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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ワイルドライフ

2020年08月13日 | 映画(わ行)

ダメダメな親を見つめる少年

* * * * * * * * * * * *

1960年代、モンタナ州の田舎町。
14歳の少年ジョー(エド・オクセンボールド)は
仲の良い両親ジェリー(ジェイク・ギレンホール)とジャネット(キャリー・マリガン)のもと、
慎ましくも幸せに生活していました。

ところがある日、ジェリーがゴルフ場の仕事をクビになり、両親の様相が変わってきます。
父ジェリーはなかなか新しい仕事が見つからず、山火事をくい止める危険な仕事、
ただしほとんどボランティアのため、家を出て行ってしまいます。
生活のため、母も仕事を始め、ジョーも写真屋でバイトをはじめます。
ところが母は、次第に変わっていく・・・。

ジョーという多感な少年の目が、静かに父と母を見つめます。

仕事をなくし、見栄で簡単な仕事には就こうとしない父。
そんなことから逃げるように、妻も息子もほっぽり出して「ヒーロー的な」仕事に出かけてしまった父。

全く頼りにならずダメな夫に絶望し、
妻・母としての立場をあっさり脱ぎ捨てて、「女」になってしまった母。

ジョーはダメな父と母に対して非難めいた言葉は発しません。
自分とは違い、「大人」だと思っていた両親が、全くそうではないということを、
ただ物静かに見つめて、悲しく理解していくのです。
その間、彼は自分でバイトを探し、写真の仕事の腕を上げていく。
本作で一番大人なのは彼なのかもしれません。
というか、ダメな両親のおかげで彼は成長した。

ジョーが両親に対してたった一言非難めいたことを言ったとすれば
「これからうちはどうなるの?」という終盤のシーン。

本作、夫婦のゴタゴタを描くだけなら何と言うことのない作品と思うのですが、
あくまでも少年の心に寄り添って描かれたところが素晴らしいのです。

ダメダメな親2人、キャリー・マリガンとジェイク・ギレンホールも良かった。

 

「ワイルドライフ」

2018年/アメリカ/105分

監督:ポール・ダノ

原作:リチャード・フォード

出演:キャリー・マリガン、ジェイク・ギレンホール、エド・オクセンボールド、ビル・キャンプ

ダメ親度★★★★☆

多感な少年度★★★★☆

満足度★★★★☆

 


東京公園

2020年08月12日 | 映画(た行)

癒やしの場

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また三浦春馬さんを見てしまいました。
Amazon prime videoの「オススメ」に出てきていたので・・・。

 

カメラマン志望の大学生、光司(三浦春馬)は、公園で家族写真を撮り続けています。
そんな光司に、ある母子を尾行して写真を撮ってほしい、という依頼が舞い込みますが・・・。

東京の各所の公園を訪れる母と幼い子ども。
その姿を追い、密かに写真を撮り続ける光司。
その合間に、光司の周りの人々との出来事が綴られます。

★光司にだけ見える、亡き友人ヒロ(染谷将太)の存在。
 なぜか、光司の家に住み着いて(?)TVゲームをしたりDVDを見たりしているのです。

★かつて、そのヒロの恋人で、幼なじみの美優(榮倉奈々)は、
 たびたび光司の元を訪れて、過激な物言いで、光司を振り回します。
 なぜか彼女にはヒロが見えない。

★自分の妻を尾行して写真を撮れという歯科医の本意は?

★血のつながっていない弟・光司に密かに思いを寄せる姉・未咲(小西真奈美)の心の行方は・・・。

題材的には、ドタバタコメディ的にもなりそうなストーリーなのですが、
「公園」という題材のとおり、しっとりと包み込み、癒やされる感じの全体の雰囲気。
将来へ向けての思いも揺らぐ光司が、様々な人の思いを受け止めながら、前へ進んでいく。

この落ち着いた雰囲気が心地よい作品でした。
三浦春馬さんは、まさにイメージそのままですが・・・

 

「東京公園」

2011年/日本/119分

監督:青山真治

原作:小路幸也

出演:三浦春馬、榮倉奈々、小西真奈美、井川遥、高橋洋、染谷将太

 

しっとり度★★★★☆

満足度★★★★☆

 


「鹿の王 水底の橋」上橋菜穂子

2020年08月10日 | 本(SF・ファンタジー)

恐ろしいのは医療と権力の結びつき

 

 

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伝説の病・黒狼熱大流行の危機が去った東乎瑠帝国では、
次の皇帝の座を巡る争いが勃発。
そんな中、オタワルの天才医術師ホッサルは、
祭司医の真那に誘われて恋人のミラルと清心教医術発祥の地・安房那領を訪れていた。
そこで清心教医術の驚くべき歴史を知るが、
同じころ安房那領で皇帝候補のひとりの暗殺未遂事件が起こる。
様々な思惑にからめとられ、ホッサルは次期皇帝争いに巻き込まれていく。
『鹿の王』、その先の物語!

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「鹿の王」の続編。
文庫化を待っていました!

 

オタワルの医術師ホッサルとその恋人ミラルが中心となります。
私のお気に入り、マコウカンが登場するのもウレシイ。

 

ホッサルらが東乎瑠帝国の清心教医術発祥の地に招かれます。
調度その頃、東乎瑠では、次期皇帝の座を巡って不穏な動きがあります。
そして、この地でも、そのことに関係すると思われる暗殺未遂事件が・・・。

ここでは食中毒菌がテーマとなります。
ウイルスの話じゃなくてよかった・・・。
ウイルスだと、今ちょっと、つらくて読めません。
食中毒菌というと、何だか軽そうに思えるかもしれませんが、
本作に登場するのはおそらく、ボツリヌス菌がモデルと思われます。
生命に関わる、恐ろしいものです。

 

言ってみればホッサルは私たちが今体験している「現代医療」の体現者なのです。
徹底して「科学」に基づく治療をしようという。
対して清心教医術は「漢方」。
古来の伝統と経験に基づくもの。
でもこれが古くさくてダメなものというわけではないのですね。
双方の知から生まれる、新しいものもありそうです。
ただしここでは清心教は、動物の血を利用して作った血清などは、
体を「穢す」としてタブーなのです。
こうした「権威」めいた考え方が時にはネックになります。

 

医療と権力が結びついたとき、実際の患者の安全や生命無視という皮肉な方向に事が流はじめる。
いつの世も、そして今も、そういうことを繰り返しているようにも思われます。

その国の政治の在りようと、コロナ感染の在りようも無関係ではないと知った今となっては、重いですね。
この文庫版のあとがきとして、著者の今年3月、コロナへの思いが綴られているのも、注目。

「私たちの武器は知識と想像力と忍耐力、そして、他者を助けたいと思う気持ち」

という著者の言葉に従い、淡々とできることを続けるのみですね。

 

「鹿の王 水底の橋」上橋菜穂子 角川文庫

満足度★★★★☆

 


「吸血鬼」 佐藤亜紀

2020年08月09日 | 本(その他)

合理的精神と因習

 

 

* * * * * * * * * * * *

1845年、オーストリア帝国最貧の地、ガリチア。

若い妻を連れて寒村ジェキに赴任したゲスラーは、かつては文学を志したこともあり、
土地の領主で詩人でもありポーランド独立の夢を捨て切れないまま逼塞している
アダム・クワルスキとの交流を楽しみにしていた。

だが赴任と時を同じくして村では次々に不審な死が発生し、
村人は土俗的な吸血鬼の影に怯えるようになる。

* * * * * * * * * * * *

佐藤亜紀さんのヨーロッパを舞台とするストーリー、
場所も時代も、なんとも渋くてユニーク、
他の誰もまねできないのではないでしょうか。

 

本作、「吸血鬼」という題名ではありますが、
あの、私たちがイメージする吸血鬼ドラキュラとはちょっと違う。

ヨーロッパ、特にここでは地元の因習で、
人々の理解の及ばない災い全般がこの吸血鬼のしわざとされるようなのです。
1845年、オーストリアに統治されていたポーランド。
しかもその片隅の貧しい村。
ほんの一握りの人以外は教養もまともな知識もありません。
司祭すらも字が読めないというくらいのど田舎。

こんな村に、ゲスラーがごく若い妻を連れて役人として赴任してきます。
この土地の領主で詩人でもあるアダム・クワルスキとの交流を楽しみにして・・・。
クワルスキはなまじ教養があるために、このど田舎の暮らしに絶望を感じています。
すでに老境に入った年齢ではありながら、やはり「詩人」で、
冷めた目で人々を見ながらも、どこか現実離れをした理想を追っているかのような・・・、
なかなか複雑な人物なのです。

 

ゲスラーは最も現代の私たちの感覚に近い、合理的な精神を持ったオジサン。
クワルスキのところで下男として働いていたマチェクの頭の良さを見込んだゲスラーは
即、彼を引き抜いて自分のところの事務員に採用したりします。
そんな彼はもちろん、この村の「吸血鬼」の因習など信じない。
けれど、村人とうまくやっていくために、彼は自らその習慣に準じてみせるのです。

例えば不審な死者が出た場合、その家から遺体を出すときには
わざわざ壁を壊して穴を開け、遺体の足の方から運び出す。
そしてその後、その壁の穴をもう一度しっかり塞ぐ。
死者が再び戻ってくることがないように、ということなのです。
そしてさらには、遺体に、あることを施す・・・。

ゲスラーには全く無意味なことと思いながらも、村人の盲信を否定できず、
下手をすると暴動や焼き討ちなどにも発展しかねない事を憂うのです。
そんな中、村人の不審死が続き、何と彼の愛する若き妻までもが・・・!

 

そういえば先に読んだ「黄金列車」の主人公もお役人でした。
周囲の人々の様々思惑は理解しながらも、ただ淡々と己の勤めを果たそうとする、
そしてそれは合理的で正しいと思える。
これはもう、職務ではなく、「生き方」なのです。
そんなところが私にはしっくりきます。

 

本作中で魅力的だったのは、マチェクの父親。
貧しい猟師の彼は、もちろん無学。
ひどい訛りの持ち主。
しかるに実に俯瞰的に物事を考えることができるのです。
ラスト付近の彼のセリフは実に感動的!!
学校に行って人からものを教わらなくても、
本当に頭の良い人は自分で考えることができるワケですね。 
なるほど、マチェクの聡明さはこの人譲りなのだな、と納得できます。

 

図書館蔵書にて

「吸血鬼」佐藤亜紀 講談社

満足度★★★★☆


大脱出3

2020年08月08日 | 映画(た行)

あらら・・・

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さてあまりテンションが上がらないのですが、せっかく1・2を見たので、第3弾。

 

世界的ハイテク企業、ジャン社の社長令嬢ダヤが何者かに誘拐されます。
かつて彼女のボディガードで恋人でもあったローは、
ブレスリン(シルベスター・スタローン)の元を訪ね、
ダヤが「悪魔砦」と呼ばれる難攻不落の監獄に囚われているとの情報を得ます。
ブレスリンはローたちと共にダヤ救出に向かうことに。
しかし、ブレスリンのパートナーであるアビゲイルもまた拉致され、
悪魔砦に囚われてしまい・・・。

この黒幕は、父親の死についてジャン社とブレスリンを恨む男で、
つまりそのための復讐劇とうことなのです。
あまりピンと来ません。
そこまで父親の死にこだわる必然性があまり感じられない・・・。
だって、この復讐劇のためにどれだけのお金を費やしたのか・・・と思うと
父親ナシでも立派に稼いで生きてこられたんじゃない、と思うので。

それはともかく、本作はいよいよスタローンのアクションは望めなくなっており、
代わりにまた中国系イケメンの二人が登場。
・・・でもさしたるアクションシーンもなかったかな。
映像は妙に暗いし、そのくせあまりスリルもハラハラドキドキも感じなくて、
眠気さえさしてくる。

挙げ句の果てに、何とブレスリンは愛するものを救うこともできない・・・。
もはや、ヒーローではない・・・。
何、これ。

見ないほうが、というより作らない方が良かったという作品・・・。

 

<WOWOW視聴にて>

「大脱出3」

2019年/アメリカ/97分

監督:ジョン・ハーツフェルド

出演:シルベスター・スタローン、デイブ・バウティスタ、マックス・チャン、デボン・サワ

脱出のハラハラ度★☆☆☆☆

満足度★☆☆☆☆

 

 


希望の灯り

2020年08月07日 | 映画(か行)

全体が水槽の中であるような・・・

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旧東ドイツの田舎町にある巨大スーパーが舞台です。
このスーパーで在庫管理係として働き始めた無口な青年、クリスティアン。
先輩で大ベテランのブルーノが、彼を見守りながら指導します。
クリスティアンは同僚の年上の女性・マリアンに恋心を抱きますが、
マリアンは結婚しているようです・・・。

スーパーというよりも倉庫のような、巨大スーパー。
荷物の運搬のため、フォークリフトが行き交います。
全く日の差さないこの場所で、クリスティアンや他の同僚たちも一日を過ごすのです。

そこで働いているのは、ブルーノを始めとして多くは気のいい人たち。
でも、それぞれが心の痛みを抱えているのです。
互いに、そんなところには立ち入りすぎないようにしているようです。

作中で、屋根裏に閉じ込められた鳩の話や、
売れるまでの間、生け簀に詰め込まれた魚が登場します。
それはまるでこのスーパーで働く人々。
嫌々そこにいるわけではないけれど、毎日の同じ事の繰り返しや、日の当たらない場所で、
何やら閉塞感が立ちこめているようでもある・・・。
鳩や魚たちのように「閉じ込められた」感じがしてしまうのですね。

それを一番に感じているのは実はブルーノだったのでしょう。
ブルーノはこの場所がまだ「東ドイツ」だった頃に、
ここにあった運送会社で長距離トラックの運転をしていたのです。
ところが国が再統一したときに、運送会社が閉じられて、この巨大スーパーとなった。
そこで働くことができたのはラッキーではあるけれど、
ブルーノはかつての自分の在りようが懐かしい・・・。

本作での「希望」というのは、まさにクリスティアンの若さにあるのかもしれません。
おそるおそるフォークリフトに触り、危なっかしいけれど少しずつ運転を覚えていく。
人妻に恋だってする。
こんな場所だって、彼なら希望を持って生きていけるのかもしれない。
ブルーノにはクリスティアンが少しまぶしかったのかもしれません。

クリスティアン自身は、前科もあって、
あまり自分に自信を持っていなそうではありますが・・。

ほの暗く、静かで、無機質で冷たいようでありながら、
そこはかとなく人々のぬくもりも感じられる。
なんともステキな作品。

<WOWOW視聴にて>

「希望の灯り」

2018年/ドイツ/125分

監督:トーマス・ステューバー

原作:クレメンス・マイヤー

出演:フランツ・ロゴフスキ、サンドラ・フラー、ペーター・クルト、アンドレアス・レオポルド

 

満足度★★★★☆

 


ロックアップ

2020年08月06日 | 映画(ら行)

愚かなものが権力を握ると・・・

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シルベスター・スタローンについて、ほとんど「毒くらわば皿まで」という心境になってますね。

本作も、刑務所の話。
「大脱出」とどう違うのか、というところに注目。

 

刑期があと6ヶ月に迫った模範囚のフランク・レオン(シルベスター・スタローン)。
仮出所で恋人とつかの間の逢瀬を楽しんだりもして、まずまずの残りの刑期を務めようと言うところ。

ところがある夜突然、護送車に乗せられ、凶悪犯のひしめく刑務所に運び込まれます。
ここの所長・ドラムグール(ドナルド・サザーランド)は、レオンに恨みを抱いており、陰湿な復讐を開始します。
それというのも、以前の服役中、危篤の父に面会するためレオンは脱獄せざるを得なくなり、
その刑務所の不正を暴露。
その時の所長がドラムグールで、非難の的となり、今の刑務所に左遷させられた、というわけ。
彼は所長の権限で、レオンをいじめ抜き、その命さえも奪おうと画策しますが・・・。

 

特別脱獄の話にはならないなあ・・・と思いながら見ました。
どんなに悪辣な所長の下でも、一応法的な「刑期」がある訳で、
もう少しの我慢で出所できるわけですから。

ところが、刑期も残り3週間というときに、
明日出所するある男が、「レオンの恋人をレイプする」とわざわざ言いに来るのです。
もちろん、彼女のために、レオンは脱獄を決意する!!

しかしこれは脱獄劇ではなくて、もう少しひねりがあった、というところが面白い。

少しずつ信頼できる仲間が増えていくのもいいし、
しかしそんな中に裏切りがあったりもする。
こういう作りもうまいです。

 

それにしても、愚かなモノが権力を握ると大変なことになる・・・
というのが実のところのテーマなのではないかと思ったりします。
ホント、いろいろなところでも言えることだなあ・・・。

「大脱出」は2013年の作品なので、脱獄の話としてはこちらの方が本家本元。
スタローンの体力・気力共に最も充実している頃かも。

<WOWOW視聴にて>

「ロックアップ」

1989年/アメリカ

監督:ジョン・フリン

出演:シルベスター・スタローン、ドナルド・サザーランド、
   ジョン・エイモス、ソニー・ランダム、トム・サイズモア

友情度★★★★☆

理不尽度★★★★☆

満足度★★★☆☆


「駄犬道中おかげ参り」土橋章宏

2020年08月04日 | 本(その他)

逃亡兼おかげ参り

 

 

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時は文政十三年(天保元年)、おかげ年。
民衆は六十年に一度の「おかげ参り」に熱狂していた。

博徒である辰五郎は、深川の賭場で多額の借金を背負った夜、
お伊勢講のくじに当たり長屋代表として伊勢参りの旅へと出発する。

途中で出会った代参犬の翁丸、奉公先を抜け出してきた子供の三吉、
訳ありな美女・沙夜と家族のふりをしながら旅を続けるなか、
ダメ男・辰五郎の心にも変化があらわれて……。

借金を回収しようと追いかけてくる殺し屋・菊佐から逃げ回り、
ひしゃくとガマの油で路銀を稼ぎ、地元の名産品には舌鼓。
笑いあり、涙あり、美味(グルメ)ありの愉快痛快珍道中。

『超高速!参勤交代』『引っ越し大名!』の著者による傑作時代長編!

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実は本作、WOWOWで「大江戸グレートジャーニー ~ザ・お伊勢参り~ (全6話)」として放映されていたもので、
私、大変面白く見ていました。
だからまあ、あえて読まなくてもよかったのですが、
著者の土橋章宏さんも好きなモノで、つい手に取ってしまいました。

 

博徒の辰五郎(ドラマでは丸山隆平さんが演じています)が多額の借金を負ってしまい、
たまたま長屋のお伊勢講のくじに当たったことから、
逃亡も兼ねて、お伊勢参りの旅に出ることになります。
途中で出会った三吉という子ども、ワケありの美女(芳根京子)、
そして犬の翁丸と家族のフリをしながらの旅。
旅の途中の様々の出来事を乗り越えつつ、
彼らは本当の家族のような気持ちになっていって・・・。

ストーリーはテレビドラマとほとんど違いがありません。
ただ、辰五郎が借金を踏み倒したことで、その後始末として命を付け狙う菊佐(山本耕史)という男が、
ドラマでは辰五郎の幼なじみという縁が最後に明かされることと、
菊佐の子分(加藤諒)の存在、というあたりが異なっています。
でも確かに、ドラマ的にはそのほうが面白い!

 

ということでストーリーを知っていても、十分に楽しく読みました。

続編で「駄犬道中 こんぴら埋蔵金」というのが出ているので、そちらも読もうと思います。

 

「駄犬道中おかげ参り」土橋章宏 小学館時代小説文庫

満足度★★★★☆

 


パブリック 図書館の奇跡

2020年08月03日 | 映画(は行)

これも一つの「図書館戦争」

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ほとんど5ヶ月ぶりに映画館に行きました・・・。
久しぶりのミニシアター。
座席は一つおきになるようにマークがついていましたが、
そもそも私が見るような作品は、以前から全然「密」にはならない程度の入りだったですけれど。
ということで、ほとんど不安は感じない状況ではありました。
でも、まもなく札幌も東京のコロナ感染拡大の波がまた襲ってくることでしょうし、
再びおうち映画オンリーに戻ることもあるかもしれません。
映画館の営業状態が心配でしたが、映画制作の状態も心配になってきます・・・。

 

さて、本作。

オハイオ州シンシナティの公共図書館。
記録的な大寒波が襲来しているある夜、
図書館のワンフロアが約70人のホームレスに占拠されてしまいます。
市の緊急シェルターは満杯で、行き場を失った彼らが、一夜の暖を求めて居残ったのです。
(彼らは日中からここで過ごしていましたが、
閉館時間で追い出されそうになったけれど、出ていかなかった・・・ということ)。
ホームレスたちの苦境を察した図書館員スチュアートは、
出入り口を封鎖し、立てこもったホームレスと行動を共にすることにします。
誰も武器など持ってはいないし、器物を壊したりもしていない。
極めて平和的なデモのようなモノです。
しかし、政治的イメージアップを狙う検察官や、
センセーショナルなネタに仕上げようと勇む報道チームにより、
スチュアートは「心に問題を抱えた容疑者」にされそうになりますが・・・。

やっていることは善意の、ごくまっとうなことに思えるのに、
規則や法を尺度にすると何と面倒なことになるのか・・・。
この図書館は日頃からホームレスがここで過ごすことを容認していました。
朝、開館とともにやってくる彼らは、さっそくお手洗いに行って歯を磨きはじめたりします。

けれど、館内では規則に従って静かに過ごしているので、特別追い出したりはしません。
唯一、あまりにも体臭のきつい人がいて、苦情が多かったため、
退去させたという例があって、それもまた問題ではあったのですが・・・。
寒波のため、ホームレスの中で凍死したものが出た、そんな次の夜だったのです。

最後の方で、ここの館長が「ここは民主主義の最後の砦だ」というようなことを言います。
おお!! 「図書館戦争」だ、と私は思いました。
どんな人でもここで必要な情報を得る権利がある。
そうした信念が、こんな時にぶれない判断を招くのではないかと思います。

それにしても乱闘騒ぎにならない最後の決着の仕方が良かった。
本当なら、知らないふりして朝になったら全員解散・・・
というのが一番良かったのに、とは思いますが。

テレビの報道を見て、市民たちが次々にホームレスたちに差し入れを持ってくるシーンは泣きそうになりました。
エミリオ・エステベス監督・脚本にして主演。
すごいですね。

 

<シアターキノにて>

「パブリック 図書館の奇跡」

2018年/アメリカ/119分

監督・脚本:エミリオ・エステベス

出演:エミリオ・エステベス、アレック・ボールドウィン、ジェナ・マローン、
   テイラーシリング、クリスチャン・スレイター、ジェフリー・ライト

 

図書館の矜持度★★★★★

満足度★★★★☆

 


クリフハンガー

2020年08月02日 | 映画(か行)

スタローンの魅力満載、山岳アクション

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私、まだシルベスター・スタローンに執着したりないようです・・・。

本作、以前見た記憶はあるのですがこの際もう一度。
ですが冒頭のショッキングなシーンはさすがに憶えていました。

ロッキー山脈でレスキュー隊の仕事に就いているゲイブ・ウォーカー(シルベスター・スタローン)が、
同僚の親友ハルとその恋人サラの救出に失敗し、サラを死なせてしまうのです。
自責の念で山の仕事を辞めたゲイブ。

その8ヶ月後、たまたま山へ一度戻ったゲイブですが、
その時ハルが遭難者の救助に向かったと聞き、援助に向かいます。
しかし、この救助を求めた者たちは、1億ドルを強奪した犯人グループで、
飛行機から山へ落とした現金入りのトランクを探すため、
救助隊を呼び寄せたのでした・・・。

 

喧嘩別れとなっていたハルとゲイブが、暗黙のうちに互いの動きを読みつつ、
犯人グループの裏をかいて先にトランクを探し出そうとする、
ドキドキハラハラの山岳アクション。

スタローンの魅力も満載です!!

 

「妙に寒そうだった」という記憶があったのですが、
確かに、ゲイブは犯人たちにジャケットも上着も剥ぎ取られて、
Tシャツ一枚で雪の張り付く山を歩き回らねばならなくなる・・・。
古い山小屋でようやくボロボロの上着を手に入れたりします。
おまけに後には氷の張る川に落ちたり・・・。

こういう寒さや冷たさがとーっても苦手な私なので、
それでも元気(?)に動き回っている彼には全く驚かされます。
頼りになるタフガイ。
スタローンは、こうでないと。

 

暑い夏の日にオススメ・・・

 

<WOWOW視聴にて>

「クリフハンガー」

1993年/アメリカ/120分

監督:レニー・ハーリン

出演:シルベスター・スタローン、ジョン・リスゴー、マイケル・ルーカー、
   ジャニン・ターナー、レックス・リン

 

アクション度★★★★☆

寒さ★★★★★

満足度★★★★☆

 


「9人の翻訳家 囚われたベストセラー」

2020年08月01日 | 映画(か行)

小説の身代金

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世界的ベストセラー、ダン・ブラウンの小説「ロバ-ト・ラングドン」シリーズの出版秘話を元にしています。
すなわち、作品の違法流出防止のため、各国の翻訳家たちを
秘密の地下室に隔離して翻訳を行った、ということ。

確かに、世界同時発売ということで、話題にもなりました・・・。

さて本作、フランスの人里離れた村の屋敷。
全世界待望のミステリ小説「デダリュス」完結編の各国同時発売へ向けて、
9人の翻訳家が集められました。

完全に外部との通信を遮断され、毎日20ページずつ渡される原稿を翻訳していきます。
しかしなぜか突然、冒頭10ページがネットに流出。
24時間以内に500万ユーロ支払わなければ、さらに続きを流出させるという脅迫メールが届きます。
そんなことになれば、この本の出版もほとんど無意味なモノになってしまい、
出版社の損害は計り知れない。

一体誰がどんな方法で、原稿を盗み出したのか・・・?!

あまりにも商業主義に走り、文学性無視の出版業界への警鐘・・・
と言えば言える内容ではありますが、
それにしてもこの原稿を盗み出す方法が、確かに意表を突く面白さ。
なるほど~と驚きながらも、賞賛したくなります。

本作の作者が覆面作家で、一般にはその正体を晒していない、
というところがミソでした。

 

<J:COMオンデマンドにて>

「9人の翻訳家 囚われたベストセラー」

2019年/フランス・ベルギー/105分

監督:レシス・ロワンサル

出演:ランベール・ウィルソン、オルガ・キュリレンコ、リッカルド・スカマルチョ、アレックス・ロウザー

 

ミステリ性★★★★★

満足度★★★★☆