現代へのまなざし

日本とはなにかを探求します。

新型コロナウイルスと人々の恐怖-恐怖に駆られた人々の行為が最も恐ろしい-

2020-03-14 19:12:25 | 政治
 新型コロナウイルスによる感染症(新型肺炎)をめぐってマスコミや行政が大騒動である。新型コロナウイルス感染症というのは、季節性インフルエンザと比較した場合、非常に恐ろしいものなのだろうか、それともあまり変わらないものなのだろうか。
 現時点での解析では、新型コロナウイルス感染症は季節性インフルエンザに比較して、感染性や致死性が高いのではないかと考えられている。それでは、感染性と致死性はどの程度高いのだろうか。そして、感染した場合、その後の経過はどのようになるのだろうか、年齢別や保有している基礎疾患別の患者の予後はどうなっているのだろうか。
 このような一番重要な情報はあまり報道されることなく、感染者数の推移や死者数の推移が繰り返し報道されている。「新型コロナウイルス感染症」を「季節性インフルエンザ」や「麻疹(はしか)」に置き換えてみた場合、どのような報道になるのだろうか。

 リスクを抱えている高齢者や基礎疾患を有する者などは厳重に警戒する必要があるのは当然であるが、日本感染症学会の資料には「感染症一般に言えることですが、未知の病原体が出現した場合にはその重症例、死亡例がクローズアップされがちです。しかし多くの場合には、死亡例よりも重症例、重症例よりも軽症例が多く存在することが知られています。新型コロナウイルス感染症において、軽症例が80%前後であることが報告されていますが、感染をしても無症状である無症候性キャリアの数がどのくらい存在するのかが明らかになっていないことが問題です。」と書かれている。

 科学的なエビデンスによって政策を立案するというEBPM(Evidence Based Policy Making)が行政でも求められており、各省庁でもこのEBPMに取り組んでいる。
 安倍首相は全国の小中高校の一斉休校を要請し、多くの小中学校がそれに従い一斉休校を行った。さらに、中国や韓国からの訪日者について2週間の隔離(待機)を行うことも発表した。

 小学生、中学生、高校生の登校を禁止した場合に、どのような効果が見込まれているのであろうか。どういう理由で安倍首相が全国の小中学校に対し一斉休校を求めたのか、全くエビデンスに基づいていない判断と言わざるを得ない。イベントやスポーツ観戦なども自粛が続き、さらに感染が蔓延し始めている日本への入国制限についてもどれだけの効果があるのかわからない。

 新型コロナウイルス感染症の危険性について、行政ははっきりとしたエビデンスに基づいて周知すべきであるが、危険性について明確にしないままその場しのぎの対応をしていると言わざるを得ない。
 厚生労働省や保健所は、発生当初、新型コロナウイルス感染症の危険性が季節性インフルエンザとあまり変わらないために大規模な対策を行わなかったとすれば、そういう点について国民に情報提供すべきであるし、致死性が高く、危険な感染症なのであれば、人の移動を制限し、都市を封鎖するような対策を講じるよう地方公共団体等に対し要請するような対応が必要であろう。
 現時点でも経済的に大きな影響を与えているが、今の状態が継続すれば、経済へのマイナスの影響は拡大し、国民の所得の減少や景気の長期的な悪化が進むだろう。その場合の対策まで考えた上で、新型コロナウイルス感染症対策を行っているのだろうか。

 最も恐ろしいのは、恐怖を抱いた人間の行動である。ホモ・サピエンスは体力的には弱い存在であるが、集団生活によって生き延びてきた。生き延びるためには、恐怖を抱き、恐怖に対応する必要がある。恐怖を感じない生き物は絶滅するだろう。その恐怖を感じた時に、どのような行動に出るか。それは、命を守るための行動である。人間は恐怖を感じると、危険を回避するために機敏に反応すると考えられる。逃げる、隠れる、相手を殺す、などの反応を起こすだろう。
 恐怖を感じた人間は、自分の命を守るために、それまでの経験から最善と思われる行動を取るだろうが、それが社会にとって有益な行為であるとは限らない、むしろ、社会的には有害な行為でも、自分自身の命を守るためには行うだろう。

 ドラッグストアなどからサージカルマスクなどは消え去った。一時はトイレットペーパーが消え去った。特にトイレットペーパーについては、国内生産であり需給関係から考えても店頭から消え去ることは考えにくい。通常使用する量以上、数週間分、数ヶ月分のトイレットペーパーを購入した人達がかなりいたと考えなければ説明がつかないものである。
 恐怖に駆られてた人達が、将来的に必要となるトイレットペーパーを確保するという自分のための最善の行為を取ったために、社会的に有害な行為を行ったのである。

 人々の恐怖に煽られた行動が社会的には非常に危険な行為となるのである。恐怖に引きつった顔をした群衆が、自分勝手な行動をする、それがパニックの主な原因ではないだろうか。恐怖に襲われた人達は、社会的な存在として理性的に考えることができず、自分の命を守るために自分勝手な行動を取る、それがパニック状態になった人間であろう。

 新型コロナウイルス感染症に恐れおののく人達は恐怖に駆られて何をするかわからない。恐怖は人間の心の動きを活性化するだけに、その結果、とても恐ろしいことになるかも知れない。
 一番恐ろしいのは、恐怖に駆られた人間の行為、それが集団性を帯びた場合は、とても恐ろしい結果になるだろう。
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安倍政権による民主主義の否定-検察人事への介入と違法な定年延長-

2020-03-01 14:57:33 | 政治
 安倍内閣は、自分たちにとって都合のいい黒川弘務東京高等検察庁検事長を検察トップである検事総長するために、法律に違反してまでも定年延長をしようとしている。

 検察官及び検事総長の定年については、検察庁法によって定められており、国家公務員法の規定による定年延長は認められない。国家公務員に定年制度を導入するための法改正に関する議論では、当時の人事院事務総局任用局長が、「検察官と大学教官につきましては、現在すでに定年が定められております。今回の法案では、別に法律で定められておる者を除き、こういうことになっておりますので、今回の定年制は適用されないことになっております。」と答弁しているのである。

 そもそも、検察官については、その職務と責任の特殊性から検察庁法で定年制を規定しているため、検察官の定年については国家公務員法は適用しないということを前提として、国家公務員法の一部を改正する法律案では、定年制について検察官等を適用除外とする条文を作成している。
 そして国家公務員法第81条の3は、「前条第一項の規定により」退職する場合の例外規定であり、前条の規定は検察官には適用されないため、定年延長の規定についても検察官には適用されない。

 今回の、検察庁法に定年制の特例に関する規定がないため、国家公務員法の特例を適用することとしたという安倍総理や森法務委大臣の解釈は、国家公務員法の一部を改正する法律の制定過程を無視したものであり、また、誤った法律解釈である。検察官の定年については63歳とされており、検察官の職務と責任の特殊性などから検察庁法では定年制の特例を定めていないのであり、つまり、検察官の定年延長はそもそも考えられていないのである。検察官の定年延長が必要であれば、検察庁法を改正し、国家公務員法の特例規定と同じような条項を追加すればよいのである。立法府である国会における審議によって検察庁法を改正し、新たに規定を設ければ、今回のような法律違反を犯すこともない。

 これまでの国会審議によって森友学園問題や加計学園問題、桜を見る会の問題などで、安倍総理の公職選挙法違反や政治資金規正法違反、贈収賄による刑法違反の疑いが浮き上がっている。このような違法行為の疑いがある安倍総理を検察から守るためには、検察トップに自分の意に従って行動する検察官を据える必要があるのだろう。
 つまり、今回、安倍総理が、自分勝手な目的のため、つまり自分達に忠実に行動する黒川高検検事長を検事総長に据えるために、黒川検事長の定年を延長させる必要がでてきたことで、定年延長が目的となり、国家公務員法の解釈をねじ曲げるという詭弁を弄した答弁を行うという状況になった。権力者が詭弁を弄し、さらに官僚も安倍政権のため法の解釈をねじ曲げ、法律を無視して詭弁を弄している状況となっているのである。

 しかし、こんなに愚かな答弁がまかり通る日本の国会はどのようなレベルなのだろうか。野党議員は問題視しているが、与党議員が沈黙を保っているとすれば、自民党議員や公明党議員も法律に無知だと言わざるを得ない。
 果たして日本は法治国家と言えるのだろうか。日本国憲法では集団的自衛権は認められないにも関わらず安保法制を作り、法律解釈をねじ曲げ、自分にとって都合のいい人事を行う。民主主義とは正反対のことを安倍政権は行っている。さらに、安倍総理の虚偽答弁などを取り繕うために官僚達も詭弁に満ちた答弁を繰り返し、国会での審議をまともに行っていない。国権の最高機関である国会で、国民の信託を受けた国会議員に対し、まともな答弁をしない官僚達は、懲戒免職に値する愚かな公務員である。
 次官レースと言われるように上昇志向が強く、早く出世したい官僚にとって、人事は最も気になるものであり、幹部人事を内閣人事局が握っている以上、安倍総理、菅官房長官に阿る、安倍総理等に忖度し仕事をする官僚が各省庁のトップを占めることになる。その結果、行政運営が安倍総理の意向に従ったものとなり、公務員が全体の奉仕者から総理のための奉仕者に変化することになる。

 今回、黒川検事長の定年延長が閣議決定されたが、黒川検事総長が誕生することになれば、各官庁のみではなく、検察まで政権の犬となる状況が生まれることになる。今後の人事を注視していく必要がある。
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