戦争への思い。

~戦争末期を学徒勤労動員の中で過ごし
敗戦を予期させられ死ぬのは嫌だと内心決め込んでいた
逃げられぬ島国 最終的な運命を予感しつつ
文学の中へ逃避し学業は完全に捨てていた
厳しい戦線で自己を見つめ投降された作者に敬意を表します
また最後まで戦争を語れなかった心も理解できます
私自身の生き方 或いは今日に至るまでの生活の中に
口にすることを憚るものを多く持つ者として
本当のことを語る 語りたいと考える
しかし いつの日 それに手をつけられるだろうか
真に自分を見つめ 本当のことが書けるか まだ心を決めかねている
語る者も語られる者も傷つく ささやかな抵抗を秘めて死ぬべきだろうか?
埋もれている人間の真実の手記がまだまだ沢山ある筈です
発掘発刊して下さい~

*男性/59歳団体職員・差出人有効期間/ 昭和65年6月10日まで
*挟まっていた本/ 改訂前初版【玉砕しなかった兵士の手記/横田正平/1988】


愛読者カードは投函されず挟まれていた。
15年戦争の傷は癒えることなく生涯命の底に暗くよどんで晴れることがない。
貴重な体験は語られずして、埋もれていく人生は多い。
はがきを書かれた人の人生もまたいつしか忘れ去られる。
しかし皮肉にも極限に置かれた人間の真の姿こそ最も崇高で
きら星とばかり輝やいていると知らなければならぬ。