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ロシアのウクライナ侵攻に関する報道-プロパガンダ-

2022-07-16 12:01:41 | 政治
 ロシアのウクライナ侵攻に関する報道が繰り返されているが、その報道内容には常に驚かされるものがある。
 今の西側のメディアは「ウクライナ=善、ロシア=悪」という単純で感情的な二元論で報道を行っており、ロシアが行っていることは全て悪であり、他方でウクライナが行っていることは全て善であるというものである。ロシアの軍事侵攻が国際法上許されないことは当然である。その点で、ロシアが批判され続けられることは当然のことである。

 しかし、ウクライナの実態がどのようなものであったのかを報道するものはほとんど見かけない。
 2004年の「オレンジ革命」と呼ばれているものの実態や2014年の「マイダン革命」と呼ばれているものの実態、ウクライナの経済状況や人口動態などについて、全くと言って良いほど触れられていない。
 「独立以降、産業・貿易構造の転換を果たせていないことが、今に至るまでのウクライナの経済の不調の根幹にある。さらに、産業・貿易構造の転換を本来なら促すべき政治が長期にわたって不安定であり、堅実な経済運営がなされてこなかった。そうした中でIMFやEUから課された構造調整策がウクライナの経済の体力を奪うという構造が出来上がってしまったと言えよう。」(「マクロ経済の視点から見たウクライナ問題」土田陽介(三菱UFJリサーチ&コンサルティング))

 不安定な政治状況の中で、コメディアンであったゼレンスキーが大統領に選ばれ、素人政治家のゼレンスキー大統領がどのような政治を行っていたのかなどについては、報道されることがない。ポピュリズム政治を行っていたのか、あるいは、ウクライナの将来のことを念頭に行政運営をしていたのか、全く不明である。
 ミンスク合意「2014年に始まったウクライナ東部紛争を巡る和平合意。ロシアとウクライナ、ドイツ、フランスの首脳が15年2月にベラルーシの首都ミンスクでまとめた。ロシアを後ろ盾とする親ロ派武装勢力とウクライナ軍による戦闘の停止など和平に向けた道筋を示した。大規模な戦闘は止まったものの合意後も断続的に戦闘が続いた。」(日本経済新聞、2022年2月24日)をウクライナのゼレンスキー大統領は履行することなく、反故にしていたが、それがロシアの軍事侵攻を招く大きな理由だったのではないか。

 ロシアが軍事侵攻をした理由は何か、それまでのウクライナをめぐる情勢はどのようなものだったのか、ウクライナの国内の動きはどうだったのか、アゾフ大隊とはどのような組織なのか、ドンバス地方をめぐる動きはどうだったのか、ミンスク合意はどうなったのか、NATOの動きはどうだったのか、NATOの拡大に対するロシアの対応はどうだったのか、など、重要な情報は全く報道していない。

 「「プーチンは、かつてのソ連やロシア帝国の復活を目論んでいて、東欧全体を支配しようとしている。ウクライナで終わりではない。その後は、ポーランドやバルト三国に侵攻する。ゆえにウクライナ問題でプーチンと交渉し、妥協することは、融和的態度で結局ヒトラーの暴走を許した1938年のミュンヘン会議の二の舞になる」――西側メディアでは、日々こう語られているが、「ウクライナのNATO入りは絶対に許さない」とロシアは明確な警告を発してきたのにもかかわらず、西側がこれを無視したことが、今回の戦争の要因だ。」(「第三次世界大戦はもう始まっている」エマニュエル・トッド著、大野舞訳、文春文庫)
 世界的な知性であるエマニュエル・トッドの指摘の方が正しいのではないか。

 ロシアのウクライナ侵攻に関する話題について、日本のメディアは公平・公正な視点で報道をして欲しいものである。現状では、ロシアの報道はプロパガンダと決めつけている西側のメディアであるが、日本をはじめとする西側メディアの報道もまたプロパガンダではないかと強く感じてしまう状況である。

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