当ブログ読者のあをによし南都さんから、ショッキングなメールをいただいた。タイトルは「宿泊業とインターネット検索」だ。さすがに、グローバルな視点をお持ちである。とにかく奈良の宿泊施設に対しては、外部(特に海外)からの評価が厳しい。出回っている情報の絶対量が少ないのに、その数少ない情報(評価)が、手厳しいのである。
《資本市場の観点からですが観光市場でたいへん気になっているのが、ネット業界の動きです》《問題は海外勢です。特に注目しているのがトリップアドバイザー(tripadvisor)で昔の『地球の歩き方』のように各観光地について正直な旅行客の見方が掲載され、各旅館、ホテルについては念入りなコメントが掲載されています。アマゾンの書評欄(カスタマーレビュー)と同じ理屈です》。
なおトリップアドバイザーとは《2000年2月創設、本社はマサチューセッツ州ニュートン。月間ユニークユーザー数2500万人、会員数1000万人を誇る世界最大のオンライン旅行コミュニティ。2008年10月より日本語によるサービス(http://www.tripadvisor.jp)を本格的にスタート。現在、世界20カ国でサイトを展開し、「楽しい旅のプランニングをお手伝い」をミッションに、約3000万件のクチコミや旅行情報を掲載しています》(同社のHP)というものだ。
南都さんによると《恐ろしいのは普通の地元の感覚では理解できていない実態が明らかになっている点です。ランキング表も外部からはこういう見方なのかとショックを受けてしまうのではと。価格を含めた満足度評価なので必ずしも老舗が上位に来るとは限らないのですが》。
※奈良のホテル 口コミランキング(トリップアドバイザー)
http://www.tripadvisor.jp/Hotels-g298198-Nara_Nara_Prefecture_Kinki-Hotels.html
奈良の旅館 口コミ・予約ランキング(同)
http://www.tripadvisor.jp/Hotels-g298198-c2-Nara_Nara_Prefecture_Kinki-Hotels.html
「奈良の旅館」のサイトをずらずらと見ていると、ある旅館(奈良市)の「口コミ・評価」(英語)が目に止まった。「コリャ英和!」の助けを借りつつ、抽出してみる。タイトルは《本当の「旅館」ではなく、全く魅力に欠ける》。
《私たちは一泊に約130ドル支払ったが、これは全く法外な代金のように感じた(felt totally ripped off)》《入ってみると「ロビー」は日本の鎧甲などの奇妙な飾り付けで暗く、陰になっている。廊下は暗く、そこには窓を開けられない客室に連れて行く古びたエレベーターがある。私たちの部屋はレストランの背後に面していて、キッチンの煙突が私たちの窓のちょうど向かい側にあったので、窓を開けることさえできなかった》。
《私たちの意見では、この施設は決して旅館と呼ぶべきでは「ない」》《しかしながら、これはあと知恵であるが、奈良は京都にとても近くて便利な立地なので、私たちはもう少し長く京都に滞在して、その代わり奈良には日帰り旅行をすべきであった》。この「あと知恵」が最もキツい。
他の和風旅館のコメントでも《私たちが日本に来て泊まったうちで、ここが最も貧弱な宿泊施設(poorest accomodation)であった》というくだりがあり、頭を抱えてしまった。
あるビジネスホテルは《私がこれまで泊まった中で、最悪のホテルだった。マットレスはこぶだらけで、とても古い。部屋は小さく、物を入れる引き出しひとつなかった》《もしあなたが奈良訪問を計画しているのなら、京都か大阪に泊まり、電車で日帰りすることをお薦めする》。わりと新しい施設なのだが、こんな言われ方をしているのだ。
奈良のホテルの「口コミランキング」第2位は奈良ホテルだったが、厳しいコメントも多い(名前を伏せてもすぐ分かるので、あえてホテル名を出させていただいた)。《それは素敵な古い大ホテルだ。バンバンと音を立て続ける古い水道管を除けば、十分改修されていて、古い魅力を保持している。これまで日本で見てきた中で、最も大きい部屋、この存在は、値段に見合った値打ちを持っていないと言える。私たちは最も安いダブルの部屋に280ドルを支払った》《私たちはこの部屋に約9時間いたが、ほとんど寝ていた。だから私は、二度と再びここに泊まることはないだろう》。
別の人は、《もしあなたが奈良見物に来ようと思っているのなら、私たちは京都のハイアット(こちらの方が安い)に泊まり、朝早く起きて電車で奈良へ行き、夕方遅くに京都に戻ることを提案したい》。これもキツい。
南都さんによると、奈良の宿泊施設については《トリップアドバイザーと運営体が同じ予約サイトのエクスペディア(Expedia.co.jp)では全く情報が載っておらず、これでは個人旅行中心の外国人観光客取り込みは難しいのでは、と思いました》。
http://www.expedia.com.au/3Star-Nara-Hotels.s30-0-d9331.Travel-Guide-Filter-Hotels
エクスペディアとは《2006年11月29日に営業を開始いたしましたExpedia.co.jpは、米国シアトルに本社がある、世界最大級の旅行サイトExpedia.comのExpedia,Inc.が運営するインターナショナルサイトの一つです。Expedia (本社・米国ワシントン州ベルビュー、NASDAQ:EXPE)は、米国のほか、世界19 カ国でサービスを展開する世界最大のオンライン旅行会社です。ワールドワイドでは1 日300 万人、月間で2,500 万人のユニークユーザ(重複を除いた純訪問者数)数を誇り、 2007 年度一年間で約4,500 万件のホテル予約がサイトを通じて成立しています》(同社HP)。
南都さんによると《このエクスペディアといい勝負をしているホテル予約サイトがプライスラインの一部門のAGODAです。予約システムが素晴らしく、部屋の条件、空室状況、リクエスト対応などしっかりしています。ここでも残念ながら奈良の宿泊業は存在感がありません》。そんな素晴らしい予約サイトがあるのに、奈良が出てこないとは、とても残念だ。
http://www.agoda.jp/pages/agoda/default/DestinationSearchResult.aspx
《ブランド力があって、誰もが認知する歴史と力がある宿泊業なら自社サイトで直接予約してもらえるのですが今やそんなところは滅多になく、ネットサイトにどんどんポジショニングパワーが移動しているように思えます。逆にそうであるなら後発で宿泊業としてのブランド力構築もまだこれからの奈良は積極的にホテルネット予約サイトを活用すべく戦略を練ったら良いと思えます》。
《もっとも顧客を満足させることができるサービス力の実力があってのことですが。それにしてもこのような露出でしたら甲子園大会に出場する機会がありながら試合を棄権しているようなものです。国内組の一休.COMも頑張っていますがやはりいかんせんグローバルの観点からはマイナーリーグです。施設側とのインタラクティブなコミュニケーションができているのは素晴らしいのですが》《やはりいまさらですがネットの力をどう活用するのか、という観点はますます重要ですね》。
旅の予約が、リアルの旅行エージェントからネットエージェントに移りつつあるのは、大きな時代の流れである。実際、リアルのエージェントはどんどん支店を閉鎖している。奈良のホテル・旅館はこの流れにうまく乗らなければいけない。しかし現実には、あまりネットサイトに露出していなくて「甲子園大会に出場する機会がありながら試合を棄権しているようなもの」にとどまっているのは、とても残念だ。
今回私が痛切に感じたのは、「奈良のホテル・旅館の関係者は、こういう口コミや評価をちゃんと読んでいるのだろうか、これをチャンスととらえて改善に活かしているのだろうか」ということである。先の奈良ホテルのコメント欄には、こんな反論も寄せられている。
《私は、私の大好きなホテルの1つに寄せられた良くないレビューを読んだので、それに返答しなければならない》《奈良ホテルは特別な何かである(something special)。多くの旅行者は設備についてコメントする。それは大切であるが、このホテルは普通には見つけられないものを持っている。このホテルは歴史、せかせかしない古い世界の魅力、雰囲気、洗練と優雅さを醸しだし、またフレンドリーなスタッフ、素晴らしい食事、奈良公園の景色と奈良のお店への短い徒歩という利点を持っている》。
悪いレビューを「ごく一部のお客が書いただけさ」と黙殺するもできるし、これを改善の機会とすることもできる。極端な意見もあるが「確かに、真実を突いているな」と感心するものもある。
ネット予約も含め、時代はここまで来ているのである。奈良のホテル・旅館の関係者の方々は、手をこまねいている場合ではない。これらをうまく利用しなければ、生き残れないのだ。
《資本市場の観点からですが観光市場でたいへん気になっているのが、ネット業界の動きです》《問題は海外勢です。特に注目しているのがトリップアドバイザー(tripadvisor)で昔の『地球の歩き方』のように各観光地について正直な旅行客の見方が掲載され、各旅館、ホテルについては念入りなコメントが掲載されています。アマゾンの書評欄(カスタマーレビュー)と同じ理屈です》。
なおトリップアドバイザーとは《2000年2月創設、本社はマサチューセッツ州ニュートン。月間ユニークユーザー数2500万人、会員数1000万人を誇る世界最大のオンライン旅行コミュニティ。2008年10月より日本語によるサービス(http://www.tripadvisor.jp)を本格的にスタート。現在、世界20カ国でサイトを展開し、「楽しい旅のプランニングをお手伝い」をミッションに、約3000万件のクチコミや旅行情報を掲載しています》(同社のHP)というものだ。
南都さんによると《恐ろしいのは普通の地元の感覚では理解できていない実態が明らかになっている点です。ランキング表も外部からはこういう見方なのかとショックを受けてしまうのではと。価格を含めた満足度評価なので必ずしも老舗が上位に来るとは限らないのですが》。
※奈良のホテル 口コミランキング(トリップアドバイザー)
http://www.tripadvisor.jp/Hotels-g298198-Nara_Nara_Prefecture_Kinki-Hotels.html
奈良の旅館 口コミ・予約ランキング(同)
http://www.tripadvisor.jp/Hotels-g298198-c2-Nara_Nara_Prefecture_Kinki-Hotels.html
Nara: A Cultural Guide to Japan's Ancient CapitalTuttle Pubこのアイテムの詳細を見る |
「奈良の旅館」のサイトをずらずらと見ていると、ある旅館(奈良市)の「口コミ・評価」(英語)が目に止まった。「コリャ英和!」の助けを借りつつ、抽出してみる。タイトルは《本当の「旅館」ではなく、全く魅力に欠ける》。
《私たちは一泊に約130ドル支払ったが、これは全く法外な代金のように感じた(felt totally ripped off)》《入ってみると「ロビー」は日本の鎧甲などの奇妙な飾り付けで暗く、陰になっている。廊下は暗く、そこには窓を開けられない客室に連れて行く古びたエレベーターがある。私たちの部屋はレストランの背後に面していて、キッチンの煙突が私たちの窓のちょうど向かい側にあったので、窓を開けることさえできなかった》。
《私たちの意見では、この施設は決して旅館と呼ぶべきでは「ない」》《しかしながら、これはあと知恵であるが、奈良は京都にとても近くて便利な立地なので、私たちはもう少し長く京都に滞在して、その代わり奈良には日帰り旅行をすべきであった》。この「あと知恵」が最もキツい。
他の和風旅館のコメントでも《私たちが日本に来て泊まったうちで、ここが最も貧弱な宿泊施設(poorest accomodation)であった》というくだりがあり、頭を抱えてしまった。
あるビジネスホテルは《私がこれまで泊まった中で、最悪のホテルだった。マットレスはこぶだらけで、とても古い。部屋は小さく、物を入れる引き出しひとつなかった》《もしあなたが奈良訪問を計画しているのなら、京都か大阪に泊まり、電車で日帰りすることをお薦めする》。わりと新しい施設なのだが、こんな言われ方をしているのだ。
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奈良のホテルの「口コミランキング」第2位は奈良ホテルだったが、厳しいコメントも多い(名前を伏せてもすぐ分かるので、あえてホテル名を出させていただいた)。《それは素敵な古い大ホテルだ。バンバンと音を立て続ける古い水道管を除けば、十分改修されていて、古い魅力を保持している。これまで日本で見てきた中で、最も大きい部屋、この存在は、値段に見合った値打ちを持っていないと言える。私たちは最も安いダブルの部屋に280ドルを支払った》《私たちはこの部屋に約9時間いたが、ほとんど寝ていた。だから私は、二度と再びここに泊まることはないだろう》。
別の人は、《もしあなたが奈良見物に来ようと思っているのなら、私たちは京都のハイアット(こちらの方が安い)に泊まり、朝早く起きて電車で奈良へ行き、夕方遅くに京都に戻ることを提案したい》。これもキツい。
南都さんによると、奈良の宿泊施設については《トリップアドバイザーと運営体が同じ予約サイトのエクスペディア(Expedia.co.jp)では全く情報が載っておらず、これでは個人旅行中心の外国人観光客取り込みは難しいのでは、と思いました》。
http://www.expedia.com.au/3Star-Nara-Hotels.s30-0-d9331.Travel-Guide-Filter-Hotels
エクスペディアとは《2006年11月29日に営業を開始いたしましたExpedia.co.jpは、米国シアトルに本社がある、世界最大級の旅行サイトExpedia.comのExpedia,Inc.が運営するインターナショナルサイトの一つです。Expedia (本社・米国ワシントン州ベルビュー、NASDAQ:EXPE)は、米国のほか、世界19 カ国でサービスを展開する世界最大のオンライン旅行会社です。ワールドワイドでは1 日300 万人、月間で2,500 万人のユニークユーザ(重複を除いた純訪問者数)数を誇り、 2007 年度一年間で約4,500 万件のホテル予約がサイトを通じて成立しています》(同社HP)。
南都さんによると《このエクスペディアといい勝負をしているホテル予約サイトがプライスラインの一部門のAGODAです。予約システムが素晴らしく、部屋の条件、空室状況、リクエスト対応などしっかりしています。ここでも残念ながら奈良の宿泊業は存在感がありません》。そんな素晴らしい予約サイトがあるのに、奈良が出てこないとは、とても残念だ。
http://www.agoda.jp/pages/agoda/default/DestinationSearchResult.aspx
《ブランド力があって、誰もが認知する歴史と力がある宿泊業なら自社サイトで直接予約してもらえるのですが今やそんなところは滅多になく、ネットサイトにどんどんポジショニングパワーが移動しているように思えます。逆にそうであるなら後発で宿泊業としてのブランド力構築もまだこれからの奈良は積極的にホテルネット予約サイトを活用すべく戦略を練ったら良いと思えます》。
《もっとも顧客を満足させることができるサービス力の実力があってのことですが。それにしてもこのような露出でしたら甲子園大会に出場する機会がありながら試合を棄権しているようなものです。国内組の一休.COMも頑張っていますがやはりいかんせんグローバルの観点からはマイナーリーグです。施設側とのインタラクティブなコミュニケーションができているのは素晴らしいのですが》《やはりいまさらですがネットの力をどう活用するのか、という観点はますます重要ですね》。
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旅の予約が、リアルの旅行エージェントからネットエージェントに移りつつあるのは、大きな時代の流れである。実際、リアルのエージェントはどんどん支店を閉鎖している。奈良のホテル・旅館はこの流れにうまく乗らなければいけない。しかし現実には、あまりネットサイトに露出していなくて「甲子園大会に出場する機会がありながら試合を棄権しているようなもの」にとどまっているのは、とても残念だ。
今回私が痛切に感じたのは、「奈良のホテル・旅館の関係者は、こういう口コミや評価をちゃんと読んでいるのだろうか、これをチャンスととらえて改善に活かしているのだろうか」ということである。先の奈良ホテルのコメント欄には、こんな反論も寄せられている。
《私は、私の大好きなホテルの1つに寄せられた良くないレビューを読んだので、それに返答しなければならない》《奈良ホテルは特別な何かである(something special)。多くの旅行者は設備についてコメントする。それは大切であるが、このホテルは普通には見つけられないものを持っている。このホテルは歴史、せかせかしない古い世界の魅力、雰囲気、洗練と優雅さを醸しだし、またフレンドリーなスタッフ、素晴らしい食事、奈良公園の景色と奈良のお店への短い徒歩という利点を持っている》。
悪いレビューを「ごく一部のお客が書いただけさ」と黙殺するもできるし、これを改善の機会とすることもできる。極端な意見もあるが「確かに、真実を突いているな」と感心するものもある。
ネット予約も含め、時代はここまで来ているのである。奈良のホテル・旅館の関係者の方々は、手をこまねいている場合ではない。これらをうまく利用しなければ、生き残れないのだ。