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tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

万博も開幕し、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

地方の元気再生事業

2008年08月10日 | 奈良にこだわる
「地方の元気再生事業」とは、政府(内閣官房 地域活性化統合事務局)が募集する国の補助事業である(募集期間 5/1~16)。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/index.html

先日、その結果発表があった。全国から1186件もの応募があり、選定されたのは約1割の120件だ。奈良県からは、河瀬直美監督が代表を務める「NPO法人なら国際映画祭実行委員会」の「日本の古都奈良が発信する『なら国際映画祭』にともなう国際観光・地域産業の活性化と人材育成」が選定された。
http://www.nara-np.co.jp/n_eco/080724/eco080724a.shtml

「なら国際映画祭」については、当プログでも南都さんが早くから提案をされており、これが選定されたのはとても嬉しい。構想の中身は応募時の会見で明らかにされていて《映画祭は、世界各国、地域から集めた作品の初公開の場にし、世界遺産の寺社仏閣での屋外上映計画。平城遷都1300年祭の開かれる2010年秋の開催を目指している》《映画祭のプロデューサーを公募したいとしており、河瀬監督は「奈良の良さを世界にアピールし、若手監督の育成にもつながるような質の高い映画祭を目指したい」と話している》(5/24付 読売新聞奈良版)。

で私の頭の中では、ここまでで思考がストップしていたのだが、よく考えると、奈良から1件が選ばれたということは、選に漏れた提案も10件近くあったということだ。それらは、これからの奈良の振興を考えるヒントになるだろう。そう思って、この事業への提案を探し(地域活性化戦略チーム会合資料)、そのうち奈良県下からの応募分をピックアップしてみた(採用された提案を除く)。

1.大和郡山市元気城下町づくり実行委員会
「ぴっかPICAプロジェクト」

2.吉野町
「吉野杉でつなぐ林業と観光! 元気もりもり吉野スタイル提案」
※参考http://j-net21.smrj.go.jp/expand/shigen/jirei/yoshino.html

3.平群町
「木質廃棄物による『環境』『社会』『経済』活性化構想」

4.財団法人たんぽぽの家
「インクルーシブデザインと林業のコラボレーションによる地場産業活性化のためのモデルづくり」
※注:インクルーシブデザインとは、ユニバーサルデザイン(文化・言語・国籍の違い、老若男女といった差異、障害・能力の如何を問わずに利用することができる施設・製品・情報の設計・デザイン)とほぼ同義。
※参考http://popo.or.jp/new/detail.php?cid=53

5.五條市歴史観光まちづくり実行委員会(五條市新町通りを中心とした旧市街地および周辺田園地域)
「1時間で江戸のまちへ―江戸期の町家が連なる五條市新町通りと周辺の多様な地域資源を活用した新しい歴史観光まちづくり」


五條市新町通り(06.8.11撮影)

6.奈良の観光再生協議会(奈良市三条通り・もちいどの・ならまち界隈)
「奈良の観光再生プロジェクト~生活体験型観光と観光消費に新たな活路を求めて」
※参考《奈良町のにぎわいを取り戻し、宿泊客を増加させようと、空き町家を活用した宿泊施設での生活体験型観光や、茶道など奈良の伝統を体験してもらう観光戦略を計画する。同協議会の林啓文事務局長は「奈良らしさを打ち出し、国内外の観光客に奈良を好きになってもらえるようにしたい」としている》》(5/24付 読売新聞奈良版)。

7.香芝市地域文化創造プロジェクト(香芝市地域)
「香芝市地域文化創造プロジェクト」

詳細までは出ていなかったが、こうして並べてみると、ある程度傾向がつかめる。「林業」とか江戸期の「町家の活用」というキーワードがいくつかの提案に出てきている。「奈良の観光再生協議会」の「生活体験型観光」という発想も面白い。

以前、当ブログのコメント欄で金田さんが推薦しておられた『由布院の小さな奇跡』木谷文弘著(新潮新書)には、「生活観光地」という言葉が出てくる。

同書において、由布院のまちづくりの第一人者・中谷健太郎氏は「観光というものは特別に観光のものとしてつくられるべきではないのです。その土地の暮らしそのものが観光というものなのです」「この由布院そのものを『滞在型の町』にしたい」「観光客が地元の商店街を歩くようになる。本屋、散髪屋、雑貨屋、喫茶店、バー、居酒屋などを訪れるようになる。観光客がなじみの店を持って、由布院へのリピーターになってくれるということだ。そうなると、観光客ではないよな。もう地元の人そのものだよな」と語っている。

奈良でも「滞在型観光」という言葉がよく使われ「滞在型の観光客を増やそう」といわれる。しかし大切なのは単に「宿泊を伴う観光客」を誘致することではなく、「観光客に、地元民のように暮らしてもらおう」ということなのだ。同書で木谷氏は書いている。《観光客と地元の人が出会って語り、由布院の日々の生活を、地元の人とともに喜び合ってゆっくりのびのびと生きていける。それが豊かに生きるということなのかも知れない。由布院のまちづくりのありようを、そこに見たような気がした》。

「奈良の観光再生協議会」の《空き町家を活用した宿泊施設での生活体験型観光》にここまでの意図があったのかどうかは不詳だが、観光客がならまちの銭湯や古本屋や飲食店で地元の人たちと交流している様子は、想像するだけで楽しい。

[8/13 追記:8/12、「6.奈良の観光再生協議会」の林啓文事務局長(財団法人ならまち振興財団 専務理事)さんに、道でバッタリお会いした。林さんによると生活体験型観光とは、林間学校で森を、臨海学校で海を体験するように、町家の暮らしを体験する観光のこと。現代生活では、町家の暮らし(日本家屋に住み、井戸やかまどを使ったり、打ち水をしたり、蚊帳を吊ったり 等々)が日常のものでなくなっていることから、提案されたものだそうだ。]

上記7つの提案は惜しくも選には漏れたが、奈良の元気を再生するヒントが隠されているだろう。詳細が分からないのが残念だが、当ブログをご覧の方の中に関係者の方がおられたら、ぜひ提案内容について詳しくコメントしていただきたいと思う。
コメント (4)
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