マイケル・アルメイダ監督の「テスラ エジソンが恐れた天才」の来春(3月26日)公開が遂に決定した。
すでに試写で見たが、印象を一言で言うと、天才二コラ・テスラの半生をテーマにしたひねりの効いたドキュメントといった感じだった。テスラにまつわる重要なエピソードはほぼ過不足なく描かれており、大変満足した。
ごぞんじのように、テスラの生涯のハイライトは「エジソンとの電流戦争」と、それに続く「無線(送電)への挑戦」になる。前者は、エジソン社への就職と離反、その後の不遇、交流システムの発明の発表、ウェスティングハウスとの同盟成立、エジソンによる動物実験、電気椅子処刑への交流採用の働きかけ、シカゴ万国博覧会での劇的勝利、などだが、全体を通してエジソンとの角逐がよく描かれていた。
エジソンとテスラのアイスクリームのなすり合い、ウェスティングハウスの危機を救うため、特許を破棄するという友情エピソードなどは印象的なシーンも多かった。後半の無線送電の部分は天才の光と影、栄光から没落への話になるので、テスラファンとしては少し悲しくなるが、それも含めてテスラということだろう。アン・モルガンやサラ・ベルナールとの恋愛エピソードは少し弱いかなと感じたが、といって女性関係を追いかけても実り少ないのが、発明一筋の異端者の悲しいところか。
イーサン・フォークのテスラは、内気で繊細なテスラの静のイメージをよく表現していたと思う。エジソン、ウェスティングハウス、モルガンもそれぞれ適役だった。
現代の携帯やPC、カラオケが登場するのは、電気と電波の時代を開いたテスラに対するリスペクトだろうか。コアなテスラファンほど感動するだろう。
観客に想像を広げさせようという監督の意図だろうが、エピソードの説明が少なく、予備知識のまったくない人が話の流れを理解するのは少々むずかしい気もした。彼の伝記などで予備知識を仕込んでいく方がより楽しめるかなと思った。
全体的には最後までわくわくしながら見られたので、こんな時代だが、多くの人に映画館に足を運んでもらいたいと思う。
この作品を機にテスラブームが盛り上がるとすれば、テスラ研究者としてこんなにうれしいことはない。