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現代へのまなざし

日本とはなにかを探求します。

物価対策と財政のバラマキ-衰退しつつある日本-

2022-09-10 11:47:04 | 政治
 岸田政権は、9月9日に、住民税非課税の1,600万世帯への5万円の給付金(総額約9千億円)や、ガソリン価格の高騰押さえるための石油元売り会社への補助金の延長(費用約1兆3千億円)などを柱とする物価対策を決定した。この対策の中には、等道府県や市区町村が発行するプレミアム商品券などに使う地方創生臨時交付金6,000億円も含まれている。
 この財源には予備費が使われるが、この予備費の財源(裏付け)は赤字国債である。

 この物価高は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックからの回復による需要の増加に加え、サプライチェーンの混乱、ロシアのウクライナ侵攻に伴う先進国のロシアへの経済制裁が原因となっている。
 また、アメリカやEU各国が物価高対策として中央銀行の金利を引き上げたことから、マイナス金利政策を取る日本銀行との金利差が大きくなり円安が急激に進んでおり、輸入価格が上昇していることも、物価高の原因となっている。

 ウクライナ情勢がどうなるのか先が見通せない。ロシアが占領しているドンバス地域などの奪還に向け、ウクライナ軍が反撃を行っているが、そのウクライナ軍に対してはアメリカやイギリスが武器を提供し続けるので、ウクライナ兵士の補給さえあれば反撃をやめることはないだろう。ウクライナでは18~60歳までのウクライナ人男性は出国が禁止されており、彼はいずれ徴兵されることから、ウクライナ兵士は長期間にわたって補給されるだろう。ウクライナはロシア軍が撤退すれば別だが、プーチン氏が大統領である限りロシアと戦争を続けるだろう。つまり、ウクライナとロシアの間で停戦協定が結ばれることはないだろう。

 このため、先進国のロシアへの経済制裁は長期間になると思われるので、日本の物価上昇は一時的なものでなく、長期にわたるのではないか。市場関係者や経済アナリストは物価の上昇は定着しないとの見方だが、今までも市場関係者や経済アナリストの予測の多くは外れている。

 資源価格の高騰に加え、円安が加わることで、日本の物価上昇率は2%ではなく、さらに上昇するかもしれない。その時に、賃金上昇率がこの物価上昇率を下回れば、人々の実質賃金は低下し、国内消費は低迷してしまうだろう。

 そうなれば、日本政府は、今回の物価高対策と同じように、またまた赤字国債を発行して国民に対するバラマキを拡大させるのだろう。現時点でも、赤字国債によって、つまり将来世代に負担を押しつけ、物価高対策を行っているが、こういう政策が継続されるのだろうか。
 そしてどんどん積み上がる赤字国債(=財政赤字)。日本の財政赤字はGDP比で200%を超え、先進国ダントツの赤字比率となっており、EUであれば認められない水準まで悪化している。
 その財政赤字、つまり赤字国債を日本銀行が異次元緩和の名前で買い支えている。財政法で禁止されている「財政ファイナンス」を日本銀行が行うことで、国債の利回りを抑えているのである。

 将来世代への負担の押しつけ、将来需要の先食いは、日本の潜在成長率をさらに引き下げるものであり、日本の将来をさらに暗くするものである。このまま財政赤字を増やし続け、バラマキを行い、現状維持を図るようなことを繰り返せば、日本はいつまで経っても賃金が上昇せず、他方で財政赤字が膨らみ、「老衰国家」となって死にゆくことになるだろう。
 政府が破綻に近い状況になって改革をすれば、多くの国民が預金を失うという酷いことになる。つまり、急激なインフレによる貨幣価値の大きな低下(1個130円のハンバーガーが500円に値上げ、コンビニ弁当が1500円に値上げなど)によって実質的な預金の目減り、あるいは、預金に対し税率50%の預金税を課税するなどの歳入確保によって預金が失われるのである。
 今から、多少の痛みを伴ったとしても、金融資産課税の強化や法人税率の引き上げなどによる財政の健全化を図る必要がある。
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歪んだNHKニュース-NHKが垂れ流すプロパガンダ-

2022-08-10 20:57:32 | 政治
 数年前からNHKの報道姿勢には疑問を抱いている。つまり、NHKの報道姿勢が、第2次安倍政権成立のときから、政権にとって都合の良い報道を行うようになったと感じる。それ以前は、与野党双方の言い分を放送し、さらに政権(自民党政権、民主党政権にかかわらず時の政権)の主張の疑問点を指摘するような報道だった。しかし、現在は自民党の広報番組とも言えるような報道になっている。さらに、ロシアのウクライナ侵攻をめぐっては、アメリカの戦略に従った報道を行うようになったと感じる。このNHKの姿勢は当面変わることはないだろう。であれば、今後、NHKがどのような報道を行うのか予想してみよう。

 まず、9月に予定されている安倍元総理の国葬である。NHKはこの国葬を生中継するだろう。そして、その中で、過去の安倍元首相の国会での所信表明演説や答弁を垂れ流すだろう。その答弁が虚偽答弁であるか、質問をはぐらかした答弁であるかは全く関係ない。視聴者に訴えかけるような映像を垂れ流すだろう。
 森友学園問題、加計学園問題、桜を見る会に関する問題、世界平和統一家庭連合(旧統一教会、以下「統一教会」という。)との関連を示す問題にはほとんど触れないのではないか。特に、統一教会との関係については一切触れないのではないか。統一教会との問題こそが、安倍元総理への銃撃事件の原因となったにも関わらず、NHKは視聴者の安倍元総理への印象が悪化するような問題には触れないだろう。
 そして、憲法改正に関する報道についても、安倍元総理が望んだ自民党改憲草案の反民主主義的、国家主義的な観点を隠蔽しつつ、視聴者が自民党の憲法改正草案に賛成するよう誘導するような報道を繰り返すだろう。

 国際社会をめぐる問題については、アメリカの戦略に則った報道を繰り返すだろう。
 まず、ウクライナ侵攻問題では、徹底的にロシアを悪と決めつけた報道を繰り返すだろう。ロシアへの経済制裁によって原油価格や天然ガス価格が上昇しているが、それはすべてロシアの責任だという報道を繰り返すだろう。サハリン2に対する日本の権益についても、すべてロシアの責任だという報道をするだろう。
 ウクライナの人達が犠牲になった場合でも、全てロシアの責任だとするだろう。ゼレンスキー大統領がロシアと交渉し、妥協点を見出せばウクライナの人達の犠牲は食い止められるが、戦闘を続行し、国民の被害を拡大させるゼレンスキー大統領は正義を実現する偉大な英雄として報道するだろう。

 アメリカが最も警戒する中国についても、同様の報道を繰り返すだろう。中国は悪であり、中国の習近平主席は独裁政治を行っており、ウイグルやチベットの人達の人権を侵害している。習近平体制は悪の政権であり、アメリカや日本、台湾は正義を実現する素晴らしい政府だという報道を繰り返すだろう。
 中東問題についても、イスラエルとサウジアラビアは正しい、シリアとイランは悪の国だという姿勢で報道を行うだろう。

 特に、自民党保守派の悲願である憲法改正をめぐって、中国やロシアの脅威を繰り返し視聴者に訴えかけ、外国からの軍事的脅威に対抗するためには日本国憲法の改正、特に憲法第9条の改正が必要だというような報道を行うだろう。

 放送法の第4条では、「第四条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
 一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
 二 政治的に公平であること。
 三 報道は事実をまげないですること。
 四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」
と規定しているが、NHKの報道姿勢は放送法を無視しているようである。

 アメリカではFOXニュースがキリスト教福音派などの保守層のためのニュースを放送しているが、日本では、日本放送協会という公共放送が自民党のためのニュースを報道しているような印象を受ける。
 NHKスペシャルなどの素晴らしい番組も制作しており、政治が絡んでいないような部分では公共放送の名に恥じない放送をしていると感じるが、政治に関連するNHKニュースについては、自民党のプロパガンダを垂れ流すような報道機関となっているように感じざるを得ない。
 ここまで堕ちたNHKニュースをNHK関係者はどのように感じているのだろうか。
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ロシアのウクライナ侵攻に関する報道-プロパガンダ-

2022-07-16 12:01:41 | 政治
 ロシアのウクライナ侵攻に関する報道が繰り返されているが、その報道内容には常に驚かされるものがある。
 今の西側のメディアは「ウクライナ=善、ロシア=悪」という単純で感情的な二元論で報道を行っており、ロシアが行っていることは全て悪であり、他方でウクライナが行っていることは全て善であるというものである。ロシアの軍事侵攻が国際法上許されないことは当然である。その点で、ロシアが批判され続けられることは当然のことである。

 しかし、ウクライナの実態がどのようなものであったのかを報道するものはほとんど見かけない。
 2004年の「オレンジ革命」と呼ばれているものの実態や2014年の「マイダン革命」と呼ばれているものの実態、ウクライナの経済状況や人口動態などについて、全くと言って良いほど触れられていない。
 「独立以降、産業・貿易構造の転換を果たせていないことが、今に至るまでのウクライナの経済の不調の根幹にある。さらに、産業・貿易構造の転換を本来なら促すべき政治が長期にわたって不安定であり、堅実な経済運営がなされてこなかった。そうした中でIMFやEUから課された構造調整策がウクライナの経済の体力を奪うという構造が出来上がってしまったと言えよう。」(「マクロ経済の視点から見たウクライナ問題」土田陽介(三菱UFJリサーチ&コンサルティング))

 不安定な政治状況の中で、コメディアンであったゼレンスキーが大統領に選ばれ、素人政治家のゼレンスキー大統領がどのような政治を行っていたのかなどについては、報道されることがない。ポピュリズム政治を行っていたのか、あるいは、ウクライナの将来のことを念頭に行政運営をしていたのか、全く不明である。
 ミンスク合意「2014年に始まったウクライナ東部紛争を巡る和平合意。ロシアとウクライナ、ドイツ、フランスの首脳が15年2月にベラルーシの首都ミンスクでまとめた。ロシアを後ろ盾とする親ロ派武装勢力とウクライナ軍による戦闘の停止など和平に向けた道筋を示した。大規模な戦闘は止まったものの合意後も断続的に戦闘が続いた。」(日本経済新聞、2022年2月24日)をウクライナのゼレンスキー大統領は履行することなく、反故にしていたが、それがロシアの軍事侵攻を招く大きな理由だったのではないか。

 ロシアが軍事侵攻をした理由は何か、それまでのウクライナをめぐる情勢はどのようなものだったのか、ウクライナの国内の動きはどうだったのか、アゾフ大隊とはどのような組織なのか、ドンバス地方をめぐる動きはどうだったのか、ミンスク合意はどうなったのか、NATOの動きはどうだったのか、NATOの拡大に対するロシアの対応はどうだったのか、など、重要な情報は全く報道していない。

 「「プーチンは、かつてのソ連やロシア帝国の復活を目論んでいて、東欧全体を支配しようとしている。ウクライナで終わりではない。その後は、ポーランドやバルト三国に侵攻する。ゆえにウクライナ問題でプーチンと交渉し、妥協することは、融和的態度で結局ヒトラーの暴走を許した1938年のミュンヘン会議の二の舞になる」――西側メディアでは、日々こう語られているが、「ウクライナのNATO入りは絶対に許さない」とロシアは明確な警告を発してきたのにもかかわらず、西側がこれを無視したことが、今回の戦争の要因だ。」(「第三次世界大戦はもう始まっている」エマニュエル・トッド著、大野舞訳、文春文庫)
 世界的な知性であるエマニュエル・トッドの指摘の方が正しいのではないか。

 ロシアのウクライナ侵攻に関する話題について、日本のメディアは公平・公正な視点で報道をして欲しいものである。現状では、ロシアの報道はプロパガンダと決めつけている西側のメディアであるが、日本をはじめとする西側メディアの報道もまたプロパガンダではないかと強く感じてしまう状況である。
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人工妊娠中絶を禁止するアメリカ-聖書を信じるアメリカの民衆-

2022-06-25 16:44:58 | 政治
 アメリカ連邦最高裁判所は6月24日、人工妊娠中絶はアメリカ合衆国憲法で認められた女性の権利であるとしてきた1973年の「ロー対ウェイド」判決を覆す判断を示した。この判決により、アメリカでは女性が中絶を行う権利がアメリカ合衆国憲法で保障されなくなる。

 それでは日本はどのような状況なのだろうか。日本では、「母体保護法」第14条で「妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」や「暴行若しくは脅迫によつて又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの」などの場合は、人工妊娠中絶ができるとしているが、ほぼ、妊娠した女性が希望すれば、人工妊娠中絶ができるのが実情だろう。しかし、母体保護法の第2条で「この法律で人工妊娠中絶とは、胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期に、人工的に、胎児及びその附属物を母体外に排出することをいう。」と人工妊娠中絶の定義をしており、厚生事務次官通知により人工妊娠中絶を実施することのできる時期を、「通常満22週未満」にしており、日本でも、通常満22週を超えては人工妊娠中絶はできない。

 アメリカではキリスト教の影響がかなり強い。1973年に「ロー対ウェイド」判決が下されたとき、人の生命は受精から始まるものであって、妊娠中絶は人殺しに他ならないという教会の教える信じていたカトリック教徒の多くが判決に猛反発している。また、プロテスタントの中でもエヴァンジェリカル(福音派。トランプ前大統領や共和党の強固な支持層。アメリカ人の約30~35%、約1億人程度と見積もられている )も強く反発していた。
 これらのことから、アメリカでは、共和党の大統領は連邦最高裁判事に保守派を増やすことで、1973年の「ロー対ウェイド」判決を覆そうとしていた。
 トランプが大統領だったときに、逝去した保守派判事、引退した保守中間派の判事、逝去したリベラル派の判事、合計3人の判事の後任にすべて保守派の判事を任命したことから、保守派4人、保守中間派1人、リベラル派4人だったものが、保守派7人、リベラル派3人という構成になり、保守派であるキリスト教福音派や共和党議員が望む、1973年の「ロー対ウェイド」判決を覆すことになったのである。
 この判決を再度覆すためには、リベラル派の判事を5名にまで増やす必要があるが、保守派2人をリベラル派にすることは非常に困難である。アメリカの最高裁判事の任命には議会の承認が必要であることから、大統領と議会の多数派を民主党が占める必要があるが、この中間選挙では民主党は敗北模様なので、次期大統領が民主党の大統領になっても簡単にはリベラル派を増やすことはできない。1981年に就任したレーガン大統領の時代から1973年の「ロー対ウェイド」判決を覆そうとしていたが、実現したのは2022年であるので、実現までに41年を要している。

 先日は銃規制法が成立したが、銃の携行はアメリカ憲法で保障された国民の権利である。そして、今やアメリカでは、性犯罪や近親相姦などによって妊娠した場合でも、女性は中絶を行うことができなくなった(中絶の権利を認めている州もある。)。

 ところで、妊娠とは、種の存続のために生物に与えられた機能であり、野生では妊娠中絶を認めることはできないだろう。しかし、望まない妊娠もあるため、日本でへは、母体への負担、胎児の母体外での生命保続能力などから通常満22週未満までは人工妊娠中絶を認めている。

 アメリカは本当に先進国なのだろうか。
 この時代になっても進化論ではなく天地創造の神話を信じるアメリカ人が全国民の約半数いると言われている国、アメリカ(ちなみに、進化を信じていても、神が進化の過程を導いていると考える人達が37%、天地創造を信じている人と合わせると8割以上になるという(『神と科学は共存できるか?』スティーヴン・ジェイ・グールド(日経BP社)))。

 旧約聖書に登場する人類の始祖はアダムとその妻イブであるが、イブはアダムのあばら骨から、そのよき助け手としてつくられていることから、女性は男性に従うべき存在であるとキリスト教福音派などは考えている(ちなみに、イブは蛇にそそのかされて智恵の実を食べたことから、女性は、神から産みの苦しみ(出産時の苦痛)を与えられた。)。

 共和党支持のアメリカの民衆(このうちの低学歴白人労働者層の多くが熱狂的なトランプ支持者)とは、キリスト教、聖書を信じ、信仰に厚く、純粋(ナイーブ)な人達が多いということだろう。人のいい民衆は気が合えば楽しい人達だろうが、他方で、ポピュリズムの担い手となり、トランプのような人間を大統領にしてしまう人達でもある。トム・ソーヤーの冒険に出てくる民衆、赤毛のアンに出てくる民衆、そういった人達がアメリカの民衆であり、時代が変わっても民衆の在り方は変わっていないのだろう。
 アメリカの民衆に比べて日本の民衆はかなりリベラルなのである。
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格差社会の中で、人々は格差を望むのだろうか

2022-03-16 19:42:24 | 政治
 日本人の多くは日本は格差が拡大していると感じているが、この格差の多くは人々が保有する金融資産と不動産(固定資産)の違いによる。
 金融資産は手持ちの現金や銀行預金などの現金資産、株式投資などの株式出資金、国債などの債券や投資信託、生命保険に加入している場合の保険年金準備金などがある。

 ところで、不動産を保有している場合には固定資産税が課税されるが、金融資産を保有している場合は金融資産税などは課税されない。不動産を売買して利益があれば所得税が課税され、不動産を取得すれば不動産取得税が課税される。株式を売買して利益があれば所得税が課税されるが、株式を購入しても税金は課税されない。

 金融資産の中でも、株式投資などの株式出資金について考えてみよう。株を買った場合には税金はかからない。株を売って利益が出た場合には、現在は20%分離課税で株式譲渡益が1億円でも1万円でも同じ20%が課税される(NISA(少額投資非課税制度)を使えば、非課税になる。)。
 株主への配当金は銀行預金の利息と同じように、配当課税が行われ、これも一律20%である。配当金額が1億円でも1万円でも同じように20%が課税される。
 岸田総理大臣は、自民党総裁選挙で、金融所得課税の強化を訴えていた。しかし、マスコミなどは金融所得課税を強化すると株価が下がるなどと批判的な論調で報じていた。

 格差の拡大を問題視しながら、人々は金融所得課税の強化に反対するのだろうか。
 わかりやすい例で考えてみよう。相続等で時価評価1億円の株式(単純化するために日経平均連動型ETFだとする)を保有しているとする。このときの日経平均株価が15,000円だとする。日本銀行の異次元緩和や企業への課税である法人税率の引き下げなどで、日経平均株価が21,000円にまで上昇すると、株価保有残高が1億円だった人の金融資産は1億4千万円(株の含み益が4千万円)になり、日経平均株価が30,000にまで上昇すると2億円になる(株の含み益が1億円)。しかし、株を保有していなければ株価の上昇は資産に全く影響しないので、100万円の預金を持っている人の資産は100万円のままである。
 株価が上がれば株式を持っている人の資産は上昇する。庶民の多くは株式を保有していない(金融広報中央委員会「知るぽると」「1世帯当たり種類別金融商品保有額(2019年/令和元年)」によれば、1世帯当たり平均株式保有金額は120万円)。

 財政悪化が酷い状況にある日本で、金融所得課税を強化し、歳入を確保した上で、各種の福祉政策にその財源を使うことは、所得の再配分機能の強化になり、格差の縮小に繋がることである。しかし、それは日経平均株価の下落に繋がるかもしれないが、株式を保有していない、あるいは保有していても少額である庶民が、なぜ金融所得への課税強化に反対する必要があるのか理解できない。
 マスコミ、そしてマスコミに登場するエコノミストなどが金融所得課税強化に反対するような報道を繰り返すのは、日経平均株価を高め、株式投資を促したいからだろうが、それは、多額の資金を株式に投資をしている富裕層のための行動に繋がる。しかし、その報道を見た庶民までが、株式をほとんど保有していない庶民が、反対するのは理解できない。格差の拡大を望んでいるのだろうか。

 格差の原因は何か、日本人の賃金が上昇せず今では韓国以下にまで落ち込んでいるのはなぜか、不動産(固定資産)には毎年課税されるのに金融資産への課税がないのはなぜか、株式譲渡益課税が一律20%となっているのはなぜか、配当所得への課税も一律20%となっているのはなぜか。
 そういう点について、よく考えて、選挙での投票などの政治的行動を行わなければ、格差は常に拡大し、庶民の生活水準は大きく改善しないだろう。
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