闇に響くノクターン

いっしょにノクターンを聴いてみませんか。どこまで続くかわからない暗闇のなかで…。

インランちゃん

2009-12-17 23:53:34 | わが酒と薔薇の日々
月曜日は、仕事の帰りに<新宿三丁目>のバー、タックスノットに寄り、マスターのタックさん(大塚隆史さん)に彼の近著『二人で生きる技術 幸せになるためのパートナーシップ』(ポット出版)の感想を伝え、本には書かれていない話をいろいろときいてきた。

このブログでもすでに何度か書いているが、私の新宿二丁目への実質デビュー店は「クロノス」という店で、この店とマスターのクロちゃんのことは、『二人で生きる技術』のなかでも何度かふれられている。このクロノスのことやタックスノット開店当初のことがいろいろ書かれてあって、『二人で生きる技術』は、私にとって、自分のゲイ・ヒストリーと重なるとてもなつかしい感じのする本なのだ。実際、この本を読んだあとの数日は、クロちゃんやタックさんらが登場する夢をみてしまった。

ところで、この本のなかでも私の個人的親近感を強くかきたてのが、タックさんが最初につきあっていたインランちゃんとのエピソードで、実は、インランちゃんは佐○という別の名前でこのブログにもすでに登場している。
タックさんも書いているとおり、タックさんもインランちゃんも、クロちゃんが自分の店クロノスを開く前のパル時代からのクロちゃんの客だ。また、長いことタックさんにエールを送り続けているケイとマサキのカップルもクロちゃんの客で、もちろん私はこのカップルもよく知っている。ただ二丁目デビューの数年の違いで、私はこのパルという店は知らない(ついでに書いておけば、K堂の寓居をシェアしている友人もパル時代からのクロちゃんの客だったという)。
さて話はインランちゃんに飛ぶが、タックさんの二番目のパートナー、カズさんが原因となり、タックさんとインランちゃんが別れてから、インランちゃんは、ハマちゃんという新しいパートナーを見つけ出した。実は私は、このハマちゃんが大好きで、金魚のウンコのように、いつもハマちゃんとインランちゃんを追いかけまわしていたのだ。さてそうこうするうちに、今度はインランちゃんとハマちゃんが「佐○」という自分たちの新しい店を持つことになり、私をはじめクロノスの客は、このカップルを応援するため、クロノスに呑みに行くとその帰りに佐○にまわって呑みなおすという新コースがなんとなくできあがった。その佐○の店のマッチがタックさんがデザインしてインランちゃんにプレゼントしたもので、当時事情を知らなかった私は、なぜタックさんがマッチのデザインをプレゼントしたのだろう、タックさんとインランちゃんは似ても似つかない感じだけど(音楽でいうと、タックさんがバタくさいシャンソンの雰囲気だとすれば、インランちゃんはまったりとした演歌が似合う雰囲気)、それでもなにか気が合う部分があるのだろうと、ぼんやり感じていた。
そのうち、当時私がつきあっていたSさんとある晩クロノスに呑みに行き、そこでHさんという客と遭遇して起こったのが、以前このブログにも書いた「二丁目シカト事件」(2007年1月12日付)なのだ。
その後私は、実はタックさんとインランちゃんは昔付き合っていたということを第三者から聞いて知るのだが、そのときにも、二人の「付き合い」のイメージをうまく描くことができなかった。それが『二人で生きる技術』のなかでタックさん自身の口をとおして語られ、私の二丁目ヒストリーのなかの空白が見事にうまったのだ。

で、ここから先はタックさんから聞いたばかりの後日談。
先日タックさんが部屋を片付けていたらカズさんの歌を吹き込んだテープが見つかり、インランちゃんもそれを聞きたがっているというので、『二人で生きる技術』と一緒にそれを届けに行き、たまたま誰もいなかったのでインランちゃんと二人だけでカズさんの歌を聞いているうちに、いろいろな思いがこみ上げてきて、二人でさめざめと泣いてしまったという。いろいろな修羅場を潜り抜けてきたタックさんとインランちゃんだけに特別のおもいがあるのだろう。
いい話を聞いたとおもった。