今日は午後から東京に出て、広尾の都立中央図書館で調べ物。目指す資料が一発で見つかり、思いがけない付録もあって、よい気分で早めに引き上げた。
その帰り、有栖川公園の通路で外人の男の子に、英語で話しかけている男がいた。
年は35、6ぐらいだろうか。少し小太りで、ラフなかっこうのどこにでもいるおっさんという感じの男だった。
通りすがりに、その会話が耳にはいってきた。男の英語はあまりうまくない。
男「おまえ、なに人?」
子供「スペイン人」
男「そう、スペインか」
子供「おじさんは?」
当然、「アイム、ジャパニーズ」という答が返ってくるとばかり思っていた。
ところが男の答は意外なものだった。
「アイム、ソビエト」
(えっ、ソビエトって……)
わたしは思わず足を止めて、横目で男の顔をうかがった。
どう見ても日本人である。しかもちょっとキモオタ(これ差別用語だったっけ?)風の。
それがロシア人でもなく、ソビエトって。
コリアンやチャイニーズならまだわかるが。
ちょっと間があって男が真剣な顔でしゃべり出した。
その言葉は、ロシア語のようでもあるし、単なるでたらめのようでもあるし、なんとも判断に窮するような言葉だった。
タモリのインチキ・ロシア語のような説得力にもかける。なにかふにゃふにゃして、全身の力が抜けるような言葉だった。
可愛いスペインの男の子は、懸命に話す男をきょとんとした顔で見上げている。
男がこちらに気づきかけたようなので、わたしはふたたび歩きだした。しかしやはり気になって、歩きながら振り返った。
すると、男の子がその場から駆け去るのが見えた。さすがに男のあやしさに気づいたのだろう。
さらに少し歩いてからもう一度、今度は立ち止まって振り返ってみたが、「アイム・ソビエト」の姿はもうなかった。
たまに出かけてみると、やはり東京は刺激的な町だ。
その帰り、有栖川公園の通路で外人の男の子に、英語で話しかけている男がいた。
年は35、6ぐらいだろうか。少し小太りで、ラフなかっこうのどこにでもいるおっさんという感じの男だった。
通りすがりに、その会話が耳にはいってきた。男の英語はあまりうまくない。
男「おまえ、なに人?」
子供「スペイン人」
男「そう、スペインか」
子供「おじさんは?」
当然、「アイム、ジャパニーズ」という答が返ってくるとばかり思っていた。
ところが男の答は意外なものだった。
「アイム、ソビエト」
(えっ、ソビエトって……)
わたしは思わず足を止めて、横目で男の顔をうかがった。
どう見ても日本人である。しかもちょっとキモオタ(これ差別用語だったっけ?)風の。
それがロシア人でもなく、ソビエトって。
コリアンやチャイニーズならまだわかるが。
ちょっと間があって男が真剣な顔でしゃべり出した。
その言葉は、ロシア語のようでもあるし、単なるでたらめのようでもあるし、なんとも判断に窮するような言葉だった。
タモリのインチキ・ロシア語のような説得力にもかける。なにかふにゃふにゃして、全身の力が抜けるような言葉だった。
可愛いスペインの男の子は、懸命に話す男をきょとんとした顔で見上げている。
男がこちらに気づきかけたようなので、わたしはふたたび歩きだした。しかしやはり気になって、歩きながら振り返った。
すると、男の子がその場から駆け去るのが見えた。さすがに男のあやしさに気づいたのだろう。
さらに少し歩いてからもう一度、今度は立ち止まって振り返ってみたが、「アイム・ソビエト」の姿はもうなかった。
たまに出かけてみると、やはり東京は刺激的な町だ。