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新聞の将来

2009年06月16日 | 意見
土曜日(6/13)付のフジサンケイビジネスアイ1面トップを飾ったのは、「新聞 有料配信の将来性」という記事だった。新聞が、新聞業界の問題を1面トップで取り上げるのは、極めて珍しいことだ。ピックアップすると、

《景気後退による広告の激減や無料インターネットサイトでのニュース閲覧の普及による部数減などを背景に、米国と日本の新聞業界が揺れている。頼みのネット事業の飛躍を目指し、携帯電話や専用端末への配信など有料サービスの構築を模索する動きが本格化しそうだ》。
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200906130029a.nwc

《国内では全国紙5社のうち、朝日新聞社と毎日新聞社が単体業績で営業赤字に転落、毎日新聞は最終損益でも15年ぶりの赤字となった。日本経済新聞社の場合、景気悪化で経済情報を求める読者が増え、「部数は堅調」(広報グループ)だったものの、広告収入の落ち込みで利益を減らした。産業経済新聞社も、夕刊フジやサンケイスポーツの販売部数減少が響いた。業績悪化の理由は、広告収入の激減にある》《新たな広告収入を見込んだネットのニュース配信も広告単価が下がり、着実に収益をあげるには至っていない》。



これは深刻だ。最近、新聞業界をめぐる問題が、雑誌などによく取り上げられる。週刊新潮が報じた「部数水増し」記事も、その一環だろう。

《「部数水増し」報道に抗議 朝、毎、読3社》《新聞業界が販売部数を水増しして公表、広告料金をつり上げているとした「週刊新潮」6月11日号の掲載記事を事実無根として、朝日、毎日、読売新聞の各社が同誌編集部あてに抗議文を送ったことが4日、分かった。新聞広告で「読売18%、朝日34%、毎日57%が配られずに捨てられていた」としており、各社は同日付の紙面で「実態と異なり、全く信用できない」などと反論。各社は訂正や謝罪を求めるとともに、「損害賠償を含む法的措置を検討する」(毎日)などと通知した》(6/4 共同ニュース)。
http://www.47news.jp/CN/200906/CN2009060401000185.html



しかし週刊新潮は、最新号(6/18号)でも続報(短期集中連載の2回目)を掲載している。《今朝も販売店から配られずに棄てられた「部数水増し」の動かぬ証拠》の見出しに、《新聞社が“実売”だと言い張る部数のうち、かなりの割合が、実際には読者に配られないまま棄てられている「押し紙」問題。連載第1回に対し、大手新聞各社は猛烈な抗議文を送りつけてきた。ならばお見せしよう。これが「部数水増し」の動かぬ証拠である》と、今回も挑戦的である。

この号では動かぬ証拠とばかりに、押し紙を回収しているトラックを撮影し、さらに追跡してリサイクル業者へ運んでいくところまで確認している。かつての写真雑誌「FOCUS」ばりの取材ぶりである。



押し紙については、すでに週刊ダイヤモンドの「新聞・テレビ複合不況」特集(08.12.6号)などでも大きく取り上げられていたが、今回は「損害賠償を含む法的措置を検討する」(毎日)とあるので、実態は司法の場で明らかにされるだろう(新聞社は全面否定しているから、実態が明らかにされても問題はないはずだし)。

「部数水増し」問題はさておくとしても、新聞というメディアの危機については早くから報じられていた。2年前のITmedia News(06.5.26付)には《新聞に生き残りの道はあるか 新聞社サイト、アクセス伸びず》という記事が出ていた。



《新聞の読者は目に見えて減っており、新聞社サイトの読者数の伸びも鈍い――ネットレイティングスの萩原雅之社長はこんな現状を紹介し、「新聞社はもっと危機感を持つべき」と警告する》。

《NHK放送文化研究所の「国民生活時間調査」(2005年版)によると、新聞を読む人はここ10年で大きく減った。特に、30~50代の働き盛り男性の落ち込みが激しい。「おそらくネットのせいだろう」10年前と比べると、男性30代、40代で26ポイント、50代で18ポイント減っている。接触時間の落ち込みも、男性40代、50代で著しい》。

《新聞社(全国紙)サイトのユニークユーザー(UU)数はここ5年間、ゆるやかに伸びているが、「ネット人口が5年で4~5倍になったことを考えると、もっと伸びてしかるべき」(萩原社長)で、成長は鈍い。その一方で、新聞社などから配信を受けた記事をピックアップして掲載する「Yahoo!トピックス」のUU数は急激に伸びている。「若い人はみんな、世の中の情報をYahoo!トピックスから得ていると考えていいだろう」》。



しかも、これまでどのメディアも報じて来なかったもっと大きな問題がある。それは木材資源(=紙)の費消問題である。地球環境に世間の関心が集まるなか、これは大問題である。

日本製紙連合会のHPによると、2007年度の紙の生産量は19,192千トン、うち新聞用紙は3,802千トンと約2割(19.8%)を占める。これは印刷情報用紙の11,666千トン(60.7%=約6割)に次ぐ高い比率である。
http://www.jpa.gr.jp/states/paper/index.html#topic02

私たちは毎日オフィスで、ちまちまと紙の節約をしている。両面コピーをしたり、使用済み用紙の裏面をもう一回使ったり、A3をA4に縮小したり、と。しかしその一方で新聞紙が何の疑いもなく印刷され、しかも週刊新潮が報じるように、その日の新聞が販売店に到着するや否や、約3割をトラックが回収し、リサイクル業者に持ち込んでいたとしたら…。

消費者が新聞のような紙媒体から、Yahoo!トピックス、Googleニュース、個人ブログ、SNS日記などのネット媒体に情報源をシフトしているのは、エコロジー的にも正しい行動なのである。



だからといって私は、新聞社は衰退産業だなどと決めつける気はない。当ブログのネタ元だって(今回のように)たいていは新聞である。冒頭に紹介したフジサンケイビジネスアイの記事は、次のように締めくくられている。

《日経新聞は1月、日経産業新聞の携帯サイトを月額利用料2100円で立ち上げたほか、産経新聞も米アップルの「アイフォーン」向けに新聞全体の電子データを配信するサービスの有料化を検討している。米国での報道によると、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなどは、長期の購読契約を前提にアマゾン社の開発した「キンドル」と呼ばれる電子端末を廉価に提供するサービスを今夏にも始めるという》。

《こうした取り組みについて、野村総合研究所情報・通信コンサルティング部の阿波村聡主任コンサルタントは「単に紙媒体をネットに置き換える意識では小さなパイを奪い合う」と指摘。専門性の高い情報に、別途情報料を徴収することや、記事に対応した携帯広告の配信など複合的な収益モデルが不可欠としている》。



経済評論家の勝間和代は『効率が10倍アップする新・知的生産術』(ダイヤモンド社刊)で、《マスメディア情報を減らし、実体験、他者体験、良書を3大情報源》とせよ、と書くが、よく読むと、この場合の(減らすべき)マスメディア情報の例にはテレビと雑誌は入っているが、新聞は除外されている。

ネット媒体へのシフト、広告料の減収、押し紙報道に地球環境問題と、新聞をとりまく課題は山積しているが、新聞社が持つ知的・人的資源の価値は極めて高い。これをテコに「複合的な収益モデル」をぜひ作り上げ、良質な報道を続けていただきたいと思う。

※写真はすべて「花空間けいはんな」(京都府相楽郡精華町)で07.7.7撮影。

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