情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

出所者情報の警察への提供について~報道と実際の通達の違い

2005-05-22 15:43:30 | 適正手続(裁判員・可視化など)
【警察庁は19日、法務省から警察庁に提供される性犯罪者の出所情報の取り扱いと、犯罪の前兆となる「声かけ」事案にも警察が積極的に対処するなど、子供の安全確保に力点を置いた推進要領をまとめ、全国の都道府県警に通達した。】朝日新聞http://news.goo.ne.jp/news/asahi/shakai/20050519/K2005051901320.html?C=S
【6月1日に始まる出所情報の提供対象者は、13歳未満の児童に対して強姦(ごうかん)▽強盗強姦▽強制わいせつ▽わいせつ目的略取・誘拐の罪を犯した出所者で、年間130人程度いる。殺人などほかの罪でも子供を狙ったのが明白ならば、警察庁が個別に情報提供を要請する。】
というもので、
【法務省は出所の約1カ月前、出所日と帰住予定地などの情報を提供、警察庁はデータベース化する。情報は帰住予定地を管轄する各都道府県警本部長へ通知され、さらに警察署長が警部以上の幹部を再犯防止担当官として指定し、再犯防止に向けた措置を行う。】

具体的な再犯防止措置としては、
【所在確認は定期的に外から様子をうかがう程度とし、巡回連絡以外の訪問はしない。社会復帰の妨げにならないよう勤務先などへの接触は避けるといい、5年以上経過して再犯の恐れが低いと判断されれば登録は解除する。前歴が2回以上の場合は10年以上は把握を続ける。予定地に帰住しなかったり、転居して所在不明になったりした場合は都道府県警が警察庁に通知し、全国の警察で情報収集する。保護観察所も仮出所者の転居先や立ち寄り先を都道府県警に連絡する。性犯罪が発生した場合はこの情報を捜査に活用する。】
ということだ。

しかし、実際の通達の文言は、

「警察本部長は、再犯防止措置対象者の過去の犯罪経歴や手口、出所後の言動その他の状況から、再犯のおそれが低いと判断するときは、警察庁に対し、再犯防止措置対象者の登録の解除を求めるものとする」というもの。

どこにも、【5年以上経過して再犯の恐れが低いと判断されれば登録は解除する】なんて書いていない。

また、解除の検討材料として、「出所後の言動」が明記してあるということは、【所在確認は定期的に外から様子をうかがう程度】ではありえないということではないか。

被害の防止ということの重要性は十分に分かっていますが、それでも、人権を制約する方向で働く行政の行為については、明文でその限度を明らかにしておく必要があります。(この問題は、センシティブな個人情報の使用目的変更を伴うため、本来は、通達ではなく法律で決めるべきことのようにも思います。)

犯罪者だから少々明文での限度のない人権制約もかまわない、なんて、思っていると「茶色い朝」になってしまうのではないでしょうか。

5月21日

2005-05-22 10:44:12 | 日記(事件など中心に)
風邪から回復、何とか悪化する前に治せたようだ。いつも悪化させちゃうから、今回は達成感あり。

国に対する損害賠償請求訴訟の打合せ。前にも書いた件ですが、打ち合わせを重ねるごとに、国に対して勝てそうな感じがしてくる。

昨日は、別の国家賠償請求訴訟の国側の答弁が来た。反論の一つとして、通達自体に違法性があったとしても、その通達を出す個別の行為に違法性がなければ、国賠法上の違法とは言えない…というようなものがあった。この点はまた、詳しく、報告します。