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星野リゾート代表が語る「観光立国への道」 観光地奈良の勝ち残り戦略(88)

2015年04月20日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
4月13日(月)16:00~17:20、奈良経済同友会の「特別講演会」で、星野リゾート代表・星野佳路(よしみち)氏による「観光立国への道」という講演が奈良商工会議所5階大ホールで開催され約130人が参加されました。私がメモった「講演概要」は、ざっと以下のとおりです。
※写真はすべて4/13の撮影

1.「観光立国」とは
○定義は「観光産業を地方の新しい基幹産業にする」。安定した雇用を生み出し投資を呼ぶ。
○当時長野県知事だった田中康夫氏が2001年に提唱。その後、2004年に小泉内閣で「観光立国推進戦略会議」ができ、私も委員として参加した。
○その2004年から、訪日外国人観光客が急増。ついに昨年は過去最高の1340万人となった。SARSと東北の震災で一時期は急減したが、その後、急回復して現在に至っている。



2.キーポイントは4つ
(1)世界中で旅行者は急増中、国際的な獲得競争が起きている。
・インバウンドの実績で、日本は世界ランキングで33位(2012年)から27位(2013年)に上がった。しかし、アジア内では依然として8位のまま(2012年および2013年)。これはアジア各国とも外国人客を引きつけているから。中国、マレーシア、タイ、インドネシアなどが軒並みシェアを伸ばしている。
・日本のインバウンドが好調なのは、観光庁の努力やビザ緩和の影響というより、市場がシッカリしているから。新興国の中間層が、海外旅行に関心を持ち始めた。

(2)インバウンドは伸びているが、地域偏重が強い
・年間延べ宿泊者数のベスト5を見ると
①日本人の宿泊者数 1 位東京都、2位北海道、3位大阪府、4位静岡県、5位沖縄県
 上位5府県でシェア31%、上位10府県でシェア51%
②外国人の宿泊者数 1位東京都、2位大阪府、3位北海道、4位京都府、5位千葉県
 上位5府県でシェア65%、上位10府県でシェア80%
と、外国人の泊まる場所が集中しすぎ。これは分散させるべき。
・政府も世間も、インバウンドの「数」にとらわれすぎている。数中心のインバウンド目標設定は、政策をミスリードする。
・日本人の国内旅行需要は減少しているが、維持・拡大策をとることが大切
・過去6年間でインバウンドのトップを独走しているのはスイス。空港と電車、電車も違う会社の電車がスムーズにつながり、ストレスがない。
・日本の空港で唯一新幹線とクロスしているのは、静岡空港。しかし空港の地下を新幹線が走り、駅もない。航空機と、世界に誇る日本の新幹線を結ぶことが大切だ。 
・韓国の仁川空港は、今やアジアのハブ空港になっている。日本の空港は着陸料が高く、敬遠されている。(仁川→羽田は1万円。羽田→札幌は3万円。しかし仁川→札幌は1万数千円。)



(3)日本人の国内旅行需要は減少しているがマーケットが大きいので、維持・拡大策も重要
・年間の旅行消費額22.5兆円のうち、インバウンドは1.3兆円(シェア5.7%)。しかし日本人の国内宿泊旅行は15.3兆円(シェア68.2%)もある。
・日本人の国内旅行が減少しているのは、少子化・高齢化ではなく「旅行実施率」の減少。
・日本人であまり旅行しない(しかも近年減少傾向)のは、20~34歳の男性。逆によく旅行するのは20~34歳の女性で、男女で大きな開きがある。
  
(4)日本の観光産業は収益率が低く、需要のわりには地域経済に貢献できていない。
・観光産業は、経済規模(産出額)で日本のベスト5に入るほどの基幹産業である。しかし国民は、自動車産業の半分ほどの貢献度も感じていないのではないか。
・自動車の労働生産性は高いが観光は低い。観光業で非正規社員は75%(製造業は24%)。
・観光業では利益が出ない・稼ぐ力が弱い→投資ができない。
・観光業は、100日が黒字(年末年始、ゴールデンウィーク、夏休み、土日祝など)。残る265日は赤字。→市場原理が働かない。サービスが改善されない。劣悪な業者が淘汰されない。


 
3.その他
○観光は平和維持産業。日本に来ると、日本が好きになる。「旅は魔法」。観光業以外の人も、外国人観光客に親切に応対する
○100人の外国人を招待し、感想をレポートしてもらう、という活動を20年以上やっている。「100 TRIP STORIES」として、ネットにも載せている。
○今後の「成長セグメント」はインバウンドだが、日本人客に受けることもしなければいけない。
○一部の外国人客(中国人?)を嫌う人がいるが、それはいけない。かつて日本人はハワイへ行き、「いつも団体で行動する」「ビーチでは、ビキニの女性の写真ばかり勝手に撮る」「朝食に味噌汁がない、とクレームをつける」といわれたが、ハワイの人は受け入れてくれた。今や、ハワイで最もおカネを落とすのは日本人だ(ハワイの人が嫌わず受け入れてくれたから、そうなった)。
○奈良は観光資源が豊富なのに、宿泊客がとても少ない。沖縄の離島とよく似た状況で、世界的にも珍しい。奈良の最大の課題は、「宿泊観光客の増加」だ。京都と差別化を図るべき。

目からウロコの話が続出でした。とりわけ「若い女性(20~34歳)はよく旅行する」「日本のインバウンドが好調なのは、新興国の中間層が海外旅行に関心を持ち始めたから」「インバウンドは今後の成長セグメントだが、日本人による国内旅行のシェアは約7割あるので、これを忘れてはいけない」「観光業は収益率が低いので、地域経済にはあまり貢献できていない」のあたりは、考えさせられました。

奈良経済同友会さん、良い機会を与えていただき、有難うございました!

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