現代へのまなざし

日本とはなにかを探求します。

空気に流される日本人、あるいは中心が空虚な構造

2018-12-14 21:43:48 | 政治
 ユング派の心理学者である河合隼雄の著書に「中空構造日本の深層」(中央公論社、1982)がある(現在は中公文庫)。この中に収録されている「「古事記」神話における中空構造」という論文は、日本人の思考や行動を考えるときに非常に参考になるものだ。
 古事記に登場する神々について、物語に1度登場するものの、その後活動しなくなる神がいる。
 まず、古事記で最初に登場するアメノミナカヌシ、タカミムスヒ、カミムスヒの三神(第1の三神)、次に、黄泉の国の朽ち果てたイザナミを見て穢れたイザナギが禊ぎをする際にイザナギの左の眼から生じたアマテラス、右の眼から生じたツクヨミ、そして鼻から生じたスサノオの三神(第2の三神)、最後が、天孫降臨として語られるニニギと国津神の娘(コノハナサクヤヒメ)の子供であるホデリ(海幸彦)・ホスセリ・ホオリ(山幸彦)の三神(第3の三神)である(ちなみにホオリの孫が神武となる)。
 第1の三神のうちアメノミナカヌシ、第2の三神のうちツクヨミ、第3の三神のうちホスセリ、これらの神について、「それぞれの三神は日本神話体系のなかで画期的な時点に出現しており、その中心に無為の神をもつという、一貫した構造をもっていることが解る。これを筆者は「古事記」神話における中空性と呼び、日本神話の構造の最も基本的事実であると考えるのである。日本神話の中心は、空であり無である。このことは、それ以降発展してきた日本人の思想、宗教、社会構造などのプロトタイプとなっていると考えられる。」(同書、p.35)

 この空虚さ、中空構造の日本人は、その中心が空ゆえそこに満たされる気、すなわち空気を読むことが日常的に行われるのではないか。その場その場で空虚な部分を満たすものが簡単に入れ替わる、そういう精神性が日本人にはあるのではないか。

 中空構造の中空は、第二次世界大戦前の皇国史観(天皇中心の超国家主義)にあっては縦軸の無限性が、第二次大戦後はアメリカ的価値観がその場を埋めようとするものの、中空はその場の気によって左右されるのであろう。空気が日本人の中空を埋め、空気によって日本人が動くのであろう。
 戦後は天皇制に取って代わり民主主義が日本人の空気として存在していたが、バブル崩壊を経て、復古主義的な空気が拡大し、日本の右傾化が進んだのではないか。

 西洋であればキリスト教、中東であればイスラム教の教義が中心を埋め尽くし、絶対的価値観に基づき様々なことを判断していくが、中空構造日本では絶対的価値観が存在せず、その場の空気によって動いていくのであろう。第二次世界大戦当時において、特別高等警察(思想警察)からの拷問にも耐えた日本人は、中空構造ではなく絶対的価値観を身につけた日本人だったかもしれない。
 現在では、ネトウヨという人達が国家主義を絶対的価値観としているかもしれないが、彼らは主に感情で動くのではっきりとはわからない。しっかりとした理念もなく、感情にまかせて行動するネトウヨのような日本人が増えることは日本にとって不利益でしかない。主体的に生きることのできないネトウヨのような人間が増える日本は、将来が暗く感じて仕方が無い。
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