現代へのまなざし

日本とはなにかを探求します。

トランプ候補とアメリカ民主主義

2016-11-13 23:57:17 | 政治
(趣旨)
・アメリカの従来からの民主主義の伝統に反する主張を行ってきたトランプ候補が大統領選挙で勝利した。
・アメリカ大統領選挙のみならず、イギリスのEUから離脱、さらには日本の国会議員選挙でも同様の傾向があった。
・大衆は将来的な展望もなく、単純な言葉に反応し、感情的に行動する。
・大衆は自らにとって不利益な政策ですら支持する。その行動は経済合理性を持っておらず、不合理極まりない。
・このような傾向は今後先進諸国でも拡がるような不安があり、世界はどのような姿になるのか不安である。
・大本営発表の場と化したNHK(日本放送協会)の罪は深い。

(本文)
アメリカ大統領選挙で知識人の期待を裏切る形で、しかし、怒れる庶民の期待に添った形で、ドナルド・トランプ候補がヒラリー・クリントン候補を破って当選した。総得票数はクリントン候補の方が多かったものの、各州別に大統領選挙人を選出するというアメリカ大統領の選挙システムから多くの選挙人を獲得したトランプ候補が次期大統領になる予定である。

 アメリカは、その国内では民主主義が基本的価値観として尊重され、中東などの非民主主義的とされる国々に対して民主主義を軍事的に押しつけ、国内の治安悪化を招いていた。
 しかし、トランプ候補の主張は外国人移民への差別的対応など、民主主義の価値観を否定するようなことを常々主張していた。そのトランプ候補がアメリカ大統領に就任するというのは、アメリカが自国の価値を否定するかのような選択を行ったというべきことである。

 アメリカ大統領選挙のみならずイギリスのEUからの離脱を問う選挙でも見られたことであるが、低所得者層や低学歴層がポピュリズムに流れるのは、なぜなんだろうか。日本でも多くの大衆にとってメリットがない安倍政権の経済政策、すなわちアベノミクスが支持され、大衆にとって経済的メリットがないにも関わらず自民党が支持された選挙結果にも共通して見られるこの傾向はなぜ存在するのか。言い換えれば、富裕層には恩恵があるものの、普通の労働者層などには恩恵のない政策を普通の労働者層や低学歴層が支持し、あるいは、その政策に賛成しないまでもその政策を取っている政党を支持するのはなぜなのか。
 トランプ候補が繰り返したキーワード「Make America great again」(アメリカを再び偉大にしよう=偉大なアメリカを取り戻す)、安倍総理が繰り返していた言葉「ニッポンをトリモロス」(日本を取り戻す)、イギリス独立党のファラージ党首の「自国のコントロールを取り戻す」、このような単純な言葉に労働者層、低学歴層、高齢者が同じような反応を示していると言える。

 自らの貧しい境遇、やり場のない怒り、中間層への嫉妬と手の届かない富裕層への憧れ、このような感情が優先する人達に合理的な判断はできないのである。これは精神的に疲れ果てたうつ病の人達がまともな判断ができないことと似ているのかもしれない。
 生活水準が下落し、日常的に余裕が失われる、そしてグローバリズムによる競争激化で不平等が広がり、将来に対し明るい展望持てない、さらに現状にやり場のない怒りを感じている庶民が反乱を起こすことは理解できるが、その行動は、自らの生活がより厳しくなる政策を取る右翼に対する支持である。彼等は合理的思考すら奪われ、感情の赴くがまま、自らに不利益な政策を支持するという行動しか選択でいない状況なのかもしれない。

 世界的にこのような傾向になるのであれば、来年のフランス大統領選挙では極右のルペン党首が勝利し、ドイツの総選挙でもネオナチのような右翼政党が勝利し、オランダやオーストリアでも同じような結果になるのではないかと懸念される。
 先端を進んでいる日本ではマスメディアがトランプ候補の勝利を他人事のように報道しているが、ヘイトスピーチが問題になり、かつては小泉首相のワンフレーズ・ポリティックスが話題になったことも忘れているんだろうか。マスメディアが持ち上げた石原慎太郎元都知事の悪政=豊洲市場の問題を小池百合子知事を持ち上げることで棚上げしようとしているような状況を見ると、マスメディアは無責任に視聴率を上げることだけを考えて報道を行っているような無責任な姿勢が際立ち、大衆はそのような状況の中で、ますます誤った選択をするような気がする。

 日本の誤った状況を報道することもなく、イギリスやアメリカの政治状況を報道する日本のマスメディアこそが諸悪の根源とも感じられる状況であり、大本営発表の機関と化したNHK(日本放送協会)の罪は大きすぎると痛感させられる。天武天皇は日本書紀を作成させることで天皇支配の正当性を国民に広めたが、NHKは、その偏向した報道で大本営発表を続ける政権の正当性を国民に広めているのであろう。

 話はそれたが、トランプ候補が大統領になることでアメリカ民主主義は危機的状況に陥る可能性が高まったが、日本の状況はより深刻である。日本の状況を注視しつつアメリカの状況を見守る必要がある、ということは強調しておきたい。
コメント
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