情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

米FCC(連邦通信委員会)がメディア集中排除に関する報告書を破棄!~内部調査開始

2006-10-07 05:58:46 | クロスオーナーシップ問題
アメリカで放送事業を監督している独立行政委員会FCCが、メディア集中排除原則に関する調査報告書2通を公表しないまま破棄していたことが判明し、FCCは内部調査を始めた。民間放送10月3日号及びフリープレスが転載するAP(←クリック)によれば、FCCのマーチン委員長の再選(任期5年)承認をめぐる上院商業委員会の公聴会で、民主党のボクサー議員が2003年、2004年に作成されながら公表されなかった報告書があることを公表したことにより判明した。

報告されなかったのは、①地元資本のローカル局の方がネット系列局などに比べローカルニュースを多く報じており、過度なメディア集中はローカル局のニュースの多様性を阻害するおそれがあるとするものと②1996年3月から2003年3月までの間、ラジオ局の数は5.9%増加しているのに、ラジオ局所有者数は35%も減少しているというもの。いずれも、メディアの集中排除の実態と弊害を示す貴重な報告であった。

元顧問弁護士は、メディアの取材に対し、これらの報告書を処分するよう指示されたことを認めたという。



…米国では、というか、先進国では、メディア所有規制が言論の多様性維持のために必要だという認識がある。少なくとも、メディア所有規制は言論の多様性と関連しているという意識は高い。

上で引用したフリープレスも市民の立場から、メディア集中排除に取り組んでいる団体のようだ。

以前、お伝えしたが(←クリック)、メディア集中排除原則を巡っては司法の場でも争われている。

…まず、米連邦通信委員会(FCC)が2003年に、日刊新聞と放送局の兼業規制を緩め、同一市場で複数の放送局と新聞の所有を大幅に認める新ルールを策定した。

これに対し、市民団体が提訴し、連邦巡回裁判所(03年9月)及び連邦高裁(04年6月)は、審議不十分として、FCCの新ルール適用を差し止める決定をした。

これに対し、メディア側が米連邦最高裁に上告したが、同最高裁は、05年6月13日、上告を棄却した。

この棄却により、新聞とテレビ局の系列化を防ぐことができた。
これにより、メディア同士の切磋琢磨が今後も続けられ、報道の自由が制度的にも担保されたといえる。



…こういう争いがある中で、報告書が破棄されたことは非常に重大な問題で、スキャンダラスな出来事だ。

だが、正直こういうことがテーマになることがうらやましい。日本では、メディア集中排除原則と言論の多様性の関連性が議論されることすら少ないというお寒い状態。表現の自由に関する市民の認識が低過ぎる。市民が知らない間に政府は勝手に集中排除原則を緩和しようとさえしている(ここ←クリック)。

声を上げなければ…。




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