映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

パブリック 図書館の奇跡

2020年08月03日 | 映画(は行)

これも一つの「図書館戦争」

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ほとんど5ヶ月ぶりに映画館に行きました・・・。
久しぶりのミニシアター。
座席は一つおきになるようにマークがついていましたが、
そもそも私が見るような作品は、以前から全然「密」にはならない程度の入りだったですけれど。
ということで、ほとんど不安は感じない状況ではありました。
でも、まもなく札幌も東京のコロナ感染拡大の波がまた襲ってくることでしょうし、
再びおうち映画オンリーに戻ることもあるかもしれません。
映画館の営業状態が心配でしたが、映画制作の状態も心配になってきます・・・。

 

さて、本作。

オハイオ州シンシナティの公共図書館。
記録的な大寒波が襲来しているある夜、
図書館のワンフロアが約70人のホームレスに占拠されてしまいます。
市の緊急シェルターは満杯で、行き場を失った彼らが、一夜の暖を求めて居残ったのです。
(彼らは日中からここで過ごしていましたが、
閉館時間で追い出されそうになったけれど、出ていかなかった・・・ということ)。
ホームレスたちの苦境を察した図書館員スチュアートは、
出入り口を封鎖し、立てこもったホームレスと行動を共にすることにします。
誰も武器など持ってはいないし、器物を壊したりもしていない。
極めて平和的なデモのようなモノです。
しかし、政治的イメージアップを狙う検察官や、
センセーショナルなネタに仕上げようと勇む報道チームにより、
スチュアートは「心に問題を抱えた容疑者」にされそうになりますが・・・。

やっていることは善意の、ごくまっとうなことに思えるのに、
規則や法を尺度にすると何と面倒なことになるのか・・・。
この図書館は日頃からホームレスがここで過ごすことを容認していました。
朝、開館とともにやってくる彼らは、さっそくお手洗いに行って歯を磨きはじめたりします。

けれど、館内では規則に従って静かに過ごしているので、特別追い出したりはしません。
唯一、あまりにも体臭のきつい人がいて、苦情が多かったため、
退去させたという例があって、それもまた問題ではあったのですが・・・。
寒波のため、ホームレスの中で凍死したものが出た、そんな次の夜だったのです。

最後の方で、ここの館長が「ここは民主主義の最後の砦だ」というようなことを言います。
おお!! 「図書館戦争」だ、と私は思いました。
どんな人でもここで必要な情報を得る権利がある。
そうした信念が、こんな時にぶれない判断を招くのではないかと思います。

それにしても乱闘騒ぎにならない最後の決着の仕方が良かった。
本当なら、知らないふりして朝になったら全員解散・・・
というのが一番良かったのに、とは思いますが。

テレビの報道を見て、市民たちが次々にホームレスたちに差し入れを持ってくるシーンは泣きそうになりました。
エミリオ・エステベス監督・脚本にして主演。
すごいですね。

 

<シアターキノにて>

「パブリック 図書館の奇跡」

2018年/アメリカ/119分

監督・脚本:エミリオ・エステベス

出演:エミリオ・エステベス、アレック・ボールドウィン、ジェナ・マローン、
   テイラーシリング、クリスチャン・スレイター、ジェフリー・ライト

 

図書館の矜持度★★★★★

満足度★★★★☆

 



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