☆♪☆ 鉄のみゅーじしゃん ☆♪☆

作編曲家・ギタリスト塩塚博のブログ。
近年は駅メロディの作曲で知られています。

ジュリーニの、ドボ8。

2008年12月18日 16時35分41秒 | クラシック音楽
皆さんはクラシックの名曲を違う奏者やオーケストラで聴き比べてみたこと、ありますか。

ジャズやポップスの場合、同じ曲を違う人がやれば、
楽器の編成もアレンジも違うし、第一に歌う人の個性が違う。
だけど、クラシックの場合は、基本的に同じスコアを音にしているのだから
あんまり違わないんじゃないかと思うでしょ。

で実際どうなのかというと、これが見事に違うのですね。
確かに、あまり違いのわからない平凡な演奏もありますが、
マエストロ(巨匠)と呼ばれている指揮者やプレーヤーの作品になると、
その人独自の解釈と脚色で、実に個性的な世界が広がっていきます。

たまたま「クラシックジャーナル」誌で、名曲名盤の聴き比べをする企画を
やらせていただいたこともあって、
いろんなマエストロの世界を実感することができました。

オーケストラ指揮者のマエストロで、有名な人と言えば、
カラヤン、バーンスタイン、ベーム、フルトヴェングラー、トスカニーニ、
ワルター、クレンペラー、クリュイタンス、チェリビダッケ、クライバー、
いろいろな名人がいましたが、僕が一番好きなのは、ジュリーニ。



カルロ・マリア・ジュリーニはイタリア人の指揮者で、
1914年生まれ、終戦後めきめきと頭角を現し、名指揮者として活躍、
1998年に引退、2005年に逝去しています。
ご覧の通りのダンディーなおじさんで、
名前の割には沢田研二さんには似ておらず(ジュリー似?)
クリント・イーストウッドに一番似ているでしょうか。

この人はどういう指揮をするのか。

その前にあの有名マエストロ達はどうなのか、ザックリとですが書きます。

ベーム/とてもキッチリカッチリしたオケを几帳面に作り上げる、
文部省推薦の「チョー安心して聴ける」クラシック界の校長先生。

カラヤン/言わずと知れた超スーパースター。作品の商品としての価値を重視して、
ビジュアルも含めたトータルプロデュースで次々と作品を発表し続けた人。
ナルシスト。完璧主義者。

それに対して、ジュリーニの振るオケは、
イタリア人らしい美意識に貫かれた、美しく詩情的で、歌心にあふれた演奏。
遅めに設定したテンポの中でじっくり表現されたアンサンブルは
味わい深くてせつなくて、聴く者の琴線を捉えて離さない。
そんなふうに表現できるかと思います。

指揮者にもいろんなタイプがあり、何日もかけて徹底的にリハーサルを重ね、
一糸乱れぬ鉄壁のアンサンブルを作り上げる人もいます。
対してジュリーニは団員を権力で支配するのでなく、フランクに打ち解けて
一緒にひとつのアートを作り上げていく、そんな人だったそうです。
団員にはメロディーを心から歌うように弾くことを常に口にし、
団員の個性や魅力を引き出し、本番での緊張感から来るフレッシュな爆発力を重視。
そのため、リハーサルはキメ細かくやるけれど連日やるようなことはしなかったそうです。
コンサートやレコーディングが終了すると、その瞬間に団員が感動して涙する、
そんなことも多くあったといいます。

引退直前の97年に、彼がブルックナーの交響曲9番を振るコンサートがあり、
DVDが発売されていますが、チャプター1はそのリハーサルが収録されています。
83歳のジュリーニは、大御所なのにちっとも偉そうなそぶりもなく、
リハのスタジオに「やあやあこんにちは」と言いながら入って来る所から始まり、
部分的にリハをし、団員に説明とダメ出しを行い、
結果がよいとやさしい笑顔で「素晴らしい!!」と褒めてくれます。
自分もプレーヤーになったつもりでジュリーニにダメ出ししてもらう気分、
これはホントにしびれます。
このDVDを見て僕はますます彼が好きになりました。

僕が所有しているジュリーニの作品の中で、特に愛聴しているものは、

ショパン/ピアノ協奏曲1・2番、ツィマーマン(ピアノ)、78・79年
モーツァルト/交響曲40・41番、ニューフィルハーモニア管弦楽団、65年
ブラームス/交響曲第4番、ウィーン・フィル、89年
ドヴォルザーク/交響曲第9番「新世界から」、ロイヤル・コンセルトヘボウ、92年
ドヴォルザーク/交響曲第8番「イギリス」、同上、90年
そして同曲のシカゴ交響楽団、78年。

中でもドヴォルザークの8番(ドボ8)、これに今ハマッているのです。
ジュリーニは98年に引退しますが、89年頃から
自らの死期を悟ったかのように、名曲の集大成となる録音を多数残しました。
枯淡の境地に達したマエストロは、以前より更に遅いテンポで
じっくりと、そしてやさしく、以前から何度も吹き込んできた名曲に再び命を吹き込みます。

ドボ8の90年バージョンもとても甘くやさしくせつなくて、ホントに癒されます。
78年のものは、ジュリーニも多少若いし、シャキッとしていてテンポも少し速いけれど、
よく歌うジュリーニ節の基本は同じで、これもすごく魅力的です。
ということで私はこの2作を毎日交互に聴いているのです。
90年のものは、初めて聴く人は避けた方がいいかも知れません。
ジュリーニにずっぽりハマッた、ある程度年齢の行った人でないと
ちょっとつきあいづらいかも知れませんね。
78年のものの方が皆さんにオススメかな。

ジュリーニを心から愛するファンの人たちは数多いですが、
素晴らしいファンサイトがあります。
http://homepage3.nifty.com/giulini/
すいません、了解とっていませんが載っけてしまいました。
もしジュリーニに興味を持たれた方、このサイトはいい情報満載ですので
訪れてみてはいかがでしょう。

今日も長くてすいません。ではまた。
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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (フラック)
2008-12-19 14:40:31
塩塚様

はじめまして。
サイトをご紹介いただきありがとうございます。
また、ご丁寧に、掲載に関するメールをありがとう
ございました。

作曲家の方からのメールということで、相当ビビッて拝読しました(^^;

素晴らしいブログ、私も是非参考にさせていただきたいと思います。

今後ともよろしく御願い致しますm(_ _)m
返信する
Unknown (cherubin)
2011-12-15 09:46:38
たびたび失礼。ジュリーニはドヴォ8ソニー盤とカップリングされたり
しているマメールロワもすばらしいですよ。フランス系指揮者でも
あそこまで繊細なサウンドは作り出せないでしょう。


ジュリーニの知られざる名盤としては、アラウと組んだブラームスの
Pf協奏曲(EMI)もお勧めします。指揮者、ピアニストとも重量感と
繊細さをあわせもった音楽性が堪能できます。私は1番の最終楽章
が好きなのですが(あと、2番の第2楽章も)、ピアノソロ部分で
アラウがここぞとばかりにテンポを落としてメロメロに聴かせるのが
とても面白いですよ。
返信する
Unknown (しおしお/塩塚博)
2011-12-15 11:01:30
cherubinさま

コメありがとうございます。

そうです。マメロワもすごくいいですね。

でもなんといってもドボ8。
特に第3楽章のスタート部分のゆったりした入り方が心地よいです。
これを知ってしまうと他の人のでは満足できなくなります。
○○ヤンが振ったものを聴いて、あまりに平板で頭にきてしまいました。
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