現代へのまなざし

日本とはなにかを探求します。

台湾有事とはー日本はウクライナと同じ道を歩むのかー

2024-09-07 19:31:24 | 政治
2022年2月24日にロシアがウクライナに軍事侵攻を開始してから既に2年5ヶ月以上が経過した。
 このロシアによるウクライナ侵攻に関して、フランスの歴史人口学者であるエマニュエル・トッドは「第三次世界大戦はもう始まっている」(文春新書)の中で、貴重な見解を示している。次の文章は文藝春秋のサイトに掲載されている同書の紹介文章だ。

「戦争を仕掛けたのは、プーチンでなく、米国とNATOだ。
 「プーチンは、かつてのソ連やロシア帝国の復活を目論んでいて、東欧全体を支配しようとしている。ウクライナで終わりではない。その後は、ポーランドやバルト三国に侵攻する。ゆえにウクライナ問題でプーチンと交渉し、妥協することは、融和的態度で結局ヒトラーの暴走を許した1938年のミュンヘン会議の二の舞になる」――西側メディアでは、日々こう語られているが、「ウクライナのNATO入りは絶対に許さない」とロシアは明確な警告を発してきたのにもかかわらず、西側がこれを無視したことが、今回の戦争の要因だ。

 ウクライナは正式にはNATOに加盟していないが、ロシアの侵攻が始まる前の段階で、ウクライナは「NATOの〝事実上〟の加盟国」になっていた。米英が、高性能の兵器を大量に送り、軍事顧問団も派遣して、ウクライナを「武装化」していたからだ。現在、ロシア軍の攻勢を止めるほどの力を見せているのは、米英によって効果的に増強されていたからだ。

 ロシアが看過できなかったのは、この「武装化」がクリミアとドンバス地方の奪還を目指すものだったからだ。「我々はスターリンの誤りを繰り返してはいけない。手遅れになる前に行動しなければならない」とプーチンは発言していた。つまり、軍事上、今回のロシアの侵攻の目的は、何よりも日増しに強くなるウクライナ軍を手遅れになる前に破壊することにあった。

 ウクライナ問題は、元来は、国境の修正という「ローカルな問題」だったが、米国はウクライナを「武装化」して「NATOの事実上の加盟国」としていたわけで、この米国の政策によって、ウクライナ問題は「グローバル化=世界戦争化」した。」


 ロシアのウクライナ侵攻に対抗するため、西側諸国はロシアへの強力な経済制裁を行い、また、ノルドストリームはウクライナなどによって破壊され、さらに、ノルドストリーム2は中止となり、ドイツはエネルギー不足などによって経済打撃を受け、2023年度のドイツのGDP成長率は-0.3%とマイナスになったのである。


 さて、日本では台湾有事が物語られている。

 中国と台湾の問題で、基本的なことを書いておきたい。
 中国政府は、台湾は中国と一体ということを過去から言い続けている。アメリカと中国が国交を回復した際も、日本と中国が国交を回復した際も、中国は中国と台湾が一体だと主張している。
 これに対し、アメリカは「中国はただ一つであり、台湾は中国の一部分であると主張していることを認識している。アメリカ政府は、この立場に異論をとなえない」としている。
 日本は「この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」としている。

 アメリカの署名な投資家であるジム・ロジャーズは、「2030年 お金の世界地図」(SBクリエイティブ )で次のように書いている。
 「私が台湾有事の可能性に注目しているのは、なぜかアメリカが戦争を望んでいるように見えるからである。
 世界地図を見ればわかるように、台湾はアメリカから約1万km離れている。
 仮に中国が台湾に武力攻撃を仕掛けた場合、中国は短期間のうちに台湾を占領出来る可能性が高い。当然、アメリカは台湾側を助けるという名目で軍事介入を行い、米中の衝突が起こることになる。
 アメリカが中国を攻撃し、台湾を奪還しても、中国の再攻撃に備えて台湾周辺での軍備を増強する必要があり、 膨大なコストを要することになる。繰り返すが、台湾とアメリカには物理的に相当な距離があるのだ。
 ペンタゴン(国防総省)のほとんどの研究では、諸々の条件を踏まえ、アメリカが敗北する可能性が高いと予測しているはずである。
 だが、それでもアメリカが中国を挑発し、台湾有事が起きる可能性はある。」(同書p.29~p.30)

 台湾から1万km離れているアメリカからではなく、台湾に近い、そしてアメリカの同盟国である日本や韓国に出動させる方が効果的であり効率的である。日本の自衛隊とアメリカ軍、韓国軍とアメリカ軍、そして台湾とアメリカ軍は集団的自衛権で繋がっているのである。
 台湾有事が発生すれば、日本の自衛隊と韓国軍が中国人民解放軍と対峙することになる可能性が高いのである。その結果、日本の経済状況は悪化し、さらには日本の本土が中国から軍事攻撃を受ける可能性もある。

 アメリカは、ロシアの帝国化を防ぎ、ドイツの国力を低下させるために、ウクライナを利用し、それによって、アメリカなどのNATO軍の兵器によってウクライナ人がロシアと戦っているが、台湾有事になるとウクライナ人ではなく、日本人や韓国人が中国と戦うことになるだろう。
 日本人がウクライナ人同様に、アメリカ軍の代わりに中国人民解放軍と戦う理由は全くない。中国と台湾の紛争に日本人が介入する理由などないのである。日本のウクライナ化は断固として拒否する必要がある。
 アメリカの属国のように振る舞う日本政府だが、日本人はアメリカの傭兵では無い。日本の国益を考えて行動して欲しいものである。

 日中国交回復の際に確認した事項を、再度よく確認し、中国と台湾は一つの中国だという認識があれば、台湾有事などというものは中国の国内問題であり、日本やアメリカが軍事的に介入するようなものではないと、しっかり認識して欲しいものである。
 台湾は独立国でもなく、中国の一部であるという中国の立場を理解し、尊重している日本は、台湾有事に対しては外交力で対応すべき問題だとしっかりと認識する必要がある。

 日本はウクライナのような愚かな国になってはいけない。日本の国益をよく考えて外交を進める必要がある。
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