BALIぴあNote

Pianoと納豆と、そしてBALI

霧笛/レイ・ブラッドベリ

2012-09-10 14:26:05 | 
昨日、書いた記事の「咆哮」で思い出したが、
私の好きな小説のひとつに、レイ・ブラッドベリの短編「霧笛」がある。
これは、短編集「ウは宇宙船のウ」に収められているお話。

話は、ある、人里はなれた灯台の看守を勤める男の語りで進められる。
彼は、新米で、ようやくさびしい灯台暮らしに慣れてきたところ。
先輩の長年看守を勤める男に、海の不思議な出来事を聞くところから始まる。

「一年のうちの今頃なんだがーこの灯台に訪れてくるものがいるのだ」とその先輩看守は言う。「昨年つけた俺のカレンダーの印に間違いがなければ、今晩がそいつのやってくる夜にあたっている」

この灯台の周辺は霧が深く、毎晩のように濃霧信号灯をつけるのだが、その光さえ届かない場合は「霧笛」を鳴らす。

「動物が鳴いてるみたいだな」と先輩は言う。
「夜鳴きする一匹の大きな動物だ。百億年という時間の果てのここに腰を下ろし、おれはここにいる、おれはここにいると、海の奥底に向かって呼びかける。すると、海の奥底は返答をする。そうさ、海の奥底は返答をするんだー」

そうして、その夜、やってきた生き物は?

あふれるような寂しさを美しい言葉でつむいでいくブラッドベリ、
お薦めの一作である。

この作品の入った短編集を、漫画家の萩尾望都氏が漫画にしている。
これも絶品。

ぜひ、読んでみて。