現代へのまなざし

日本とはなにかを探求します。

止まらない少子化と増え続ける財政赤字-このままでは日本は確実に破綻する-

2023-04-16 10:18:09 | 政治
 最近、国では次元の異なる少子化対策というような言葉で少子化対策を打ち出そうとしている。日本の人口動態を考えると、遅きに失したという状況にあるが、いずれにしても今の日本にとっては少子化対策が喫緊の課題であることは間違いない。

 まずは2020年の人口ピラミッドを見てみよう。



 日本の人口は約1億2500万人で、14歳以下が約1,500万人(約12%)、15歳から64歳が約7,400万人(約59%)、65歳以上が約3,620万人(約29%)となっている。
 日本の歴史上、最も出生数が多かった団塊世代が前期老年人口となっており、その子供達の層であり、年間200万人前後の出生数であった団塊ジュニア世代が40代で生産年齢人口を支えている構図となっている。2020年時点で、退職となる60歳から65歳の人口に比べ、新たに就職する18歳から22歳の人口が少なくなっており、企業が人手不足になることがはっきりと認識できる。

 次に今から約20年後の2040年の人口ピラミッドを見てみよう。2012年の出生数は80万人を切っており、彼らが20歳になる頃の人口ピラミッドである。



 年少人口のうち15歳の数を見ると80万人を超えているが、この推計よりも現実の出生数の方が少ないので、年少人口はさらに減るだろう。
 2040年の推計値では、日本の人口は110,919千人(約1億1千万人)で、14歳以下が約1,200万人(約11%)、15歳から64歳が約6,000万人(約54%)、65歳以上が約4,000万人(約35%) となっている。
 日本の将来推計人口(平成29年推計)(中位推計)(国立社会保障・人口問題研究所)

 この人口ピラミッドで団塊ジュニアは65歳を超えており、現在の日本の年金制度が維持されていれば年金を受給する状況となる。生産年齢人口は2020年に比べ5%減少し、高齢者は6%も増加しており、年金を支えるためには現役世代の保険料負担を増やさざるを得ないだろう。さらに、年金だけではなく、高齢者の医療費を現役世代が支えているため、現役世代の社会保険料はさらに増えるだろう。
 現状では、この2040年の人口ピラミッドの15歳以上の部分はほぼ確定であるため、上記のように現役世代の社会保険料負担は確実に増大するのである。ただし、高齢者が多く死ぬような感染症の流行、地震や戦争などにより人口の構造が大きく変動することがあれば人口ピラミッドの形状も大きく変動する可能性がある。


 次に、日本の財政状況を見てみよう。



 国債発行残高は平成10年(1998年)頃から急速に増え続け、現時点では1,000兆円を超える状況となっている。他方で利払費は日本銀行による金融緩和、ここ10年間は異次元緩和によって金利を低く抑えているため(近年はマイナス金利政策を導入)、平成12年(2000年)から低下し、低い水準で推移している。しかし、日本銀行が金融緩和をやめれば金利が上昇し、利払費も増え続けることになる。
 財政に関する資料(財務省)

 債務残高の国際比較(対GDP比)



 日本の財政赤字は対GDP比で250%を超えており、ワースト2位のイタリアの約150%に比べても突出していることがわかる。このような巨額の財政赤字を抱える日本で、高齢化がどんどん進展しており、本来は歳出削減と歳入確保(増税)によって財政均衡あるいは財政黒字を確保していく必要があるにも関わらず、選挙のことしか頭にない政治家は借金によるバラマキに終始しているのである。

 日本の人口ピラミッドと財政状況を見れば、このままでは日本が破綻することは確実である。選挙での勝利が最大目的の政治家と現状維持を望み変化を嫌う国民の組み合わせから、日本は確実に破綻するだろう。

 破綻を回避するための方策はないのだろうか。

 まず1点目は、財政赤字を解消するため、財政収支の黒字化を達成することが必要である。毎年、国の予算では歳入(収入)よりも歳出(支出)が大幅に上回り、年間30兆円もの借金(赤字国債が約30兆円、建設国債を含めると約37兆円の借金)をしているのである。新たな借金をせずに収支を均衡させる(借金の利払費は借金で賄うことも可能)のがプライマリーバランスの黒字化、借金の利払費も含め、新たな借金をせず、むしろ借金を減らしていくのが財政収支の黒字化である。プライマリーバランスの黒字化ではなく、財政収支の黒字化まで進まなければ、財政赤字を解消することはできない。
 財政収支を黒字化するためには、既得権益となっている各種団体への補助金の見直し、給付と負担の見直しなどによって歳出削減を図るととともに、資産課税の強化を含めた税制の見直し(増税)や租税特別措置法による法人への優遇措置を見直すことにより歳入の確保を図ることである。

 2点目として、増え続ける高齢者への支出の見直しが挙げられる。国の予算に占める社会保障費の額は増える一方(1990年度に11.6兆円だった社会保障費が2021年度には35.8兆円にまで増加)である。年金に57.7兆円、介護に12.3兆円、後期高齢者医療費に14.5兆円を要しており、これだけで年間84.5兆円を使っており、これらの費用を税金、社会保険料のみならず借金でまかなっているのが日本の現状となっている。
 日本国民の金融資産は2000兆円を超えているが、その6割以上を60歳以上の高齢者が保有している。年金しか収入がない高齢者の多くは住民税非課税世帯に該当するだろうが、他方で、多額の金融資産を保有しているのである。金融資産も確実に把握し、資産の多い高齢者には自己負担を増やしていただくことが必要だろう。高齢者の年金や医療費の多くを現役世代が負担しているが、現役世代の負担を軽減し、高齢者の負担を増やすことが日本の持続可能性を守るために必要であり、また、少子化対策にとっても必要だろう。

 3点目は若者の非婚化、晩婚化対策である。今も日本政府は次元の異なる少子化対策を検討しているが、少子化の大きな原因として若者の非婚化、晩婚化が挙げられる。なぜ若者が結婚しないのか、なぜ結婚できないのか、その原因を調べ、対策を打つことが必要だ。新自由主義の要請に基づいて非正規労働を拡大したが、非正規労働の範囲を小泉政権以前、あるいは橋本政権以前にまで縮小し、若者が正規労働者となれるような労働改革が必要ではないか。

 4点目は生産性の向上である。中小企業、特に小規模零細企業の労働生産性は大企業の半分にも満たない。



 しかし中小企業は日本企業の99.7%を占め、中でも小規模零細企業が全企業の84.9%を占めている。生産性の低い企業を市場から退出させ、M&Aなどにより中規模企業を増やし、さらに大企業化を促進するような対策を取ることで、少子化によって生産年齢人口が減る中でも日本の生産性が向上し、その結果として日本の経済成長、労働者の賃金上昇に結びつくのである。

 5点目は移民労働者の積極的な受け入れである。現在、技能実習生制度が存在するが、これも限定的で外国人労働者にとって不利益な制度となっている。日本の賃金が国際的に低下する中で、積極的な外国人に日本に移住してもらうため、外国人がより日本で働きやすく、さらに権利を保障し、日本人と同等の待遇を得られるような制度を構築する必要がある。

 いずれも今の日本では採用されることはないだろう。従って、今の日本の状況では、日本は衰退し続け、いずれ破綻するのである。日本の将来を考えるのであれば、人口動態と財政状況をしっかりと認識し、対応を考える必要がある。
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