現代へのまなざし

日本とはなにかを探求します。

報道機関の姿勢-大本営発表を垂れ流した過去の歴史を繰り返す-

2023-07-08 14:57:44 | 政治
 ロシアのウクライナ侵攻をめぐる報道を見ていると、あまりに一方的な報道にウンザリしてしまう。相変わらず、「ウクライナ=善、ロシア=悪」という構図を前提に報道が繰り返されている。
 ノルドストリームの破壊、クレムリンへのドローン攻撃についても、ロシアの自作自演でありロシアの偽旗作戦だという報道から始まり、ウクライナの関与が疑われてもそういう報道はほとんど行われない。
 ウクライナ南部ヘルソン州のロシア支配地域にあるカホフカ・ダムの決壊についても、その原因についての事実関係が確認されていない時点でロシアによる破壊工作というウクライナ側の見解を一斉に報道し、ロシアの仕業だろうというコメンテーターのコメントが垂れ流されている。アメリカやイギリス、ドイツ、フランスなどが原因について全くコメントしていないのはなぜだろう。ロシアの仕業だとすれば、アメリカなどが徹底的にロシア批判を行うにもかかわらず、何ら反応がないのはなぜか、などが報道されることはない。

 ロシアのウクライナ侵攻に関する報道の情報源は、ゼレンスキー大統領の発表を含めウクライナ政府からのものや、イギリスやアメリカの研究機関からのものがメインとなっている。ウクライナ政府の情報をまるで正しいかのように報道する姿勢は、第2次世界大戦において大本営発表を垂れ流した報道と全く変わりが無い。
 戦争当事者の一方であるウクライナの情報全てをさも正しいかのように報道するのは、プロパガンダのまき散らしと同じである。自分たちに不都合な情報をひた隠し、悪事は全てロシアが引き起こしたとするウクライナ政府の発表は、まさにプロパガンダそのものである。一方で、ロシア側の発表が正しいかというと、これもまたプロパガンダに満ちたものだろう。
 ベトナム戦争ではアメリカ人ジャーナリストなどが戦場に入り、事実を報道していたが、今回のウクライナ侵攻に関しては、そのようなジャーナリストは存在しないようである。そういった報道に事実が見られるが、一方当事者の一方的な発表は信じられないというのが、歴史が教えてくれているところである。

 第2次世界大戦、アジア・太平洋戦争において、朝日新聞など日本のマスコミは大本営発表を垂れ流し、国民を戦争に駆り立て続けていた。
 ロシアによるウクライナ侵攻後、ショック・ドクトリンでは無いが、ことさら台湾有事の危険性を煽り、結果として日本政府は財源確保もしないまま防衛費の大幅な増額を決定し、その点について大手のマスコミは、なぜ大幅な防衛費増額が必要なのか、増額分によって自衛隊のどの部分を強化するのか、自衛隊員の定数充足率はどのようになっているのか、少子化が進む中でどのように自衛隊員を確保して防衛力を高めるのかなどの報道を行うことなく、むしろ防衛費の増額は必要だなどと政府広報番組のような報道を繰り返している。

 ゼレンスキー大統領がミンスク合意を反故にしたり、国内の右派勢力の支持が欲しいために右派勢力の主張を外交姿勢に取り入れたりするなど、ゼレンスキー大統領の外交が失敗だったとしても、国際法違反の軍事侵攻を行ったロシアが責められるべきなのは当然である。
 しかし、その後の報道も「ウクライナ=善、ロシア=悪」という前提に立ち、事実関係もウクライナ政府の発表を一方的に垂れ流すなど、日本のマスコミは過去の過ちを反省することなく、また過去の過ちを振り返ることなく、大本営発表を垂れ流した過去と同じような報道を行ってるのである。

 同じスラブ民族であるロシアとウクライナの紛争ですら一方的な報道を行う日本のマスコミ。
 仮に台湾有事が発生し、日本が巻き込まれることになれば、日本のマスコミがどのような報道を行うのかは推測しやすい。中国批判に終始し、アメリカ礼賛を繰り返し、アメリカの同盟国である日本はアメリカと共に行動を取るように主張し、日米側が有利にたてば大衆を大喜びさせるような報道を繰り返し、不利なことがあれば中国側の行動を徹底的に批判する報道を繰り返すだろう。その報道からは日本の国益や日本国民の安全性を確保すべきという観点は欠落していくだろう。

 日本の大手マスコミの傾向は、視聴者・読者が批判するような報道を控え、視聴者・読者が喜ぶような報道を大きく取り扱う、つまり大衆迎合の姿勢を持っている。そして、自分たちが積極的に事実関係を確認することなく、政府のプレスリリースや友好国からの情報、西側メディアの報道を垂れ流す傾向がある。

 今後も、国際紛争をめぐる報道では同じことが繰り返されるだろう。そして、最も恐ろしいことは、日本が国際紛争に巻き込まれたときに日本の大手マスコミが、第2次世界大戦時と同じように、大本営発表の垂れ流しを繰り返すだろうということだ。
 今から80年以上も前の、好戦的な報道を繰り返すことで日本国民に対米戦争をけしかけ、当時の大日本帝国政府が対米戦には勝てないと認識しながらも対米宣戦布告に導いた当時のマスコミの姿は、今の日本でも存在しているように見える。

 国際紛争に関する日本のマスコミ報道について、視聴者・読者が過去の歴史や国際情勢なども念頭にファクトチェックを行う必要があるのだろう。
 当該地域の歴史や民族的な特徴を知ることが一番重要だが、地政学に関する過去の知見や、特に、紛争に関するアメリカなどのG7諸国の利害関係と外交姿勢、そして他方当事国の利害関係などを念頭にマスコミ報道を受けとめる必要がある。マスコミに煽られたあげく、悲惨な状況をもたらした過去の歴史を繰り返さないために。
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