情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

豪州で、メディア所有規制緩和~新自由主義がもたらす(?)言論の危機!

2006-10-25 21:59:15 | クロスオーナーシップ問題
日豪プレス(←クリック)が引用するAAPによると、【10月18日未明、先週上院を通過した新メディア所有法が下院も通過した。野党労働党、民主党、少数の国民党議員が反対していたが、最終的に国民党議員の修正要求が通り、77対55の賛成多数で可決された。連邦総督の署名と政府の公布によって効力を発すると、テレビ、ラジオ、新聞の企業は、1地域において3つのメディア形態のうち2つを所有することができるようになる。】という。これは、新自由主義の潮流に乗るものなのだろうか。これまで何回か、日本で、新聞、テレビ、ラジオが同一資本によって支配されていることの弊害を指摘してきた。先進国では、日本のような完全なクロスオーナーシップがつくられた国はないことも紹介してきた。ああ、それなのに、それなのに…。オーストラリアが言論の寡占化に踏み出すとは…。

新法は、【大都市圏においては最低5社、農村部中心都市においては最低4社が競争していなければならない。】という制限があるものの、【メディア企業はすでに新法発効を見越して動き出しており、チャネル・セブンは西オーストラリア州の新聞の株式を2億ドルを注入して買い漁り、一方、ジェームズ・パッカーは、38%を所有するパブリシング&ブロードカスティング・リミテッド (PBL) のナイン・ネットワーク、acp雑誌社、ninemsnなどを分離し、CVCキャピタル・パートナーズ社との合弁でPBL Mediaを設立する。またフォクステル、プレミア・メディア・グループ、seek、ホイツなどをPBL傘下に残すと見られている。】という。

さらに、ルパート・マードック氏率いるメディア大手ニューズ・コーポレーションが競合するジョン・フェアファックス・ホールディングス(JFH)の株式7.5%を取得したということも伝えられている(この件、後述)。

このような動きに対して、【マーク・ベイル連邦副首相は、「政府のメディア政策の正しさが立証された」と発言している】が、いったい、言論が独占化される状況の何が正しいというのか?

これに対し、【労働党のスティーブン・コンロイ上院議員は「民主主義にとって重要なメディアが寡占化される兆候だ」と語り、民主党のリン・アリソンも危機感を表明している】が、当然の見解だ。


すでに弊害は、出ている。 NNAによると、 上述したルパート・マードック氏の動きについて、政府は早くも国民の反発を抑えることに必死のようだ。

■■引用開始■■

ハワード首相は20日、ルパート・マードック氏率いるメディア大手ニューズ・コーポレーションが競合するジョン・フェアファックス・ホールディングス(JFH)の株式7.5%を取得したことに対し、国民に対して冷静に対応するよう呼び掛けた。メディア改革関連法案が18日に下院を通過したことを受け、急速な業界再編に対する懸念が高まっている。各メディアが伝えた。

JFHは同日、ニューズが同社株7.5%を取得したと発表。声明の中で「投資目的かつ役員会に友好的」な取引であると述べた。取得金額は3億6,400万豪ドルとみられている。

同首相は、今回の株式取得について、下院を通過したばかりのメディア新法の影響は受けていないとコメント。「まだ新法が施行されていないにもかかわらず、人々は株式の売買を毎日行っている」と述べ、新法成立を冷静に受け止めるよう呼び掛けた。

クーナン通信相は、新法の施行による業界再編を前に、メディア各社がポジショニングを行っていると分析。今週行われたメディア各社の一連の動きについて、驚くことはないと述べた。

同相は先週、法案の通過により業界内で買収が相次ぐことはないとの見解を示していた。

一方、最大野党労働党のコンロイ影の通信相は、ニューズを率いるマードック氏が今後、JFHの役員会への影響力を強めると主張。「(ニューズによるJFHの権益取得は)メディアの多様性を高めるものではなく、ニューズが市場での立場を強める手段として機能している」と述べた。

JFHは、シドニー・モーニング・ヘラルド紙やエイジ紙、オーストラリアン・ファイナンシャル・レビュー紙を発行。ニューズはオーストラリアン紙やシドニーのデイリー・テレグラフ紙などを発行している。

■■引用終了■■

現在、インターネットの出現によって少し状況は変わろうとしているが、マスメディア社会では、個々が自らの媒体で情報を発信することによる影響力は少なくなっているため、メディアを通じた表現活動をいかに受け取るかが、表現の自由の核心的な問題となる。

メディアだって営利企業として自由に活動させろ、というかもしれない。しかし、言論活動に関わる以上、表現の自由が現代においては、受け取る権利となっていることを十分に理解し、その表現の自由を充実させることを目的としつつ、その範囲で利益を上げることで満足しなければならないはずだ。業界が同じルールを甘受すれば、同じ土俵で勝負できるのだから、決して、経済活動の自由を制限するとはいえないと思う。




※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。過去記事はENTRY ARCHIVE・過去の記事,分野別で読むにはCATEGORY・カテゴリからそれぞれ選択して下さい。
また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで


最新の画像もっと見る