現代へのまなざし

日本とはなにかを探求します。

アベノミクスと呪術

2014-11-28 19:03:00 | 日記
 近年、日本を惑わしている言葉に「アベノミクス」という言葉がある。この言葉を初めて聞いたとき、「レーガノミクス」を思い出した。レーガノミクスとは、アメリカのレーガン元大統領の経済政策について、当時の共和党内での対抗馬だったジョージ・H・W・ブッシュ元大統領(父親の方のブッシュ大統領)が呪術的だとしてブードゥー経済学だと揶揄して名付けたものである。実際、レーガノミクスは失敗に終わっている。

 このアベノミクスをめぐって日本銀行(日銀)の白井審議委員が、「物価上昇率と予想物価上昇率が落ち、見通しも相当下方修正という時に金融政策運営の当事者として放置できるのか。それはできない」と説明し、デフレマインドの転換が危うくなる懸念が生じていた中、「それはマネタイゼーションを超えて重要な問題だ」と強調している。
 マネタイゼーション(財政ファイナンス、政府が発行する国債を、中央銀行が通貨を発行することで直接引き受けること)は悪性のインフレを引き起こす恐れがあることから、法律で禁止されているにもかかわらず、日銀の審議委員がマネタイゼーションよりもデフレマインドの転換が危うくなることが危険だと言っているのである。
 
 デフレマインドとは、将来にわたって景気が低迷し物価や賃金が下がり続けるという予想が経済に定着していることで、実体経済の状況ではなく、マインドという言葉に表されているように、人々の気持ちの問題である。白井委員は、景気は「気」が大切だから、みんながデフレになると思うとデフレになる、逆に言えば、みんなが幸せになると思えば、経済状況が最悪の場合でも幸せになると言っているのと同じである。

 卑弥呼が「みなさんが晴れて欲しいと望めば太陽にその願いが届き、太陽が顔を出すだろう。私はそのために太陽に祈りを捧げる。」という呪術を行う。そうすれば太陽が顔をだす、という論理と同じ事を日銀の審議委員が説明し、そして日銀がそのような金融政策を行っているのである。日銀といえば、前総裁の白川氏が安倍政権の要求に応じることができないため辞任し、その白川氏の代わりに、黒田という安倍のお友達を総裁にしたことが記憶に新しい。アベノミクスの忠実な実行者が日銀の黒田総裁だ。アベノミクスもシャーマンに頼るような呪術的な経済政策のようである。

 衆議院を解散した安倍は、「株価が上昇した」「失業率は改善した」などと訴えるために、日銀やGPIFを使って株価上昇策を取ったのではないか。失業率が改善したと言っても非正規雇用が増え、正規雇用はむしろ減少しているが。
 なによりも、日銀のマネタイゼーションやGPIFの国内株での運用増加によって株価は上昇し、円安が進んでいるが、異常な政策をどのように元に戻すのか、そのときに国債の暴落や株価の大幅な下落が生じる危険性が高いが、どのようにこの危険を回避するのかというような対策は皆無である。

 レーガノミクスと同じようなアベノミクスが、レーガノミクスと同じように失敗することは歴史が証明しているような気がする。何よりも、国民がデフレマインドを転換すればデフレ下が脱却できるというような、呪術的な考えで経済政策をとっているのはどういうことか。日本政府は卑弥呼の時代に戻ってしまったのか。呪術に頼るような経済政策を行う政権は、一方で日本神話を重視し、荒唐無稽な政策をとるのだろうが、今の日本に新たな神話は必要ない。
コメント
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