テスラ研究家・新戸雅章の静かなる熱狂の日々

エジソンも好きなテスラ研究家がいろいろ勝手に語っています。

★変な科学者の話(4)ジェフリー・パイク

2005-08-21 19:51:01 | Weblog
 総重量220万トンの巨大な氷の航空母艦「ハバクク」を設計した発明家ジェフリー・パイクはきわめつけの風変わりな人物だった。第二次世界大戦中は、地中海艦隊司令長官マウントバッテン元帥の軍事顧問をつとめたほどの人物だったが、身なりに無頓着で、服はいつもしわくちゃ、靴下も数週間ははき続けだった。いつもなにかアイデアを考えて、それをノートに殴り書きしていたパイクは、忙し過ぎてベッドを離れるひまもなかったので、重要な軍事会議の大半を自分のベッドのそばで開催した。食事にも関心がなく、ニシンの缶詰とビスケットだけを食べ続けても平気だった。
 そのパイクが連合軍の必勝兵器として設計した巨大航空母艦「ハバクク」は全長が600メートル。総重量は実に220万トンもあった。材料は「パイクリート」と名付けられた特殊な氷で、強く、固く、耐衝撃性にすぐれ、熱湯につけても容易に溶けなかった。
 マウントバッテンはパイクのこの提案にいたく感激し、時の首相チャーチルにパイクリートの現物を見せて、熱心にすすめた。その後、彼のアイデアは同盟国のアメリカとカナダに採用され、実験船が建造された。総重量千トンのこの船はカナダの湖に夏の間じゅう繋留されていたが、まったく溶けることはなかったという。
 しかしハバククの建造計画が動きだして間もなく、ノルマンディー上陸作戦が成功し、彼の巨艦は文字通り無用の長物と化してしまった。
 パイクリートは一部の科学者の間では今も研究が続けられており、金属製メガフロートに代わる安価で強固な氷製のメガフロートとして期待されている。
 パイクは教育理論家としても知られ、イギリスで最初のジャングル・ジムを備えた学校を設立したのは彼である。