(TxT)<戯れ言ですよ

とみーのにっき&おえかきちょう

凪のあすから 第十五話 笑顔の守り人

2014年01月23日 | 凪のあすから
要はまだ戻ってきてないのか。

 そんな今回のお話は…
 巴日の日、5年前と変わらぬ姿で美海たちの前に流れ着いた光。
 “おふねひき”の当日からの記憶が一切なかったが、身体には異常なく次の日から潮留家で以前と変わらぬ生活を送ることができた。
 ちさき、紡、美海、あかりたちは喜びと共に光を迎えるも、突然のことにどう接していいのか分からずにいた。
 また光本人も、紡と一緒に海村の研究している教授の三橋から、世界は依然凍っていっていること、自分以外汐鹿生の人間は誰も目覚めていないことを知り愕然とする。
 以上公式のあらすじ。

 上記あらすじは今ひとつピンときませんが、要するに冬眠によって5年も時間が止まっていた光と、そうでない地上で生きる人々のギャップを上手く見せていて、おもしろい脚本だったと思います。お話としては、目が覚めたら5年の月日が経っていた光と、地上に残されたちさき、紡、美海をメインに、それぞれの変わってしまったもの変わらないものに対する思いを描いている。

 こんなアニメの感想を書いている身としては、この物語は実に書くのが難しい。何か明確な目標や道筋があって、そこに向って話が進んで行くわけではなく、この物語の世界の状況に、各キャラクターがそれぞれの思惑をもって複雑に絡み合って話を形成する正に群像劇となっていて、ひとつ取り出したくとも、絡んでくるあれこれも合わせて説明しなくてはならなくなって、しかもそのアレコレを説明するのにそれこれに触れなければならなかったりするので、正直どう書いていいか分からなくなる(笑)。
 まぁそんなわけで、今回のお話としては、戻ってきた主役光をメインに、海村出身でひとり地上に残されたちさき、彼女を家におく紡、光に想いを寄せている美海、が主に絡んでくるという内容。と言っても、何か大きな事件が起こるわけでもないのだ。
 光は5年経って変わってしまったアレコレを受け入れることが出来ない。冬眠すればこんなこともあるだろうと頭で分かっているつもりであったが、実際そうなってみてどうしていいか分からない。何せ目覚めたのは自分ひとりなのだ。この不安は計り知れない。
 そんな光を思っていたちさき。さぞ嬉しいのかと思いきや、紡から彼が5年前の姿のまま戻ってきたと聞かされ愕然とする。そしてちさきは光に会おうとはしない。それもそのはず、1クール目であったように、彼女は変わりたくはなかったのだ。しかし無情にも地上に取り残された格好になった彼女は時間と共に19歳の女性となっているからだ。
 光と会うのを避けるように看護学校へ行くバスへ乗る際、ドアに写った自分を見て変わってしまったを実感し、ショックでしゃがみ込んでしまう姿が印象的だ。そんな彼女はもうひとつ印象的なシーンがあって、紡がはさみを取りにちさきの部屋へ入ると、いつの間にか帰って来ていたちさきが上着を脱いで姿見に自分を映している所に出くわしてしまう。慌てて障子を閉める紡に彼女は「待って」と引き止め「どうだった?」と問うのだ。
 自分の身体がどうか、ではなく「あの頃と変わった?」と問い直すちさき。障子越しから紡は「あの頃は見たことないから分からない」と返すとちさきは涙してしまう。もちろん、変わった変わらないでいるかが分からないからではない。5年経っているのだ。変わっていないはずが無い。問うてはみたものの、そんなことはちさき自身がよく分かっている。
 そんなちさきに紡は「お前、あの頃いつも言ってたよな。変わるとか変わらないとか。あの頃いつも」と言う。それに対しちさきは、「みんなに、光に変わって欲しくなかった。それなのに、私が変わっちゃったんだよ」と大粒の涙をこぼす。
 なるほど、変化を恐れていた彼女である。ずっとあの頃のままでいたかったのだ。しかしそんなふうに思っていた自分が、意図せず取り残され変わってしまったのだ。それだけならまだしも、意中の光はあの頃のままなのだ。光の目の前に立てば、そうしたってその変化をまざまざと感じられてしまう。せっかく戻ってきたというのに彼女は喜ぶことが出来ない。もう同じ所にはどうしたって立てないのだ。
 嗚咽を漏らすちさきに、紡は「そうだな。変わったよお前。」と言う。その言葉に自分が変わってしまったことを認めざるを得なく自覚し曇った表情を見せるちさき。紡は「綺麗になった。ずっと、綺麗になった。あの頃よりも。それじゃだめなのか?」と続ける。ちさきは紡の言葉にハッとするも、また涙を流し嗚咽を漏らすのであった。
 紡はあの性格なので、その言葉は素直な感想である。彼がちさきを思い、変わってはしまったけれど、その分前よりずっと綺麗になったのだから、そんなに悲しむことはないと言いたいのだ。ちさきとしても、もう19歳である。彼のその優しさが分かるだけに、逆にその優しさがつらく、またどんなにあの頃よりも綺麗になろうとも、自分はそれよりも光とずっと一緒にいたかった、美しくならなくても変わりたくはなかったのだ。紡の言葉は、逆に自分の変化をまざまざと思い知る形となってしまったのである。
 紡として、変わっていないわけがないので、あの頃と変わらないなどというウソは絶対言ってはいけない選択肢だ。変わったけれど前よりずっと良くなったと、変化を良いように捉え、マイナスをプラスに転換しようとし、ちさきが傷つかないよう配慮した見事なチョイスな言葉であると思うが、いかんせん。ちさきののぞみは変わらないことなので、どうにも正解がないのがつらい。またちさきとしても、5年という歳月による変化はどうにもしようのないことで、彼女自身、仕方のない事だと分かってはいても、光があの頃のままの姿でいるだけに、容易に受け入れることは出来ないつらさがありありと感じられてつらい。
 このシーンの、どうしようもないことへの無力感というか、ただただ悲しく、このふたりを見ていてつらくなるように作ってあるのだから、上手いとしか言いようがない。

 ここからBパート。光は散歩と称して海に潜り海村を目指す。美海は光が戻ってきて2日経つのに、いまだに会いに来ないちさきに憤慨していた。
 美海はここで14歳らしいというか、あの時子供だったことを示すようなことを言っていて、光が元気がないのはちさきが会いに来ないからじゃないのか、と言うのだ。
 美海は光たち4人がどれだけ仲良しで、どれだけずっと一緒にいたかを知らないし、それを感じさせる4人を見ていない。これまでを見てきた我々としては、上記したようにちさきが会いたくとも会えない気持ちが解るし、光の元気がないのは、だたひとり目覚めて浦島太郎状態になって、この現実をどう受け止めていいのか分からず不安になっていることが察せられるが、美海は断片的でしか光を知らないので、彼が戻ってきて嬉しい、と言うだけなのである。しかしそれは責められることではなく、14歳なんだから、意中の人が戻ってきて嬉しいしか見えなくても仕方のない事。むしろその浅はかさが年相応の少女していて良い。14歳など分からないことだらけなのだし。
 さて、このBパートでの見所は2つ。ひとつは海村へ行けず、紡の船と遭遇した光。なんでちさきに会いに来ないんだ?との紡の問いに、なんでこっちから会いにいかなくちゃいけねーんだよと返した所、お前は変わらないなと返した紡に、光はカッとなって詰め寄り心中を叫び吐露する。
 まぁ要するに、浦島太郎状態になって、見るものすべてが変わってしまっていて、その上ずっと一緒だったちさきまでも変わってしまっていたらと思うと怖くてたまらないのだ。5年の時間をたった数日で埋められるはずはないのだが、それまで戸惑っているふうではあったものの、落ち着いていた彼が、ここで不安を爆発させるかのように紡に詰め寄って、心中を吐露し、どれほど不安であったかがわかるのは、あぁやっぱりと思いつつも、5年経ちはしたが光は14歳のままであることを示しているのと同時に、これまでおふねひきから時間が経ちました、と言う所を延々と見せていただけに、光の不安を感じさせる作りになっているのが上手い。
 またふたりのやりとりを端から見ていた美海が、光の心中を聞き、自分がどれだけ浮かれていたかを思い知るのも良い。そこからの旗の件はけっこう青臭いが、まぁ彼女は14歳なのでこんなものだろう(笑)。

 その後、海から上がった光はスピーカーから流れる5時の音楽、おふねひきの後に海村の人たちに届くようにと替えられたおふねひきの歌に誘われるかのように、歌の流れるスピーカーのある山を登っていくと、ちょうどそこでちさきと出会ってしまうこととなる。
 お互い会えないと思っていたのに、おふねひきの歌に誘われてかち合ってしまう所が、この二人の縁の深さであろう。5時の音楽がおふねひきの歌に変わった経緯を話した後、ちさきは「変わってしまって、ごめん」と言って俯く。その姿に光はハッとし、お前はこの間も変わるとかかわらないだとか言っていたと言う。
 続けて光はこんなことになって、確かに変わるということは恐ろしいことだとしながらも、ちさきが全然変わっていなくて安心したと言ってニカッと笑うのだ。
 その言葉にちさきは涙する。確かにちさき自身は変わってしまった。だが光はちさきの外見ではなく、中身の変わらなさ、ここにいるちさきは自分の知っているちさきだとしたのだ。彼にあの頃と同じ自分を見出してもらったことは、彼女にとって随分な救いであったろう。ちさきの中に変わらない部分はあったのだ。また、光としても、目覚めて全てが一変して自分だけが取り残されたかのように思っていたことだろうが、ちさきの中の変わらない部分を見つけ、確かにここは自分のいる世界であると確信し、安心を得たことであろう。
 状況は違えどちさきも光も取り残された格好になったは同じで、またお互いに変わったもの変わらないものをお互いの中に見て、地に足がついたような感じがあったのではなかろうか。光はこの再会を機に、変化した世界への恐れを振り払うことが出来たのだ。

 しかしこの再開のシーンの一番おもしろい所は、光と紡の違いだろう。ちさきの「変化」に対し、どちらもあの時々ことを言っていたとしながらも、出した答えは違うのである。
 いや、答え云々ではなく、紡が「変わっていない」と言ったならウソとなるが、光の「変わっていない」は本当なのだ。紡が美海との会話で、自分たちとは積み重ねた時間が違うので、ふたり西川からないことがあるのだと言っていたが、正にそれなのである。まぁ要するに、紡にちさきは救えなかったのだ。
 今回のラストで、やっかいになっている紡の家に帰って来たちさきが家に入るのに躊躇すると、中から紡が玄関を開け、おそらくはちさきのよう左右が違ったのを察し、「光にあったのか?」と問うと、彼女はひどくバツの悪そうな顔をして次回へと引っぱるわけだが、5年もひとつ屋根の下で暮らしていれば、お互い思う所はあるよなぁ。特に紡の方は。
 おそらくちさきとしたら、それなりに思うようなこともあったでしょうが、同じようなことになって結果がこれだけ違うのだから……どうなっちゃうんでしょうね(笑)?
 そこへ要も帰ってくるんでしょう?さらには美海にさゆも絡んでくることになって、人間関係はけっこうな複雑っぷりを呈してきて、これからどうなるのか気になって仕方がない。

 まなかは全然出てくる気配もないし、これから終わりに向けて、どう物語が転がっていくのか気にさせているんだから見事なシリーズ構成と脚本であった。
 そーいえば、まなかの耳の後ろにある羽根みたいなのって全く言及されませんけど、最終的になんか意味があるんですよね?


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