tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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凍れる音楽( Gefrorene Musik )は、フェノロサの造語ではない

2013年10月03日 | 奈良にこだわる
奈良新聞(9/30付)のコラム「國原譜(くにはらふ)」のマクラに、こんなことが書いてあった。筆者は「増」氏である。
※トップ写真は薬師寺西塔(06.7.16撮影)。東塔は解体修理中

奈良市の国宝・薬師寺東塔と言えば「凍れる音楽」。そう表現したとされる米国の美術史家フェノロサの著書には登場せず、誰が言い出したのか諸説ある。日本人には理解しにくい比喩だと思うが、そこから舞い降りた奏楽の飛天が同寺で公開されている。

「凍れる音楽」という表現は、フェノロサの造語ではなくドイツ語の「術語」であり、べつに「諸説ある」わけでもない。Yahoo!知恵袋にも明快に書かれている。

「凍れる音楽」はイタリア・ルネサンスを凌駕するドイツ的意識の広がりを証拠だてる有効な説明言語、その筆頭はフリードリッヒ・シェリングと言われています。芸術は人間の最高の精神的所産かつ生産活動と位置づけ、彼は「彫塑における無機的芸術形式すなわち音楽は、建築である」あるいは建築を「空間における音楽 Musik in Raume」と『芸術哲学』に書いたのです。

シェリングの義兄弟でもあり、友人のフリートリッヒ・シュレーゲルは「建築は凍れる音楽 gefrorene Musik なり」と語っています。やがて、「凍れる音楽」はゲーテ、ヘーゲルを始め多くの人々に愛用され、文学・音楽・美術・建築のロマン主義を象徴する言葉となって行くの周知の通りです。


つまりドイツにおいて「建築は凍れる音楽なり」は、すでに人口に膾炙した表現だったわけで、フェノロサはそれを知っていてこの言葉をつぶやいたというわけだ。だからあえて著書には載せていないのだろう。薬師寺をガイドされる皆さん、お間違えのないように!

※追記(2023.4.22)ブログ「鉄道で行く旅」に、こんな解説があったので紹介しておく。
ドイツ語のGefrorene Musik(凍れる音楽)という言葉は、建築家で戦前のドイツに滞在した経験を持つ谷口吉郎氏(1907年-1979年)の著書『雪あかり日記/せせらぎ日記』によりますと「哲学者のシェリング(フリードリヒ・シェリング)が言い出し、それをゲーテが引用したので(引用者注:ドイツでは)一層有名な言葉になった」と書いてあり、さらに「ゴシック寺院などの高い建築が聳え立つ光景を形容するときに、よく使われる言葉」が「建築は凍れる音楽」だとあります。

そういうことから、アーネスト・フェノロサ(米国人の美術史家・哲学者 1853年-1908年)が言ったとされる「Frozen Music(英訳)」の元になっているドイツ語のGefrorene Musik(凍れる音楽)は薬師寺東塔だけの形容詞ではないのです。「薬師寺東塔=凍れる音楽」は決して誤りではないものの、ドイツにある多数のゴシック寺院なども、ことごとく「凍れる音楽」です。
コメント (2)
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